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14:今度は逃げません!・3

「ふん、公爵子息だと騙していた汚い奴と汚い髪と血のような赤い目の女が一緒に居る所を見るのは不快だなっ。汚い者同士、片隅で縮こまってろよ! 邪魔だ!」


 だいぶ自信が付いて仲良くなる人達が増えた頃。ロベルト様とリコリナ様とロベルト様のご友人の男性生徒と四人で長期休みに皆で貴族街へ遊びに行く話をしていた時のことでした。

 皆とは、ロベルト様の他のご友人二人とロロナ様とカッツェ様の全部で八人で、ということです。

 元々は違う話をしていたのですが、そこからこんな話題に変わった所で、背後からもう忘れかけていた人の声が聞こえて来ました。

 振り向けば、やはりピーテル様でした。

 腕を組み、私を見下すような視線はロベルト様にも向けられています。


 はぁ。


 溜め息をついて、ゆっくりとピーテル様に身体ごと向き合いました。

 少し前の私だったら肩を竦めて俯いていたでしょう。でも、私はもう自分で自分を蔑ろにしない、と決めたのです。


「お久しぶりです、ピーテル様。さて、私とあなたの婚約は入学前に既に解消になっていますよね。それなのに私に対してそのような物言いをされるという事は、私だけでなく我が家を貶めていることになります。

 私とピーテル様との家は領地が隣同士で、将来互いを助け合うことが出来れば、と思っての婚約だったので解消しても何の問題もない程度のもの。

 でも解消する時に、父や兄からピーテル様が爵位を継いだ時には付き合い方を考える、と言われましたよね。それは私への態度や言葉に問題があるから、という意味だったのですが、ピーテル様はそういったことも理解せずに私を貶めていますが、何がなさりたいのですか」


 次にピーテル様に会って、何か言われたら言い返そうと思っていたことを色々と考えていたからでしょう。思ってた以上にスラスラと言いたいことが口から出て来ました。


「な、な、なっ」


 私が言い返す、というのは、私も初めての経験ですが、ピーテル様も初めて“された”経験です。それくらい、私達の関係は一方的に言う・言われるだけの間柄でしたから。

 だからでしょう。

 私にこのように言われて咄嗟に何も言えなくて言葉に詰まっているのは。

 でも、此処でピーテル様の言いたいことを待ってあげる、なんて心優しいことは私には出来ません。……いえ、今までは私が言いたいことを呑み込んで好き勝手に言われていたのです。今度は私が言いたいことを言う番です。


「ピーテル様は、ずっとずっと私の髪が汚い色をして、目の色は血のようだと言っていました。そんなことを言われても以前の私は悲しいと思うだけで何も言えませんでした。

 そう言われても、ピーテル様との婚約は解消出来ない、と思い込んでいましたので、余計に何も言えませんでした。

 でも。

 今は違うことを知ってます。

 それに、私のシルバーの髪がキラキラと輝くものでなく、少し鈍い色をしていようと、目が宝石のような赤ではなく血のような色の赤だろうと、それを恥じる必要は有りませんでした。

 だって、私の髪も目も父と同じなんですから。

 大好きな家族と同じ色なのに、何も恥じることなど有りません。

 そして、そのようなことを口にするピーテル様こそ、とても失礼で無礼です。だって、私だけじゃなく、私の父も同じ色ということは、あなたは父のことも貶している、ということに気付くべきです。

 それが出来ないからこそ、ピーテル様は……あなた様は、隣の領地である我が家と、あなたが爵位を継いだら関係を考え直す、と言われたのですから」


 たくさん、たくさん、言いたいことがありました。でもこれだけは言いたい、と思っていたことを言えたのです。


「もう、婚約者でもないですし、私はあなたと幼馴染みでは有りますが、ピーテル様が散々仲良くなることを拒んで来たのですから、もう仲良くなる気もないですし、幼馴染みであるということだけで、交流する気は有りません。

 文句しか言わないのですし、私と顔を合わせても文句しか言わないあなたともう関わるつもりはないので、話しかけてこないでください」


 最後の最後に、さよなら、と口にして、ようやく私はピーテル様と決別出来ました。

 ピーテル様は、何だか見た事も無いものを見たような、聞きたくないことを聞いたような、変な表情をした後。


 ーー何も言わずに、フラフラと去って行きました。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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