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12:知られたくなかったこと・1

 ロベルト様とのお話から三十日以上経ち。

 カッツェ様・リコリナ様・ロロナ様には話せる範囲で(きちんとロベルト様に許可を得て)お伝えし、そこから少しずつロベルト様のご友人の方達と話したり他の方と話したりと交友関係が広がって来ました。そんなある日。図書室前でロベルト様とお会いし、挨拶をした後で他愛ない話をしていた時でした。


「お前っ! その汚い髪と血みたいな目をしていて、高貴な身分の公爵子息と仲良く話してんじゃないっ。お前みたいな汚い髪の男爵なんて貴族の下っ端が話していい相手じゃないんだよっ」


 私の背後から届いた声に、私は背中を押されました。突き飛ばされたという事です。

 その声は、忘れかけていた相手……元婚約者のピーテル様でした。ロベルト様が驚いて私の身体を支えようと手を出してくれましたが、適切な距離を保っていたので僅かに伸ばした手が届かずに、私は顔から転んでしまいました。木の温もりが気持ち良い廊下ですが、それでも顔を打ったので痛いです。


「だ、大丈夫⁉︎」


 慌ててロベルト様が助け起こしてくれましたが、顔を打ったことも恥ずかしいですし、汚い髪色に血のような目の色をしている、と暴言を吐かれたのを聞かれたことも恥ずかしくて。差し出された手を取ることも出来ず、俯いて涙が溢れないようにするので精一杯。何とか自力で立ち上がって、ロベルト様と目を合わせる事なく慌てて会釈して、その場を立ち去りました。


 だからその後、ロベルト様とピーテル様の間でどんな遣り取りがあったのかも知りません。この二人の遣り取りは後に偶然ちょっと遠くに居て、見ていたカッツェ様が詳しく教えて下さいました。尚、ピーテル様が背中を押したことを凄く怒ってくれて、直ぐに駆けつけられなくてごめんなさい、とも言ってくれて、本当に素敵な友人が出来て良かったと思ったものです。


 取り敢えず、この日は保健室に行って痛む顔を見てもらい、赤くなった額や鼻などを濡らしたハンカチで冷やしてもらい、そのまま帰宅を促されました。こういう時は、学校側が所持する馬車を借りて家まで送ってもらえるのだそうです。赤みが取れた時点でクラスに戻り、帰り支度をして馬車まで担任が付き添ってくれました。こういうことは迅速に対応することが先生方の間で決まっているそうです。

 馬車に乗る時にシリックとデリックに伝言を頼んでお世話になっている伯爵家に帰りました。保健の先生と担任の先生からの手紙を出迎えてくれた執事に渡すと、伯母である伯爵夫人に直ぐに渡します、と頷いてくれました。その後は借りている私の部屋で着替えをした頃合いで、侍女が呼びに来て、伯母様と話しました。


 赤みは消えましたが、手紙に書かれていた状況を把握した伯母様は、念の為、翌日は休むように言って下さり、両親に連絡することと、婚約が解消になった相手からの身勝手極まりない暴言と暴力は抗議する、と息巻いてました。


「あまり事を荒立てたくないんですけど、伯母様」


「何を言ってるの、シフレーちゃん。あなたは妹夫婦から預かっている大事な姪っ子なの! シフレーちゃんの家だけでなく、我が家にもケンカを売ってるのと同じ事なのよ? 大事なあなたに何かあったら妹夫婦にも顔向け出来ないし、あなたの兄と姉でもある甥っ子と姪っ子にも顔向け出来ないし、我が家の顔に泥を塗られたのと同意でもあるの。これは我が家の問題でもあるのよ?」


 伯母様の言っていることは貴族として秩序を保つためにも必要なことだと理解出来ました。伯爵家が預かっている私に対して元婚約者が手を出した。それも伯爵家より身分が下の。身分が下なのに舐められていると思われる態度に、元であって、もう何の関係もない私に対する暴言・暴力は、ピーテル様の人柄も問題視されること。ピーテル様のお父様とお母様の教育不足でもある、と抗議する状況なのです。


「伯母様にお任せしても……?」


「ええ、任せて頂戴! シフレーちゃんは休んでいなさいな。美味しいお茶を後で運ばせるからね」


 まだ私は成人してないので、此処は伯母様にお任せしておく方がいい、と判断しました。成人していたらこういう対応も出来るようにならないといけませんが。貴族として足元を掬われる状況に簡単に陥ってしまうのは致命的なのです。


 成人前だから、と甘えさせてもらいましたが。

 本当はとてもとても胸が痛いのです。


 自室に戻ってベッドに突っ伏します。

 ロベルト様に知られたくなかったことを知られてしまいました。いつもあんなことを言われていたって、聞かれたくなかった。それが悲しい。

 ピーテル様も婚約を解消したのに、まだ私にあのようなことを言ってくることも手を出されたことも胸が痛い。そして悔しい。婚約している時は、手を出すことなんて無かったから、暴力を振るわれたことは怖いです。


 もう頭の中がグチャグチャになっていて、なんだかよく分からないけれど涙が零れ落ちて。泣き疲れて私は眠りへと落ちました。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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