11:縮まる距離・2
翌日放課後。
「シフレー嬢」
一応前もってシリックとデリックにロベルト様がご一緒されることは話しておいたけれど、正直なところまだ夢のように思えていたので、半信半疑でロベルト様をお待ちしていましたが。あっさりとロベルト様が現れて何だかビックリしてしまいました。
分かってました。分かってましたよ? でも何処か夢心地だったものですから現実であることにちょっと驚いたんです。
「ロベルト、様。こ、こんにちは」
こんにちは、というかもう帰る時間なのですが、他に思い浮かばなかったのです。
「うん。こんにちは。ええと、ああ、デリック君だよね? 同い年の」
今日は、遠慮しておきますね。と、カッツェ様もリコリナ様もロロナ様も仰ってササッと帰られてしまったので、私とシリックとデリックの三人でロベルトをお待ちしていました。
で。
ロベルト様はデリックを見てニコッと人懐こい笑みを浮かべました。こんなことを思うのは失礼かもしれないですが。子犬が懐いて来たような感覚です。
「ええ。ロベルト殿」
デリックは無口なので(この前辞書で寡黙とも言うことを覚えました)その返事だけ。シリックは「はじめまして」 と挨拶をしています。で、人見知りの私に無口なデリックなので当然のようにシリックがロベルト様の真意を聞く流れになりました。
「ロベルト殿、シフレーと話したいことがある、とか?」
「ええ。それについては帰りながらにしましょうか。此処にずっと居るのもなんですし。かと言って談話室を借りてシフレー嬢と話す程、仲良しではないので、変に噂となってシフレー嬢にご迷惑をおかけするのもなんですし」
どうやらロベルト様は、私が醜聞に巻き込まれないように取り計らって下さっているみたいです。そんな配慮をして下さるなんて、優しい方ですね。我が国では昔程、男女の仲について厳しくないそうですがまぁ醜聞に巻き込まれるより、最初からこうした配慮をしてもらっている方が互いのためになりますものね。有り難いです。
正門で話をしていても注目を集める、とロベルト様が仰る通りで、やはり公爵子息のロベルト様は遠巻きに生徒達の視線を集めていらっしゃるみたい。こんな視線を毎日集めていらっしゃるなら大変だろうな……と他人事ながら思います。それとも私だから、そう思ってしまうのかな。
シリックやデリックは伯爵子息だから、ロベルト様程じゃなくてもこんなふうに見られることがあるのかもしれない。となると、大変ですね。高位貴族は数が下位貴族より少ないし、でもその権力に惹かれて周囲に人が集まりやすい。だから伯爵家以上の子息も令嬢も自衛手段を教えられるそうです。私、下位貴族でよかったぁ。
こんなふうに視線を集めないし、人が寄って来ることもないから平穏に暮らせてます。人見知りなので、この視線が集まっている現状は居た堪れないというか、正直、怖い。なんて言うか、声なき声が聞こえてくると言いますか。いや、実際、ヒソヒソと何かを噂されているようにも聞こえるので、早くこの場を去りたい。
シリックもデリックもロベルト様の申し出に頷いて、ようやく正門を出ました。
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