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10:行き倒れ⁉︎・1

 談話室の予約再び、と、今度はカッツェ様とロロナ様が行っている間、リコリナ様と天気が良いのでまだ行ったことがない学校の中庭へ足を向けたある日の放課後。予約へ行って下さったお二人に中庭で待つことも伝えてあったので、リコリナ様とのんびり足を向けました。ベンチが置いてあったり年間を通して綺麗に咲く花が植っている花壇があったり、樹齢三百年以上と言われる大木があったり。気持ちの良い中庭です。ベンチは三つあって大木の前に二つと花壇の前に一つ。私とリコリナ様は大木の前のベンチへ足を向けました。大木の前のベンチ二つは間が空いていて、それぞれのベンチと大木との距離は大人の足で五歩くらい離れていて、ベンチとベンチの間は大人の足で十歩くらい離れているそう。

 これは学校を作った時の中庭を手がけた庭師さんの拘りだと兄と姉から聞きました。兄と姉もその上の人達から聞かされたとか。本当の所は知らないけど、と笑った二人を思い出します。


 ベンチの一つに座ろうとした私とリコリナ様。

 もう一つのベンチに寝転んでいる人を見つけました。


「リ……リコリナ様、あの方体調が悪いのでしょうか」


「そうですね……。お昼寝しているだけでしたらいいのですけれど」


 リコリナ様がおっとりとそのように返事をして下さいますが、えっ、お昼寝⁉︎ ベンチで⁉︎


「ベ、ベンチでお昼寝ですか?」


「あら、結構いらっしゃるみたいですよ」


「そうなんですね」


 ではお声がけしない方がいいのかもしれませんね。お昼寝の邪魔をしてしまったら悪いですし。

 でも。制服を着ていらっしゃるから男性の生徒ですよね。生徒がお昼寝していて……いいのでしょうか。でも放課後ですから自由にしていてもいいのか。結局リコリナ様とベンチに座ってお二人を待つことにしましたが、どうしても視界に入ります。お昼寝している方の足が。

 体調が悪かったならどうしよう?

 と、心配してます。不要でお昼寝中なら怒られてしまうかもしれないですけど。


「シフレー様、あの方が気になりますか?」


 リコリナ様は私がソワソワしているのに気づいていたみたいで笑ってます。


「あ、その、いえ、もしも体調が悪いならどうしようか、と思いまして」


「では尋ねてみましょうか。ただの昼寝なら一緒に謝りましょう?」


 リコリナ様のこういう優しさ、大好きです。

 そんなわけで私とリコリナ様はお昼寝中らしいその方に声がけしてみました。

 とは言っても私はリコリナ様の手を握ってますけど。


「あ、あの……すみません」


 出て来た声も小さくて、多分相手には聞こえないでしょう。リコリナ様が「一緒に声をおかけしてみましょう?」 と言ってくれたので、顔を見合わせてから


「「すみません」」


 二人で声をかけると「ん……」 と相手の方の声が聞こえてきました。


「あの、体調が悪いのでしょうか」


 相手の方の声が聞こえたことに勇気をもらってもう一度恐る恐る声をかけますと、更に「うーん……」 と声が聞こえて。やがて足元に声をかけていた私達の目に動く足が見えました。やっぱりお昼寝中だっただけでしょうか。


「ええと……」


 ちょっと声をかけたことを悩んだ私の耳にハッキリとした声が聞こえてきて、起き上がったその人の顔とキラキラした宝石みたいな紫の目とぶつかって……その人が、カッツェ様が仰っていた“呪いの王子”と同じ目をした公爵子息様だと気づきました。

 それにしても。


「やっぱり綺麗な目……キラキラしてる」


 ポツリと溢れた言葉に、私はハッとしました。自分でも何を言ったのか驚きです。相手の方に聞こえていなければいいな、と思いながらその方から視線を外しました。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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