9:呪いの王子・2
「カッツェ様のお母様がその噂をお聞きになりましたの?」
リコリナ様の問いかけにカッツェ様が頷きます。
「ええ。母が聞いたのは王家の血を引く公爵家の五番目のご子息の目が紫色だったこと。後はそのご子息の婚約者様が亡くなられたらしいこと。それだけですけれど。私が勝手に呪いの王子のお伽話と結び付けてしまっただけなのですけど、本当に失礼なことを言ってしまって。後でお会いしたら謝りますね」
公爵家のご夫妻はお二人共、目の色が紫色ではないことも高位貴族では有名なのだそう。だから、ハッキリとは言わなかったですが、どうやら高位貴族の方達の中でも公爵子息様が呪いの王子に関係しているのではないか、という噂もあったようです。遠回しの言い方でしたけど、そんな感じでした。
「紫色の目については分かりませんけれど、婚約者様が本当に亡くなられたのなら、とても悲しいことですね」
ポツリと私が言えば、ロロナ様がハッとしたように私を見ました。
「シフレー様、ご自分の元婚約者様のことを考えていらっしゃるなら、アレは元婚約者様の責任ですわ! シフレー様に何の落ち度も有りませんことよ!」
ロロナ様に心配をかけてしまったようです。ピーテル様のこと、確かに思い出してしまいました。でも公爵子息様の場合と私の場合は全然違いますものね。ピーテル様、生きていらっしゃるし。
「そう、ですよね。ピーテル様生きていらっしゃいますものね」
私は苦笑します。リコリナ様が気遣わしげに視線を向けて下さり、カッツェ様は無言で頭を撫でて下さいました。もしかしてピーテル様をまだ想っている、と誤解されてる?
「あ、あのっ。皆さまお気遣いをありがとうございます。でも、私はピーテル様のことは何とも思っておりません。好きでもなかったのです!」
慌てて皆さまに打ち明ければ、三人共驚いた顔。えっ、なんでそんなに驚かれたのでしょう?
「私、てっきりシフレー様は元婚約者様を慕われているのかと思っておりました……」
呆然とした口調でロロナ様が仰る。リコリナ様とカッツェ様も同意するように頷きます。えっ……そう思われていたのですか? どうやら、酷い態度のピーテル様なのに、私が愚痴も溢さずに婚約者として接している姿を見て、てっきりピーテル様が好きなのだとばかり思っていた、と皆さまが口々に仰いました。
私は慌てて婚約を続けねばならないのだ、と自分の勝手な思い込みだったことを話しました。ただ何となくで結ばれた婚約であったことも。皆さま、暫し唖然としてから誰ともなく笑い出しまして。
「では、シフレー様は思い込みで物事を判断しないように直すのですね」
一頻り笑った後でカッツェ様に優しく確認されて、頷きました。それにしても私の思い込みで婚約を続けなくては……と思っていたことが、周りから見ると健気にピーテル様を恋慕っているように見えていたとは……。ちょっと思い込みで行動しないで一旦落ち着くことを覚える必要がありそうです。
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