8:図書室前で出会った人・2
「ええと。ご親切にありがとうございます……?」
私は人見知りが発動してしまい、ついカッツェ様に縋ってしまいました。カッツェ様は弟妹がいらっしゃるからなのか、頼りにされると前に出て下さる方で。私が咄嗟に縋ったからでしょう、私の両手をそっと握ってからその男性に疑問みたいなお礼を述べられました。疑問みたいなお礼なのは、カッツェ様も混乱しているからなのかもしれません。
「いいよ。図書室の利用についての話が耳に入っただけだから」
男性は私の人見知りにもカッツェ様の疑問みたいなお礼にも戸惑わずにそう仰いました。あの紫色の目はキラキラしていて綺麗だから余計に緊張してしまいます。男性なのに綺麗って、私は更に自信を失くしそうで……。
そんなことを思いながらも私はどうしてよいか分からずにカッツェ様を見れば、カッツェ様はマジマジとお相手の男性を見ています。それからヒッと声を上げられました。……どうしたのでしょう。
「む、紫色の目……っ! 呪いの王子⁉︎」
の、呪いの王子⁉︎ なんですか、それは⁉︎
というか、カッツェ様は紫色の目が見えてなかったのでしょうか? あ、この方前髪が長めだから、ちょっと身長が高めのカッツェ様からは見えなかったかもしれませんね。
「ああ……ごめん、話しかけて」
カッツェ様の言葉に苦く笑んだ男性は肩を落として立ち去っていきます。
何故でしょう。その姿があまりにも寂しそうで。
「あ、あの! どなたか存じませんが教えて下さってありがとうございました!」
怖々と、でも精一杯の声を上げてその背中にお礼をしたら、男性は驚いた顔をして振り向いて、少しして照れたように笑って「うん」 と頷いて今度は背中が少しだけ伸びて立ち去りました。
「えっ。ちょっと、もしかして本当にシフレー様は呪いの王子のお話をご存知ないんですか?」
その方を見送っていた私にカッツェ様が尋ねてくる。私は知らないので首を横に振りました。
「存じてないです。知らないと恥ずかしい事ですか?」
カッツェ様は私が人見知りということをご存知なので世間話に疎いこともご存知です。この尋ね方だと知らない私は恥ずかしいのでしょうか。
「あ、いえいえいえ! 違います。お話しますね!」
カッツェ様が慌てて首と両手を振って否定してくれました。図書室では話せないので場所を移そうという事になりましたが、リコリナ様とロロナ様が談話室の予約が取れたら図書室に来る事になっています。私達が居ないと探してしまうのでは? ということで、二人が戻って来たらお話をして下さる事になりました。
「お待たせしました!」
明るいリコリナ様の声がそう長くないうちに聞こえて来まして手を振ります。リコリナ様とロロナ様と合流して、場所を変えようと提案する前にロロナ様が少し落ち込んでおられました。
「ロロナ様? どうかしました?」
私が声をかければリコリナ様が苦笑します。
「実は談話室の予約は十日先までなのですが、学校が休みの日は利用出来ないのは当然として、それ以外の日も全部予約がされてまして、今回は取れなかったのです」
「あら、それは残念でした」
カッツェ様が仕方ないですよね、と頷けばロロナ様は肩を落としています。
「皆さんと勉強会をしながらだと分からない所が分かるので有難いのでしたけど」
肩を落としながらロロナ様がそのように言うので、それは確かに、と私も同意します。でも取れなかったのは仕方ないです。また今度、ということにしましょう。そんなリコリナ様の慰めを受けたロロナ様もコクリと頷いて、カッツェ様がちょっとお話したいことがある、と場所を変える提案をされました。
呪いの王子、のお話のことですね。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




