7:談話室で勉強会
デリックの貴重な一時間。半々で外国語勉強と法勉強です。法の勉強も苦手な所がある私にとって有り難い限り。例えば我が国では一夫一妻ではありますが、三年間の結婚生活で子が出来なかった場合、養子を取るか離婚をして他の人と結婚して子をもうけるか、という二択があります。正妻と愛人といったものは有りません。昔……数百年以上前は殿方が愛人を囲って愛人との子を世継ぎにするというのが当たり前だったそうですが。
とある貴族家で殿方が妻の他に三人の愛人を囲っても子が出来ないということがありました。その頃は三年ではなく一年で妻に子が出来ないと愛人を囲えたそうで。一人目の愛人も一年で出来なかったから二人目を。そこでも一年で出来なかったから三人目を。その三人目も子が出来なかったので、殿方に問題があるのではないか、と。尚、妻の方は夫が三人目の愛人を囲った時点で愛想を尽かし、元々政略結婚でしたので妻に子が出来ず離縁の話になった時、妻は喜んで離縁に応じたそうなので、三人目の愛人を囲った時はその殿方は独身でした。
これが実は困った事態を引き起こしたのです。
独身となった殿方。その妻の座を狙う愛人達。手っ取り早いのは子を身籠ること。ですが三人共、子が出来ない。そこで三人は同じことを考えたとか。つまり別の人の子を身籠る、ということ。そしてその方の子と偽る……。結局三人が子を産んでも誰一人として殿方に似た子では無かったので愛人は全員捨てられたとか。その愛人達の争いでその殿方は疲弊し、おまけに愛人達に遣ったお金がかなりの額だったようで。その後、殿方はご自分のご兄弟から養子をもらったそうですが、晩年はお金に苦労したようです。その養子の方も立て直しに必死だったとか。それで、この話を教訓にして、現在の法が制定されたそうです。
結婚して子が三年出来なかったら、養子か離婚して再婚か、という。
尚、夫婦間で愛情も信頼も無いと離婚らしいですが、大抵のご夫婦は養子を取られるそうです。まぁこういった分かりやすい法は覚えられますけど、他国との貿易に関するお金の遣り取りの法とか、いまいち覚えられないので、デリックが教えてくれる時間は貴重なのです。
他にも貴族のみに存在する法も有ります。罪を犯せば罰を与えられるのは貴族も平民も同じですが、貴族の場合、個人そのものと家に対する罰。更に罪によっては一族や婚家の一族にも類が及びます。また婚姻や婚約に関する法も様々。我が国は国王陛下が統治されている王国ですので、婚約も婚姻も国王陛下の承認が必要ですし、私の婚約解消も陛下の承認が必要です。お忙しいのに末端の貴族家の婚約や婚姻にも関わっていらっしゃるなんて……とは思いますが、そういう法なのですものね。
考えてみましたら……他国の言語だけじゃなく苦手な勉強って他にも有りましたね。これは、毎日復習を忘れないようにしないと益々ついていけないような気がします。
「デリック様、こちらについてお尋ねしたいのですが」
私が改めて授業の復習を忘れない、と心に決めたその隣でロロナ様がデリックに話しかけています。東の国と南の国の読み方の違いの確認とか発音の確認ですね。リコリナ様とカッツェ様も真剣な表情で聞いています。私も、多分、真剣な顔をしているはずです。
「ここはこう読みますね。そうだ。読み難い言語を紙に書いて怒鳴りに読みを書いて、更に意味も書いていくと覚えられるかもしれない」
ロロナ様の質問に答えながらデリックが助言してくれます。復習の仕方はいつも教師が書いた文字を書き写したのを見返すだけだった私。成る程、と頷いて実践してみます。ロロナ様もリコリナ様もカッツェ様も気になる言語を抜き出して紙に書いています。これなら何度も読み返す時に楽ですし、紙に書くことを繰り返すことによって頭に入っていきます。やり方は人それぞれでしょうけど、デリックのこの勉強のやり方は私に合っているようです。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




