6:勉強は大変です。・2
「シフレー様」
「ロロナ様? どうかしました?」
授業に追いつくので必死な私は、ようやく授業が終わって帰り支度をしていたら、ロロナ様に声をかけられました。リコリナ様とカッツェ様と待ち合わせて私の従兄二人と皆さまの護衛とで大勢で途中までは帰るのがこの十日間の習慣です。登校は従兄二人といつも一緒です。
「実は授業についていける自信が無くて、ですね。シフレー様はどうなのか尋ねたくて」
「私もついていけていないと思います。どうしようか悩んでいるところです」
固い表情のロロナ様が何を仰るのか、と此方も緊張しましたが、そのようなお話でしたので少しだけ肩の力を抜きながらお答えします。ロロナ様も少しホッとした顔をしてから、困ったように曖昧に笑いました。
「よかった。と言っていいんでしょうか。でも私だけがついていけないのか、と焦ってしまって」
「わかります、ロロナ様。私だって追いつくのに必死ですもの」
「私、東の言語も南の言語も理解するのが半分くらいで」
「私もです。どうしたらいいのでしょう」
ロロナ様と困ったように首を傾げながら帰り支度を終えて皆さまをお待ちする正門へ向かいます。既にリコリナ様とカッツェ様がいらっしゃったので、ロロナ様と共通の悩みについてご相談してみました。
「ああ、私達も法が難しいと思って、どうしようと思ってましたの」
リコリナ様が同意して
「それに私は南の言語も苦手です」
とカッツェ様も頷く。カッツェ様は南の国の言語よりも法の方が苦手だったから3クラスに分けられた、ということなのでしょう。四人で顔を合わせて溜め息をつきます。そこへデリックとシリックが来ました。三人の護衛はリコリナ様とカッツェ様が正門に来た時には既に待機場所で待っていて今はそこから正門に来ています。そういえば護衛の待機場所というのが正門の外側にありましたね。
「シフレー、どうした?」
シリックが尋ねてきます。表情が暗い、と指摘されました。
「いえ。言語が難しいので、授業についていくのが必死なもので」
「ああ、そういうことか」
シリックが納得したように頷きながら、少し悩ましげな表情になりました。
「私やデリックが教えられるのならいいが……。シフレーに話したと思うが、学校の授業は年数が経つ程難しくなる。そして一年目は試験だけなのだが二年目からはその勉強の理解度を報告しなくてはならない。つまり報告書を試験の他に出す。これが試験よりも提出回数が多いので、教えている時間を取ってあげられない。卒業が近づく程提出する回数は増えていくんだ」
シリックが教えてくれましたが、実はそのことも知りたかったことです。学校では報告書を作成して提出する、というのは聞いていたのですが、どういうものか具体的に知らないので。
「報告書というのはどんなものなのです?」
私はついでにシリックに尋ねました。
「うーん……。試験というのは、例えば外国語ならば単語の読みや書きを母国語に変換する、とか。文章を母国語に書き直すように、とか。そういった問題だろう?」
シリックの質問に私が軽く頷いてカッツェ様が力強く頷き、リコリナ様とロロナ様がまぁ、そうね……といった感じで頷きます。
「報告書というのは、例えば北の大国の言語をどれだけ理解しているか、言語の成り立ちを報告書に三枚書いてこい、とか。東と南の言語の違いを調べて、何故違うのか。違った理由や経緯は何なのか。というようなことを報告書に五枚書いてこい、とか。そんな感じかな」
私はちょっと息を呑んでしまいました。ただでさえ南や東の国の言語は苦手なのに、三枚も五枚も書ける気がしません……。リコリナ様・ロロナ様・カッツェ様の顔を見れば、若干青褪めているようです。気持ちは分かります。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




