プロローグ・変わります。
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私の父と彼のお父様が親友で。お互いの子がそれぞれ男子と女子だったから……何となく酔った拍子に「将来結婚させてみるか」 なんて軽い気持ちで決まった婚約だ、ということを知ったのは、貴族も平民も関係なく貧富の差も関係なく全ての国民が十三歳になった年に、無償で通う学校に入学する前年のことでした。……当然私は十二歳。二歳年上の婚約者である彼は既に入学して二年目の時のこと。
元々父親同士が親友で酔った拍子に結ばれた婚約だったけれど、一応婚約者同士として顔を合わせたのは、私が七歳で彼が九歳の時。婚約したのは、その前年のこと。
猫の額程と言っても過言ではないくらい狭い領地を持つ私の父は男爵で貴族とは名ばかりの片田舎の領主を務めている。彼……ピーテル様のお父様も男爵で我が領地の隣。とはいえ、共同事業というのもない。災害が起きたら互いを助け合う程度の気持ちはあるけれど婚約によって互いに利益が生じる事もなく、家同士の繋がりというものもないから、婚約に際して交わす契約書もない。
本当に口約束程度のものだった、らしい。
だから。
「シフレーの好きにして構わないよ」
私と同じ、彼の言うところの“錆びたシルバー”の髪と“血を想起させて気持ち悪い赤色”の目をした父が優しく笑って優しく促してくれたことに、私はホッと息を吐いて
「よろしくお願いします」
と、頭を下げました。父は「うん、分かった。大丈夫だよ」 と微笑んで受け入れてくれて。執務室の執務机に座る父の隣でそっと寄り添うように立つ母は。
「今までよく頑張ったわね、シフレー。でももっと早く何とかすれば良かったわね」
謝るのと同時に、プラチナ色混じりの淡いピンク色の髪が私の視界いっぱい広がりました。母が頭を下げてくれたことに気づいて「ありがとう、ございます。でもお母様のせいではなく、私が悪いのです」 と否定しました。それでも頭を下げ続ける母に
「お母様に心配をおかけしてごめんなさい」
と私も頭を下げれば、ようやく母が頭を上げました。淡いブルーの目に薄っすらと涙が浮かんでいて。せめてこの目の色だけでも受け継いでいたら、彼……ピーテル様との関係は変わっていたのかしら。
いえ、もう、もしかして……と考える期間は過ぎました。
だって結局のところ、自分ではどうしようもないことで変えられないことですから。
ピーテル様と私との婚約が何の問題もなく簡単に解消出来るものだ、と知ってから半年を過ぎた本日は私の十三歳の誕生日。今朝は両親と兄と姉からお祝いの言葉とプレゼントをもらって、きっと素敵な良い一日になる、と信じていました。でも今日のために誕生日パーティーに婚約者である彼、ピーテル様を招待していた私の心は……浮かれていたことが悪かったのか、神様にでも嘲笑われているかのような出来事によって、ポキッと折れてしまいました。
「ごめんなさい、お母様。でも私の好きにしていい、とお父様と一緒に許可を下さりありがとうございます。……私、変わりたいんです」
私の決意に母は涙混じりの目で、それでも微笑んでくれて頷いてくれました。後はお任せします、と両親に告げて執務室を出れば、そこには怒りを堪えているような表情の兄と悲しみを堪えているような表情の姉がいて。
姉は私をそっと抱きしめ、兄は頭を撫でて。
「今までよく頑張ったな」
「今までよく頑張ったわね」
それぞれに労われ「「暫く心を休ませなさい」」 と二人共に微笑んでくれました。家族が温かくて嬉しいです。私はちょっぴり涙を流しながら「そうさせて……もらいます」 と返答して、それから六年間の婚約期間を振り返りました。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




