第64話 追走劇
「親分! 助けてくれぇ! リッチー親分――ッ!」
「うわあああああッ!」
「ぎゃあああああああッ!」
――その戦いは、ほとんど一方的だった。
奇襲を受けた『カバジェロ盗賊団』は、成す術もなく蹂躙されていく。
彼らは小荷駄隊のような護衛対象を襲うのには慣れていたが、逆に襲われるのにはまるで慣れていなかったのだ。
所詮素人の集まりに過ぎない『カバジェロ盗賊団』は、戦闘のプロたちを相手にもの凄い早さで狩り取られていく。
百人からいた盗賊団が、たった二十五人を相手に。
それだけ個々の〝質〟が違ったのだ。
デニス率いるメンバーは、こういう夜闇に紛れた暗殺など朝飯前だった。
「奪われた荷物は燃やせよ~、持って帰る余裕なんてねぇんだから」
「ヒッ、ヒィ……! お助け……!」
デニスの斧槍に追い詰められる禿頭の手下。
彼は必死に命乞いするが、
「……見てたよ、さっきの」
「え?」
「お前ら、兵士を生きたまま焼いたよな? 酷いよね~、残酷だと思わないワケ?」
「そ、それは……」
「俺っちね、こんな言葉が好きなの。〝目には目を、歯には歯を〟。でも生憎、お前らと違って悪趣味は卒業したからさ……。だから――ただ死ね」
斧槍が、禿頭目掛けて振り下ろされた。
それと同じタイミングで、辺り一帯に響き渡っていた悲鳴がほぼ鳴り止んだ。
「お疲れちゃん。ブツは取り戻したか?」
デニスが尋ねると、黒装束の男が暗闇の中から姿を見せる。
音も気配もなく、まるで忍者のように。
「申し訳ありません、どうにも賊の頭が持ち出したようで……。部下に追わせています」
「…………あぁ? 取り逃がしたっての?」
「……申し訳ありません」
「らしくないミスしてんじゃねーよ。なにがあった?」
「始末した雑魚共と違って、頭は異様に素早い奴で。木の上を飛び回って逃げやがるんです」
「木の上って……ったく、猿かっての」
ため息を吐くと、デニスは斧槍を担いだまま自らの馬に跨る。
「俺もその猿野郎を追う。ここの後処理は任せっぞ」
「御意」
✞ ✟ ✞
「へ、へへへ……! ざまぁみやがれ、逃げおおせてやったぜ!」
木から木へ飛び移り、全速力で逃げる『カバジェロ盗賊団』の頭リッチー・カバジェロ。
その移動速度は素晴らしく早く、〝韋駄天〟の異名は伊達ではない。
「盗賊に大事なのは腕っぷし、オツム、そんで逃げ足! この三つなんだよ! 俺は生き残ってやるからぁ!」
部下も盗賊団も全て失ったが、生きてさえいればどうとでもなる。
彼はそれを知っていた。
だからこそ全てを捨て、逃げたのだが――
「――待ちやがれ、このクソガキ!」
そんなリッチーを追う、十の騎兵。
木々の間を縫って駆け抜ける軍馬たち。
その先頭を走るのは、デニスだ。
「んなっ!? もう追い付いて来やがったのか!?」
「いくら足が速くても、人が馬に勝てるかっつの! 往生しやがれってんだ!」
――夜の森で巻き起こる追走劇。
それを終わらせるべく、騎兵の一人が馬上で短弓を引く。
狙いを定め、これを放てば全てお終い――デニスがそう思った瞬間、
「――ぐあッ!?」
短弓を構えていた騎兵に、突如弓矢が突き刺さる。
どこからか狙撃されたのだ。
「な――!?」
「「「ヒャッハ――ッ!」」」
デニスの目映る、馬を走らせる三人の荒くれ者。
この瞬間――リッチーを追うデニスたちと、そのデニスを狙うトレモロ三兄弟のデスレースが始まった。
投稿が一日遅れてしまいました……。
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