表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/65

第46話 悪魔討伐部隊


 ――〝悪魔〟。


 俺がその単語を口にした直後、部屋の中に沈黙が走る。

 それはほんの数秒の間に過ぎなかったが、エレオノーラ女王とルティスさんの雰囲気がハッキリと変わった。


「……ああ、知っている。その話もしてやろうと思っていた」


 エレオノーラ女王が短く答える。


「貴殿はたった一人で倒してしまったそうだな。自らを悪魔と名乗った怪物を」


「ええ、まあなんとか……。でも最初に見た時は驚きました。アシャール帝国があんな怪物を飼い慣らしているなんて……」


「悪魔を飼い慣らす――か」


 彼女は椅子から立ち上がる。

 そしてコツコツと足音を立てて部屋の中を歩き始め、


「正直に言えば、くだらん噂であってほしかった。〝アシャール帝国が古代魔術で悪魔を蘇らせようとしている〟など」


「そうですわね……。他ならぬレーネの報告でなければ、私も未だに信じていなかったかもしれません。あの子、惚けてはいますが優秀な諜報員ですもの」


 ルティスさんも険しい表情になる。


 これほどの実力者でも、悪魔の存在を厄介だと感じるのか――。

 薄々気付いてはいたけど、俺が倒したアンドロマリウスは所詮尖兵に過ぎなかったのかもしれないな。


「オスカーよ、貴殿も魔術に聡い家柄の生まれなら、古代魔術という名前くらいは聞いたことがあるであろう」


「それはまあ……。でも確か、古代魔術って魔術学会で再現不可能って結論付けられたんじゃ――」


「そうだ。――いや、そうであった(・・・・・・)。少なくとも、ルーベンス王国の中ではな」


 エレオノーラ女王は、窓の外を眺める。

 その方角の遥か先にあるモノは――アシャール帝国。


「……少し前から、アシャール帝国に潜入している諜報員が情報を掴んでいたのだ。〝アシャール帝国の皇帝が古代魔術を研究し、悪魔の力を借りようとしている〟とな」


「もっとも、当初この情報は重要視されておりませんでした。アシャール帝国内でも噂が流れていたようですし、現皇帝は気が触れているとも言われておりましたから」


「なにより、我が国の魔術はアシャール帝国などより遥かに進歩しておる。魔術競争で叶わぬと見た阿呆共が、お伽噺に縋りついたと思っておったが――」


「でも、その悪魔が現実に現れてしまった……」


「…………立場が逆転してしまった、ということよ」


 務めて冷静に、けれど悔しさを滲ませるように言うエレオノーラ女王。

 彼女は俺を見て、


「悪魔は、かつてこの世界を滅ぼしかけた存在だ。何万年も前に、古代魔術の力を暴走させた大魔術師が世界を滅ぼしかけた伝承を知っているだろう」


「え、ええ。でも悪魔の話なんて聞いたことが……」


「伝承を残した古の民が、悪魔という言葉自体を後世に残さなかったのだ。二度と過ちが起きぬようにな。故に、今や真実を知るのは各国王家の限られた者のみ」


 エレオノーラ女王は言葉を続ける。

 あくまでも淡々とした口調で。


「――古の時代、魔術師は魔界の悪魔と契約することで魔力を得ていた。しかし深淵に魅入られた一人の大魔術師が力を暴走させ、72体の悪魔を召喚。それらを世に解き放ち、大地は死と瘴気で溢れたという」


「しかし世界が暗闇に包まれた時、一人の勇者が現れる。悪魔たちは勇者に敗れ、魔界に封印されてしまう。そして平和が訪れましたとさ――これがルーベンス王家に伝わる正しい伝承ですわね」


 ルティスさんが補足してくれる。


 なるほど、俺たちが知ってる伝承はかなり短縮――というか歪められた内容だったのか。

 王家に深く関わる者だけに伝わってるとなると、悪魔の依り代にされたアベルもなにも知らなかったんだろうな……。


「貴殿、先程申したな。死にもの狂いにならないとこの国は滅ぶと。悪魔と直接戦ったからこそ、そう思うのであろう」


「……はい」


「アシャール帝国が古代魔術を復活させたのであらば、奴らを戦線に投入してくるのは必定。これまで悪魔のことは王家の秘密であったが、もうそんな時代は終わるであろう。――だがな、結局やることなど変わらぬ」


 エレオノーラ女王はグッと拳を握り、


「踏み潰す。我が領土に土足で踏み入るならず者を、ことごとくだ。それが人間であろうと悪魔であろうと関係ない。駆逐し、根絶し、殲滅する。悪魔が世界を滅ぼす前に――我々が、悪魔を、滅ぼしてやるのだ」


 力強く語る。

 そして握った拳から人差し指を伸ばし、俺へと向けた。


「オスカー・ベルグマイスターよ、貴殿は『ヴァイラント征服騎士団』への残留を望んだな。なれば――貴殿ら騎士団を〝悪魔討伐部隊〟に任命する」


「――! お、俺たちが……!?」


「貴殿は単独で悪魔を撃破し、そしてギルベルト・バルツァーも悪魔と戦った可能性が高いと聞いた。いずれにせよ生還した事実は大きい。『ヴァイラント征服騎士団』も精鋭の集まりなれば、采配としてはこれ以上ないであろう」


「ウフフ、それではローガン騎士団長に伝令を出しておきますね。独立部隊として戦地を駆け巡れるとあれば、あのお方は大喜びするでしょう」


「とはいえ『ベッケラート要塞』も空き家にはできん。他の騎士団を配置するようすぐに手配しろ、ルティス」


「御意に♪」


 なんだか楽しそうな顔をするルティスさん。


 か、勝手に話が進んでいく……!

 俺たちが悪魔討伐部隊って、大丈夫なのか……?

 そりゃ確かにアンドロマリウスは倒せたけど、もっと強い相手が出てきたら俺だって勝てるかわかんないんだけどなぁ……。

 

 ――ま、いいか。

 俺としても……アベルを悪魔の依り代にした奴には、思う所があるしな。


 そう思っていると、


「ところでオスカーよ。レーネが言っていたが、貴殿自前の剣を失ったらしいな?」


「え? ええ、まあ……。結構手に馴染んでた一本だったので、ちょっと残念です」


「そうかそうか。なれば、腕のいい〝鍛冶師〟を紹介してやろう。悪魔を倒す英雄は――相応しい剣(・・・・・)を携えるべきであろうよ」



少しでも面白い、次が気になると思っていただけたのなら、

ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】をして頂けると幸いです。


【評価】はこのページの下の「☆☆☆☆☆」の箇所を押していただければ行えます。


何卒、評価を……評価を……!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ