表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/65

第43話 俺は〇派です


「「――――ッ!?」」


 突然の襲撃。

 それを見たリーゼロッテとデニスさんが反射的に武器を取る。


 片や腰の剣を、片や斧槍(ハルバード)をルティスさんに突き付けようとするが、


「ごめん遊ばせ、今はオスカー様とお話をしているのです」


 二人が武器を構えようとした時には――剣も斧槍(ハルバード)も、既にルティスさんの手の中にあった。

 彼女たちの動きよりもずっと速く、ルティスさんは武器を奪い取ったのだ。

 そう。一瞬の内に、二つとも。


「う……嘘……」


「あ、あれぇ……? デニスさんビックリ……」


 ブワッと冷や汗を流すリーゼロッテとデニスさん。

 もうこの時点で、ルティスさんが二人より強いのは明白だ。


「痛て……。もう、腕が折れるかと思ったじゃないですか……」


 ぶっ飛ばされた俺は、殴りつけられた腕を擦りながら起き上がる。


 いやはや、とても人間の腕力だとは思えなかったぞ。

 あんな細い腕のどこにこんな馬鹿力が潜んでいるのやら……。

 やっぱり人は見かけによらないモノだなぁ。


 ルティスさんは相変わらず微笑を浮かべ、


「ご安心くださいませ、骨なんて折れてもひと月ほどでくっ付きます。治癒師に任せればもっと早く治るでしょう」


「そういう問題じゃないんですが……。ま、いいや」


 俺はよっこいしょと立ち上がると、彼女の近くへ歩み寄る。


「けれど安心致しましたわ。どうやらレーネの話は本当のようですから」


「レーネさんの……?」


「ぴーすぴーす」


 無表情のまま両手の指でピースサインを作るレーネさん。


 ……ああ、なるほど。

 おそらくルティスさんは、彼女からこの要塞で起きた出来事を全て聞いたのだろう。

 当然、俺があの怪物(アンドロマリウス)を倒したことも。

 で、試したってワケだ。


「それじゃ、俺は合格(・・)ってことでいいんですか?」


「いいえ、まだでごさいます。今のはほんのご挨拶。肝心な質問にお答え頂いておりません」


「質問って――」


「はい、オスカー様は〝犬〟と〝猫〟、どちらがお好きですか? ちなみに私は犬派で、特にドーベルマンとロットワイラーが大好きです。プリティですよね♪」


「そ、そうですか……」


 ご丁寧な自己紹介どうも。

 しかし、これって本当に大事な質問なのか……?

 まるで要領を得ないのだが……。


 う~ん、犬と猫かぁ……。

 これまでペットを飼ったことなんてないし、あまりピンとこないんだよなぁ。


 別にどっちも嫌いじゃないけど、凄い好きってワケでも……。

 そもそも動物自体にあまり興味が――いや、待てよ?


「さあさあ、オスカー様はどちら派ですか? ご返答によっては……」


「えっと、俺は――」


 ……いるな、一応。

 好きな動物。


「――〝羊〟が好きです」


「…………はい?」


「犬と猫よりも羊が好きですね。俺は羊派です」


 正直に答えた。

 すると――


「「ちょ、ちょっと待てぇっ!」」


 リーゼロッテとデニスさんが、凄い形相で俺に詰め寄ってくる。


「そこは犬派って答えるトコでしょうが!? アンタ命が惜しくないの!?」


「そ、そそそうだぜお坊ちゃん! 俺は猫派だし気持ちはわかるが、こういう時は相手に合わせるのが礼儀ってモンだ! 早く訂正しろ!」


 二人に両肩を掴まれ、思いっきり揺さぶられながら怒られる。

 

 そんなこと言われてもなぁ……いいじゃん羊って。

 羊毛は衣服になるし、草と水があれば育つし、性格も基本穏やかだし。

 なにより見てて癒されるし、ふわふわだし、もふもふだし……。


「……ふむ……羊、羊ですか……」


 俺の答えを聞いたルティスさんは、クスッと笑う。


「なるほど……オスカー様、あなた様はとっても面白いお方ですわ」


 彼女はそう言って、再びしゃなりと頭を下げる。

 同時に、放たれていた殺気が消失した。


「大変ご無礼を致しました。オスカー様が女王陛下へ害のある人物かどうか、確認させて頂きたかったのです」


「女王陛下へ……?」


「はい。結果、危険はないと判断致しました。少々天然ちゃんではありましたが」


 にこやかに笑って、ひと呼吸置いた彼女は――


「オスカー・ベルグマイスター様。エレオノーラ女王陛下が面会をご希望されておいでです。どうぞ――私と共においで下さいませ」



   ✞ ✟ ✞



「……オスカーの奴、連れていかれちゃった……」


「女王陛下に謁見たぁ、お坊ちゃんも出世したもんだねこりゃ」


 オスカーがルティスに連れていかれ、場にはリーゼロッテ、デニス、レーネたちが残される。

 そんな中、


「……オスカー様は〝羊〟がお好き、と」


 レーネが呟く。

 そして不意にリーゼロッテの方を見て、


「よかったですね、リーゼロッテ様」


「? それどういう意味よ」


「いえ、あのお方は将来よき夫になるだろうな~と、そう思っただけです」


 そう言い残すと、レーネはスタスタとどこかへ歩いていく。


 リーゼロッテはしばしポカンとするが――言葉の意味に気付くと、頬を真っ赤に染めた。


「――はっ!? ちょ、ちょっとレーネ! それをアタシに言ってどうしようっての!? こら、待て!」



少しでも面白い、次が気になると思っていただけたのなら、

ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】をして頂けると幸いです。


【評価】はこのページの下の「☆☆☆☆☆」の箇所を押していただければ行えます。


何卒、評価を……評価を……!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ