第39話 『ジークリンデ要塞』奪還②
腐蝕を始めていた剣が、砕ける。
それと前後して――蛇の頭が、胴体と分かたれる。
『――――』
奴の身体はコントロールを失い、ぐらりと力なく倒れる。
そして地面へと落ちた蛇頭は、
『まだ……俺様はまだぁ、負けてないぃ……。俺様は弱くなんかぁ……』
蛇の眼をギョロギョロと動かし、こんな状態でも戦いを続けようとする。
俺はそんなアンドロマリウスの眼前に立って――視線を合わせた。
「……お前の負けだよ。残念だけど」
『……………』
ほんの少しの間、アンドロマリウスは無言で俺を見つめる。
そして、
『そうかぁ…………弱いのはぁ……罪人はぁ……俺様の方だったのかあぁ……』
俺に見下ろされたアンドロマリウスはそう呟き――こと切れた。
蛇の眼が白く濁ったかと思うと、蛇頭と胴体がボロボロと風化を始め、消滅。
そして胴体があった場所に、アベルの死体だけが残された。
奴の最期を見届けた俺は、
「なあ、アンタ」
生き残った護衛の一人に声をかける。
「ひ、ひぃ!? なんでありましょう!?」
「『ヴァイラント征服騎士団』は要塞を奪還した――。あのクロードって司令官にそう伝えろ。被害を増やしたくなければ、早く兵たちを連れて逃げろってな」
「は、はいぃ!」
護衛の一人は脱兎の如く要塞から出て行き、前線のアシャール帝国軍へと走っていった。
その直後、俺の下にレーネさんがやって来る。
「オスカー様、捕虜の解放及び要塞の掌握が終わりました」
「ああ、お疲れ様レーネさん」
「いえ、オスカー様こそ。先程の戦いはベリーグッドで大興奮モノでした。このレーネが超がんばったで賞を贈呈致します」
「……やっぱり、隠れて見てたんですね。加勢して下さいよ……」
「イヤです。悪魔となんて戦いたくありません。死ねます」
相変わらずハッキリ言うなぁ、この人。
もっとも、あんな怪物を見たら誰だってそう思うだろうけど。
まあ、それはそれとして――
「……レーネさん、実はあの怪物を知ってたでしょ。諜報機関の人ですもんね」
「なんのことかにゃ? よくわかんない♪ ……などと言っても、もはやオスカー様は全てお見通しなのでしょうね」
「そりゃ、あなた怪し過ぎますから。で、どうなんです?」
「……情報は有しておりました。極めて断片的ですが」
レーネさんはキュッと手袋をはめ直すと、正門広場の中央に向かって歩き出す。
そして右腕を上げ、
「オスカー様には、いずれ全てお話し致します。ですがまずは――この戦を終わらせると致しましょう」
パチン、と指を鳴らす。
すると魔術が発動し、上空目掛けて閃光魔弾が打ち上がった。
『ジークリンデ要塞』全体を照らすほどの、眩い光。
その光によって――――城壁上に〝ルーベンス王国の国旗〟を掲げる兵士の姿が、露わとなった。
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