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第25話 二手に分かれて


 ――夜。

 空には月が上り、暗闇が人々の視力を奪い去る、そんな時刻。


 無数の松明によって怪しげに照らされる『ジークリンデ要塞』を、ギルベルトは腕組みしながら眺めていた。


「……オスカーの奴、こんな作戦で大丈夫なのか? 失敗したらタダじゃおかないからな……」


「ギルベルト様、予定の時刻となりました。兵士一同、準備が整っております」


 部下の騎士からその報告を受けたギルベルトは「うむ」と答え、マントを翻して後ろへ振り向く。

 ――彼の背後に控えるのは、出陣の準備が整ったおよそ二千の騎兵たち。

 月明かりで僅かに照らされる彼らの表情に怯えはなく、勇ましさに溢れてる。


「――聞け、勇敢なる『ヴァイラント征服騎士団』の戦士たちよ! 僕たちはこれより、『ジークリンデ要塞』を横奪した異国の蛮族共へ攻撃を仕掛ける! しかし敵は大軍、我らは少数、厳しい戦いとなるであろう!」


「「「……」」」


「故に、改めて諸君らに問いたい! 『ヴァイラント征服騎士団』が騎士に求めるモノはなにか!?」


「「「勇気ある戦い!」」」


「力なき人々が僕らに求める姿はなにか!?」


「「「高潔なる守護者!」」」


「僕らを強者たらしめる所以はなにか!?」


「「「不屈の信念と忠誠心!」」」


「武器砕け血が流れようと、眼前に敵あらば!?」



「「「征服(ヴァンキッシュ)! 征服(ヴァンキッシュ)!! 征服(ヴァンキッシュ)ッ!!!」」」



(よし)ッ!」


 ギルベルトは騎乗し、腰の剣を抜く。

 そして、それを月光へと向けて掲げた。


「僕ら『ヴァイラント征服騎士団』が何故〝征服〟の名を冠するのか……その理由を、蛮族共にたっぷり教えてやろうじゃないか。全軍――――出陣ッ!」



   ✞ ✟ ✞



「痛! お、おい押すな!」


「後がつかえてんだよ! 早く進めって!」


「仕方ないだろ! 道が狭いんだからよ!」


 ――ギルベルト率いる本隊とは別行動を取る、五十人の兵士たち。

 彼らは今、とても狭苦しい通路の中を移動している。

 いや、ここは通路の中というより土管の中と言うべきか。

 そこは大人が四つん這いに這ってようやく通れるくらいの広さしかなく、兵士たちはそこを一列になって進んでいる。

 勿論、俺もその中の一員だ。


 ……ちなみに、どうして俺たちがそんな場所を進んでいるのかというと――


「あ、あの、レーネさん……この道って本当に城内に続いてるんですよね……?」


「間違いありません。この地下道は、要塞に万が一の危機が迫った際に使われる隠し通路。本来であれば司令官の脱出用ですが、こんな使い方もできます。ここを抜ければ要塞の中枢に入り込めますよ」


 先頭を進むレーネさんは、相変わらず抑揚のない口調で説明してくれる。

 俺は彼女のおしr……いや、後ろ姿から目を逸らしつつ付いていく。


 ――そう、これはレーネさんからもたらされた情報だった。


 〝『ジークリンデ要塞』には、外部と城内中枢を繋げる隠し通路がある〟


 要塞を囲う城壁から離れた森の中。

 そこに長い地下道の入り口が隠されており、『ジークリンデ要塞』と直接繋がっていたのだ。


 今レーネさんが言ったように、万が一を想定して作られたモノ……らしいのだが、彼女曰くあまりにも長い間使われていなかったことと、明確な要塞の弱点にもなっているために、今や存在を知るのは極々一部の人間だけらしい。


 それって、つまり重要機密というワケなのだが――


「しかしレーネさん、よくこんな場所を知ってましたね」


「まあ、業務の一環ですので」


「……業務って?」


「お答えできません」


 いや、答えられないんかい。


 答えられないなら安易に言わないでほしいなぁ……。

 絶対わかった上でからかってるんだろうけど……。


「それに……オスカー様なら、もう察しがついているのではありませんか? 私の正体について」


「……まあ、大方ね」


 正直、彼女が隠し通路の話をしてきた時点で薄々察しは付いていた。

 彼女の――正体。


 ローガン騎士団長が、何故レーネさんを俺たちに同行させたのか――というより、何故レーネさんが『ヴァイラント征服騎士団』の一員として認められているのか。

 彼女は何故、難攻不落と呼ばれた『ジークリンデ要塞』の重要機密を握っているのか。


 ……彼女が使用人だなんて、とんだ建前だ。

 おそらく彼女は――


「オスカー様、お尻を見過ぎです」


「え?」


「私のお尻に熱視線を注ぎ過ぎです。このキュートなヒップが魅力的なのはわかりますが、流石の私もちょっぴり羞恥を覚えます」


「あっ、すみま……っ! って、見てません! 見てませんから、本当に!」


「冗談です。オスカー様は本当に面白いお方ですね」


 相変わらず感情が乗っていない声でそう言うレーネさん。

 後ろからじゃ見えないが、たぶん表情も全く変わってないんだろうな……。

 なんだか、この人と話してると疲れる気がするよ……。


「……オスカー様、そろそろ出口です」


「!」


 ――どうやら、長い土管の旅もようやく終わりそうだ。

 とはいえ……ここからが本番だけどな。




遅ればせながら、コミカライズ化が決定しましたので連載を再開させて頂きます。

(まさかこの作品にお声がけ頂けるとは思ってなかった……)


漫画雑誌『花とゆめ』の増刊号であり、新しい少年誌でもある『少年ハナトユメ』にて連載予定です!


作画担当様は"渋井柿"様。

キャラデザも既に頂いておりまして、公開OKということなので先行公開させて頂きます。



『オスカー・ベルグマイスター』

挿絵(By みてみん)



『リーゼロッテ・メルテンス』

挿絵(By みてみん)


オスカーは爽やかな感じが、リーゼロッテはむすっとした感じがとってもいいですね。


今後も定期的にデザインやイラストを後書き等で公開していく予定です。

再開まで随分と期間が空いてしまいましたが、何卒お付き合い頂ければ幸いです。



少しでも面白い、次が気になると思っていただけたのなら、

ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】をして頂けると幸いです。


【評価】はこのページの下の「☆☆☆☆☆」の箇所を押していただければ行えます。


何卒、評価を……評価を……!


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