第24話 『ジークリンデ要塞』攻略戦
「……『ジークリンデ要塞』が……陥落しただって……!?」
「はっ……既に大勢のアシャール帝国兵が中へ入っており……要塞には、奴らの旗が立てられております……!」
「そ、そんなバカな……! だって籠城を初めてからまだ三日程度しか……!」
――脆すぎる。呆気なさすぎる。
ギルベルトはそう言いたいのだろう。
俺もまったくもって同意見だ。
だが……同時にどこか納得してしまう自分もいる。
だって司令官が父上じゃあな……。
「……どうするギルベルト。要塞の味方とアシャール帝国軍を挟み撃ちにするってのは無理になったぞ。このままじゃ、俺たちだけで10万の軍勢――いや、『ジークリンデ要塞』を攻略しなきゃいけなくなる」
「うるさい! わかってるよ! 今、今考えてるんだ……!」
ギルベルトは冷や汗を流しながらカチカチと爪を噛む。
流石の彼でも、『ジークリンデ要塞』がこんな超スピード陥落するとは思ってなかったのだろう。
「一度『ベッケラート要塞』に引き返そう。もしこのまま戦えば、いたずらに味方の損害を増やすことになる」
「ふざけるな! 『ヴァイラント征服騎士団』である僕たちが、尻尾を巻いて逃げるっていうのか!?」
彼は俺に掴み掛かり、憤怒した顔をぐっと寄せてくる。
「僕たちにねぇ、負けは許されないんだよ……! 僕たちの……僕たちの後ろに、一体どれほどの力なき人々がいるのか、考えたことがあるか!?」
「な……に……?」
「もし今『ジークリンデ要塞』を敵に渡せば、ここを拠点にアシャール帝国はあっという間に国内に雪崩れ込んでくる! そうなった時、最初に犠牲になるのは貧しい平民たちだ! 僕らみたいなね!」
「ギルベルト、お前……」
「僕はね、そんな人々を守るために必死で努力して、騎士にまで成り上がった。病で床に臥せた母さんは、それはもう喜んでくれたさ。僕はその期待を裏切るワケにはいかないんだよ。逃げたきゃ……一人で逃げればいい」
――この戦いが、自分の死に場所である。
ギルベルトの目にはそんな覚悟が明確に宿っていた。
どうやら……俺は彼のことを見誤っていたのかもしれない。
「……すまなかった、ギルベルト。俺も一緒に戦うよ。逃げたりなんてしない」
「ふん……勝手にし給え」
ギルベルトは俺から手を放してくれる。
そしてテーブルの上に敷かれた戦略地図を再び眺め始めた。
だが、逃げない――とは言ったものの、どうやって戦えばいいのやら。
たった5千の軍団で、要塞に真正面から攻撃を仕掛けるなんて自殺行為。
なにか搦め手を使わなければならない。
どうにか上手い方法は……う~ん……。
「オスカー様、オスカー様」
その時、レーネさんが俺に向けてチョイチョイと手招きする。
相変わらず無表情な彼女に近付くと、
「失礼、少しばかり耳をお貸しください」
「え? う、うん……」
「ゴニョゴニョ……」
レーネさんはとても小さな声で俺に耳打ちする。
それを聞いて――
「……え? それ、本当なんですか?」
「本当です。しかし情報の出所はお教えできません。乙女の秘密を信じてほしいな♡」
「はぁ……」
せめて笑顔でそう言ってもらえると、可愛げもあるだが……。
しかし――これは活路になるかもしれないな。
「斥候のキミ、ちょっといいかな?」
「は、はい! なんでありましょうか、オスカー様!」
「『ジークリンデ要塞』にいたはずの味方はどうなってる? 味方の将や兵は無事なのか?」
「そ、それはなんとも……ただ外郭を偵察した限りでは、少なくとも大規模な処刑が行われた跡は見受けられませんでした」
「よし、ある程度の味方が残っている可能性があるな……敵の司令官に人情がありそうで助かった。ギルベルト、ちょっと作戦を思いついたんだが――聞いてくれるか?」
「作戦だって? ……はん、期待はしないけど聞いてあげるよ」
「いやなに、難しいことじゃない。ただ……俺たちがやられたことを、そのままやり返してやろうと思ってさ」
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