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第22話 敵は敗退寸前だったりしてね、アハハハ!


「さて……それでは頼んだぞ、二人共。武運を祈る」


「はい。行って参ります、ローガン騎士団長」


「……」


 ローガン騎士団長の見送りに対し、胸に拳を当て敬礼する俺とギルベルト。

 もっとも、ギルベルトは相変わらず不服そうな顔をしているが。

 そんな俺たちの背後には、5千という数を構成する兵士と騎兵。

 この全てが『ヴァイラント征服騎士団』の団員たちであり、誰も彼もが精強な顔をしている。


「こらギルベルト。曲りなりにもお主が団長なのだから、シャキッとせんか」


「……わかってますよ。よし、それでは全軍、僕に続け!」


 騎乗するギルベルトの号令に合わせ、動き始める兵士たち。

 俺も騎乗し、ギルベルトと共に兵士たちの先頭を走る。


「……オスカー。先に忠告しておくよ」


「? ああ、なんだ?」


「今回の戦い、総指揮を執るのはあくまで僕だ。お前は余計なことはするなよ。僕の命令にだけ従っていればいいんだ。わかったね」


 恨めしそうにギロリと睨み付け、俺を脅してくるギルベルト。

 いや、そんなこと――


「わかってるよ。重々承知してる。俺は指揮のことなんてさっぱりだからな。俺のことは駒と思ってくれればいい。頼りにしてるぞ、ギルベルト」


「なっ……ふん、調子のいい奴め……!」


「わー、オスカー様ってば大人(おっとな)ー。カッコいいー、パチパチパチ」


 俺たちと同じく馬で走りつつ、無表情のまま小さく拍手をしてくるレーネさん。

 その言い方だと、なんだか俺を称賛しているというよりギルベルトを皮肉っているようにしか聞こえないんだけどなぁ……。


「うるさいよレーネ! ほら、全軍急げ! 時間は待ってくれないからね!」


 手綱をバチンと叩き、馬を急がせるギルベルト。

 俺たちもそれに続いて、全軍移動速度を速めるのだった。



   ✞ ✟ ✞



 ――『ベッケラート要塞』から出発した俺たちが『ジークリンデ要塞』付近に到着したのは、翌日の夕暮れだった。

 勿論できることならもっと早く到着したかったのだが、騎兵以外に歩兵も連れた状態ではこれくらいが限界でもあった。


 俺たち『ヴァイラント征服騎士団』は『ジークリンデ要塞』を包囲するアシャール帝国軍からやや離れた森の中に布陣し、身を隠しつつ兵士を休息させている。

 ここからではアシャール帝国軍はともかく『ジークリンデ要塞』の詳細な状況を把握できないため、現在は斥候を送って偵察中。

 そんな中、俺とギルベルトは簡易テーブルの上に地図を引いて戦略を話し合っていた。


「さて……10万の敵兵相手にどう戦うつもりだ、ギルベルト? 意見を聞きたい」


「ふん、大軍と言っても所詮は寄せ集めの兵共さ。騎兵の突撃を喰らえば恐れて逃げ出すに決まっているし、僕たちが奴らの背後を取ったからには袋の鼠同然だとも」


 ギルベルトは地図の上に置かれた凸型駒を動かし、自分がどう考えているか視覚的に再現してくれる。

 どうやら――彼は陽動・包囲戦術を執ろうとしているようだ。


「『ジークリンデ要塞』は山を切り崩して作られていて、正門前は開けた場所になってる。敵はそこに密集しているだろうし、まずは少数の囮部隊で正面から攻撃を仕掛ける。適度にちょっかいをかけたら撤退して、敵がそれに追撃をかけて本隊警護を手薄にした瞬間に、左右から騎兵が突撃。敵大将の首を取ってお終いさ」


「……そんなに上手くいくのか? そもそも包囲戦術はハイリスクだし、もうちょっと慎重に動いてもいいんじゃ……」


「わかってないね、オスカー。『ヴァイラント征服騎士団』の練度はキミが思っている以上に高いんだ。包囲戦術なんて簡単だとも。それに僕らが上手く動けば、『ジークリンデ要塞』の兵士が打って出て挟み撃ちにしてくれる。この戦い、初めから僕らが有利なんだ」


 ――確かに、一理ある。

 敵が攻城戦を仕掛けている以上、俺たちが攻撃すればどうやっても挟み撃ちの状態にできる。

 それだけではなく、『ジークリンデ要塞』への攻撃の手を緩めることにも繋がるだろう。


 ただ……兎にも角にも、不安なのがその『ジークリンデ要塞』の司令官なのだ。

 父上(ヨハン)がギルベルトの戦術を理解してくれるだろうか?


 ……たぶん、いや間違いなく、無理だと思うんだよなぁ。

 俺にとって最大の懸念事項は、救助する味方が父親だってことなんだよ。


「……ギルベルトの言ってることはわかった。ただせめて、斥候が帰ってくるのを待とう。具体的な話はそれからでも――」


「――報告! 斥候部隊、只今帰還しました!」


 言ってる傍から、さっそく斥候に送り込んだ部隊が帰ってきてくれる。

 ナイスタイミングだ。

 ギルベルトは彼らへ近づき、


「ああ、ご苦労様。それでどんな様子だったかな? もしかして『ジークリンデ要塞』の堅固な守りに、敵は敗退寸前だったりしてね。アハハハ!」


 高笑いを上げるギルベルト。

 しかし――それとは対照的に、斥候の兵士はカタカタと震えていた。



「そ、そ、それが……『ジークリンデ要塞』は、既に……陥落している(・・・・・・)模様……!」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] これは女王に任命責任があるよな。 いくら息子が有能だったとしても、親がどんな人材かもろくに調べず国防の最前線とも いえる場所に指揮官として放り込んだ結果がこれでは流石に駄目すぎる。 無…
[一言] いやこれ、誰のせいってあきらかに女王様のせいだよね。 任命責任ってもんがあるし、全く指揮なんてとったことない人間を超重要な最前線拠点のトップに急に据えるとか、あほなの? 頭いいキャラとして女…
[一言] ・・・え? もしかして、砦の奪還戦を、5000の騎兵で行うなんて事しませんよね? もう少し位耐えていても良くない!?援軍に来た意味ないじゃん! これ、絶対に退却戦になるよね? このク…
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