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友引

作者: 十一橋P助

 小学生の頃、僕には特に仲のいいハルトって名の友達がいた。家が隣同士ということもあり、僕たちは家族ぐるみの付き合いをしていた。

 ある夏、ハルトの家と僕の家、二家族で一緒に海に行くことになった。レンタカーで借りた大きな車の中で、僕たちは大はしゃぎだった。

 一日中泳いだ後、ハルトのお父さんの運転で帰路に着いた。

 その途中、事故が起きた。みんな疲れていたのだろう。慣れないレンタカーだったからかもしれない。車は緩やかなカーブを曲がりきれず、ガードレールを突き破って海岸線の岩場に落ちた。

 事故の後、お母さんは深刻な顔で僕に言った。

「シュウスケ、よく聞きなさい。もう、ハルトくんには会えないのよ」

「どうして?」

「引っ越しちゃったの。どこへ行くかも言わずに」

 事故のとき運転していたのはハルトのお父さんだった。恐らく僕たち一家に合わせる顔がなくて、あるいは世間体を気にして、誰も知らない土地に移り住んだのだろうと母は言った。

 幼かった僕はそんな大人の心情など理解できるはずもなかった。もう一度ハルトに会いたいと駄々をこねる僕に、父はこう約束した。

「今すぐにというわけにはいかない。でもハルト君がどこへ行ったのか、お父さんが必ず見つけ出すから、そのときまで我慢してくれ」

 その言葉が実現するまでに10年の歳月を要した。ハルトとその家族はW県に引っ越していた。

 ハルトの家のリビングで待っていると、学生服姿の彼が帰ってきた。随分と背が伸びているが、面差しはあの頃のままだ。

 部屋の片隅で佇む僕に気づいたハルトは瞠目し、腰を抜かさんばかりに驚いた様子だ。

 パクパクと動かしていた口からようやく声が漏れる。

「……シュウスケ?お前、死んだはずじゃ……」

「そうさ。僕らはあの事故で死んじゃったんだ。なのに君たち家族は今も元気に生きてるなんて、不公平だろ?」

 恐怖に顔を歪めたハルトにゆっくりと歩み寄る。

「だから迎えに来たんだ。さあ、一緒に行こう……」





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― 新着の感想 ―
[良い点] てっきり、死んでしまったのは友だち一家だと思っていたのですが、主人公たちの方だったんですね。ラストシーンにゾクリとなりました。
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