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今日から学校と仕事、始まります。②莞

えっ!?その日ですぐに骨折が治るお仕事ってあるんですか!?

作者: 孤独

この国は、深刻な人手不足なんだと思う。

だからそのための労働改革もあるものだ。

そして、そーいう改革をする度に現場で働く人間という貴重になってくる。1人に対して求める仕事は多く、難しくなる。



ドゴオオォォッ



その仕事は時に危険リスクを見ないこともある。

労働者が元気に働く午前中、1人の配達員が車に撥ね飛ばされた。


◇        ◇



「た、ただいま戻りました」


足をひきずり、額から流血している状態で帰って来た配達員。

休憩を3時間過ぎて、仕事仲間の元にやってきて彼は言った。


「助けてください。手伝ってください。終わりません」

「いや、そっちじゃない!どーしたお前!帰りがいつもより1時間遅いし!」

「車に撥ねられました……いや、身体が動くんで大丈夫です……」

「事故ったのか!?聞いてねぇぞ!」


事故が起きたらすぐに連絡しよう。救急、警察、保険会社、自分の会社と……。

事故内容を配達員は言った。


「生身で車に轢かれました」

「それしか見えねぇよ!どーしたよ、荷物は!?」

「午前中に持っていった分は一通り片付けましたけど……マジで足きついっす」


頭がボーっとするくらい熱い。血も汗も止まらない。

なんとか無事に、事故が終わった後に戻って来て、座り込んで一休み。

そんな状態を見て上司と仲間は訊く。


「どーする?大丈夫か?」

「ああ。……休ませて……病院行っていいっすか?」

「いや、お前の事じゃなくて、仕事が終わるかって訊いてるんだけど……」

「あんた等、鬼かよ」


いつもの事じゃないかと互いに感じ取って、座り込んでいる場合じゃない。出血がまず止まらないので、消毒と包帯とか色々つけてもらって


「で、午後の仕事いけるか?」

「待って。骨が逝ってる気がするんですけど……」


出血は自前や会社のを使ってなんとかなるが、骨だけはどーにもならない。


「車に轢かれたならナンバー覚えて、警察に連絡しながら、追いかけて来いよ!情けない!」

「ふざけんなーー!!んな元気あるなら、仕事やりきってねぇよ!!マンション前で轢かれて、5分は倒れてたんだぞ!」

「マンション前って事は……」

「車が出るところを轢かれたんだよ!人を撥ねておいて、猛スピードで行きやがった!!」

「スピード出てねぇから良かったじゃねぇか」

「よくねぇ!!」


人とは冷たいものだ。誰も助けてくんねぇの。まるでこの会社のようだぜ。


「でもな、警察に連絡しろ」

「午前配がまだあったんだよ!3分くらい道端で寝てから、アドレナリンだしまくってなんとか配達してたの!警察呼んでる暇ねんだよ!!だいたい、あんた等。午後、仕事できるかって、俺に訊くのか!?」

「うん」

「即答!?即答しましたね!!」


事故った時は頭と足が痛かった。頭の傷はその時どれくらいかは気付けなかった。足の痛みにしか気が回らず、こっちは血が止まらず、骨が軋んでいる実感も分かっていた。

かといって、まだ午前配があるため、少し休んでから続行した。


『荷物届けに来ました……』

『!ちょ、頭から血が出てますよ!』


お客様に言われてようやく頭の傷に気付いた……。頭というか顔か。こっちはそうでもなかったが、お客様を怖がらせたのは反省。


「とりあえず。午前できたんだから、少し手伝ってやるから午後も仕事しろ。飯は食ってこい」


それが指示かい。


「止血しとけば、大丈夫だろ」


応急処置と鉄分補給のための食事も終えた。まだ足も痛むし、頭もボーっとしているままであるが。こーいう事は言われると、”はい”とは言えない。午後からの仕事……というか、もう16:00を回っているけど。


「どーする、事故扱いするか?」

「……それ今、訊きます?」

「いちお交通事故だもんな。事故になったら、お前。今からしばらく自転車になるけど」

「それ言われるから電話したくねぇんだよ!!もーっ!自転車で今の業務ができるわけないじゃないですか!」


隠蔽は良くない事だと分かってはいるが、交通事故に遭おうが起こそうが。会社などに連絡いれてしまうと、保険やらなんやらの処理、配達員の運転技能のチェック、事故原因の検証、それらへの対応などなど。それらが終わるまで起こした側と遭った側は車などが乗れず、自転車になる。


「足やられてるのにそれ言うか!!ホントに鬼!」


大事なのは


「お前がまだ本社や警察、保険会社とかに黙ってるから、それ訊いてるんだよ!報告次第!お前次第!俺にはお前が骨折してても、治るお仕事を与えることができるんだ!」


私がそれを黙り、痛みを堪えて、何事もないように通常の業務をこなすか。(こっちを選んだ)

私がそれを今からでも伝え、病院行ってから診断書をもらい、その後は痛みを堪えて、自転車でしばらく、通常の業務をこなしつつ、事故原因などの検証でさらに時間をとって、さらに説教を食らうか。


「休む選択肢はないんですか?」

「あるわけねぇだろ。人手不足なんだから……」

「まー、コロナじゃねぇから!客に感染するとかじゃねぇから、なんとかしろ!お前、轢かれた時からそっち選んでただろ!」

「…………はぁ~……やだ、この会社」

「いつもの事だろ」


ずーっと足が痛いまま、仕事をする。

病院にようやく行ったのは事故から、2週間以上してからのこと。(平日休みがなかった)



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