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雷の覇者  作者: 悠奏多
8/13

第5話:結成

「う〜〜ん」


試合後理沙はすぐにその意識を覚醒させた。

ぼやけた視界であたりを見回す。


まず最初に目に飛び込んできたのは空。少し赤くなった空に、ところどころ雲が浮かんでいる。きっと夕方なのだろう。

次に視線を横に向ける。そこにはいつもの訓練場の景色が広がっており、見学席のほうから努、棗、心の順で駆け寄ってくるのが確認できた。



「っ!?」

っとそこまで確認して理沙は自分が模擬戦で響に負けたことを思い出した。


「お?目ぇ覚めたか?」

急に自分のそばから声が聞こえ慌ててそちらを確認する理沙。視界一杯に響の顔が写りこむ


「きゃぁっ!?」

「危ねえな?落としちまうだろ。」

飛びのこうとして身をよじった理沙に対し響は抗議の声をあげた。


そこで初めて理沙は自分の状態について考える

(落としちまう?何を?私を。どうして?かかえてるから。)

自問自答を終えた理沙は一つの現実に直面する。


そう、お姫様抱っこと言う現実に


ボンッっと音を立てて瞬間沸騰した理沙は

「ちょっと!?なんて格好させてるのよ!早くおろして」

とジタバタする


「ちょっ、お前。暴れんな!ホントに落とす・・イテテテテッ」

そう言って響は頬をつねられながらも理沙を降ろすことに成功した。


「ぅう、どうしてあんたがお姫様抱っこなんてしてるのよ、バカ!!」


「ここにそのまま寝かせとく訳にもいかんだろうが」

赤くなった頬を隠しながら悪態をつく理沙に響は言った。


そこに駆けつけてきた努が

「お〜い大丈夫か?ん?理沙どうした?顔が真っ赤だぞ?」

と理沙を心配するが


「んなぁ!?別に赤くなってなんかないわよ!気のせいじゃない?」

っとまたもそっぽを向く理沙


「そうかぁ?ならいいけどよ」などと納得した努


「理紗ちゃん?ケガはないですか?」

遅れて駆け付けた棗が問う


「ええ、大丈夫よ棗。まだちょっと体が痺れてるくらいだから」


「よかったぁ。でも念のため回復魔法かけときますね。来て、シルヴィス!」

棗が声をかけると髪に付けていた鳥の羽の髪飾りが光る。

光がおさまると、先端に水晶のようなものが付いており、その周りを羽のようなもので囲った杖が出現する。


「彼のものに癒しの恵みを与えん!ヒールライト」

短い詠唱を終え、杖の先端に魔法陣が展開、そこからやさしい光が漏れ、それを理沙に当てる。


30秒程その光に当たった理沙は「ありがとう、棗。もう大丈夫よ」と言って、立ち上がった。


「全く。女の子相手なんですから、少しは手加減して下さいよ、兄さん。」


「いやいや。目の前に炎を撒き散らしながら殴りかかってくる奴に手加減なんてできんだろ。まぁ何にせよ、賭けは俺の勝ちだな?理沙」

咎める心に答えて響は理沙に言った。


「くっ!好きにすればいいじゃない!!」


「じゃあ、とりあえず保留で。ま、そのうち何かお願いするとしよう」


そんなことを言う響だが、当事者の理沙にしてみればたまったものではない。

いつ何を命令されるのか、その時のことを考え不安で顔を青くする。

無論響は、そんな理沙の反応を計算ずくでそんなことを言ったのだが・・



「とりあえず、お互いの実力はわかったかの?」

っと傍観していた一心が声をかける。その声に「はい」と答え一同は再び整列した。


「これからはこの班で活動してもらうことになる。皆仲良くするように。」

一心の問いに了解の返事を返す響たち


「さて、そろそろ疑問に思ってる者もいると思うが、何故今回このように我が学園の実力者を一つの班にまとめたのかを説明する」

その言葉に少し息を飲む5人


「お前たちは最近世界のいろんなところで妖魔の出現率が高くなっていることは知っておるかの?」

5人はうなずく


「そこで今回、我が学園はお前たちに学園の防衛を頼みたいと思う。」


「え!?妖魔からの学園の防衛ですか!?それは魔導教会や先生方の仕事で学生レベルの依頼じゃないですよ?」

一心の言葉に理沙が声をあげた


「うむ、本来はそうじゃ。しかし、妖魔の発生件数の増加や魔導犯罪の対応で魔導教会は人手不足なのが現状なのじゃ。妖魔発生の報せを出しても魔導士が派遣されるまで30分はかかる。それでは被害が拡がる一方でな。もちろん各先生方も対応はするが、それでも人出不足には変わりない。」


「なるほど、一般の学生には妖魔との戦闘は辛い。そこで俺達が選ばれたと言う訳ですか」

一心の言葉に響が言う


「そうじゃ。無論無理はしなくて良い。魔導教会の魔導士が来るまでの時間稼ぎと考えてくれればそれでいい。報酬もでるしの。どうじゃ?やってくれるかの?」


「わかりました。俺でいいのなら引き受けます。」

「私も兄さんと同じで力になります」

一心の問いに即答する神楽坂兄弟。


「後の3人はどうじゃ?」

その言葉に互いの顔を見る3人。そして一斉に頷き


「わかりました。俺は引き受けます」

「私もよ。この力が誰かの助けになるのなら」

「あの、私も及ばずながらお手伝いさせていただきます」

と承諾した。


「そうか、すまんの、危険な依頼をして。学園もお前さんらをサポートするからの。風紀委員の仕事もこなしながらだときついとは思うが、頼んだぞ」


「「はい」」

返事をする5人


「うむ、いい返事じゃ。それでは今日はこれで解散とする。各自疲れをとって明日からの活動に備えておくように。」

そう言って一心は訓練場を後にした。










「しっかし、なんか大事になってきたな。」

学園からの帰り道に努が切り出した。


「そうですね。こんな話になるなんて思ってもみませんでした。本当に私達で大丈夫でしょうか?」

努の言葉に棗が返す。


「大丈夫だよ、棗ちゃん。それに決まったことは仕方がないし、前向きに行こうぜ」

響が言う。


「はぁ、それもそうね。あんたを見てると本当になんとかなるような気がするわ。」

理沙の言葉に「だろ?」っと笑顔で返す響。


「ま、今更慌ててもしょうがないし、家に帰って風呂入って飯食ってさっさと寝るか!そうゆう訳で響、心ちゃん。明日からもよろしくな。じゃ、俺は先に帰るわ!」

そう言って手をあげ走って去っていく努。


「あはは、努さんらしいですね。」

「そうね。それじゃ棗。私たちも帰りましょう。響に心ちゃん、また明日学園で。」

「お先に失礼します」

そう言って去っていく理沙を、こちらに頭を一度下げてから棗が追って行った。


「おう、また明日な!」

響が答える。その隣では心が棗に手を振っていた。







「皆良い方たちでよかったですね、兄さん」

二人きりの帰路の途中で心が言った。


「ああ、そうだな。俺達は何としてでもあの笑顔を守らなくちゃな。」

改めて今回の任務に対する決意をする響


「そうですね。私と兄さんならできますよ。きっと。」

その兄を微笑みながら見て、心は言う。


「それはそうと兄さん。さっきの模擬戦。最後ちょっとだけ本気をだしましたね?」


「お前、見えてたのか?」

心の言葉に軽く驚く響


「風のあるところで私の眼を誤魔化せると思いましたか?リミッターを付けているとはいえ、目の前の出来事くらい把握できます。」


「そうだったな。ちょっと予想以上に強かったからな。あいつらいい魔導士になるぜ。きっとまだまだ強くなる。」


「フフ、守らなきゃいけない理由が一つ増えましたね?兄さん」


「ああ。それじゃさっさと家に帰って飯にするか!今日は何が食いたい?」


「そうですね〜、グラタンなんてどうですか?」


「まかせろ!じゃあ、まずは材料の調達からだな。買い物くらい手伝えよ」


「わかってますよ。ささ、行きましょう」

そう言いながら響の腕を引っ張っていく心。その顔もまた笑顔だった。


(お前の笑顔も守らなきゃな)

などと考えながら響はついて行った。












「ねぇ、理沙ちゃん?」


「なに?棗」

響たちと別れて帰宅していた理沙と棗。

その途中に棗が理沙に尋ねる。


「響先輩のことなんだけど。5年前の男の子に似てないかな?」

5年前、それはこの2人にとってあまり思い出したくない過去であり、いまここにいる自分たちを形作った出来事である。


「響が?確かに刀と雷を使ってたけど、もしあの子だったら今の私たちとは比べ物にならないほど強いわよ?確かに響も強かったけど・・・」

今日の模擬戦を思い出し、若干悔しそうにしつつも響と5年前の男の子を比べる


「やっぱり人違いじゃないかな?」

考えた末に結論を出す。


「そうかなぁ?今日初めて会った時、初対面って感じがしなかったんだよね」

なおも食い下がる棗。


「そう?う〜〜〜ん・・・」

棗がここまで言うのも珍しいなと思いながら理沙は思い返した。



あの5年前の辺り一面が真っ赤に染まった世界のことを・・・


どうでしたでしょうか?


次回は、理沙と棗の過去を書くつもりです。


楽しみにしていてください。

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