第1話:初登校
結局あれから簡単な料理を作り、二人で食べてから寝たのは日付が変わった頃だった。
次の日の朝。
PiPiPiPi・・・PiPiPiPi・・・PiPiPiPi・・・PiPiPガチャ!!
「・・・ふああぁぁぁぁ」
目覚ましが鳴る音で目を覚ました響は欠伸を一つして布団から出た。
彼、神楽坂 響の朝は早い。
現在朝の5時。普通の高校生ならまだ寝ている時間帯である。
しかし、彼にはこれから重要な任務が待っている。
それは・・・
「今日の朝飯は何作ろう・・・」
そう、朝食作りである。
眠い目を擦りながら制服に着替え顔を洗い、彼は冷蔵庫を開け中を確認する。
「卵にチーズ、ケチャップとバターっと。あとはパンがあったかな?」
そんなことを言いながら、材料を取り出す。
そして手早く卵をボールに割り、砂糖と塩で味付けし、暖めておいたフライパンで焼いていく。
さらに、パンの上にバターをぬり、その上にケチャップをぬる。
そこにチーズを載せてトースターで焼こうとした時、
「おはよぅ、兄さん」
パジャマ姿の妹が声をかけてきた。
「相変わらず、ちょうどよく起きてくるな。もうすぐで飯できるから、さっさと顔洗ってこい。」
「ふぁ〜い」という緩い声を背中で聞きながら、先ほどのパンをトースターで焼いた。
「ごっちそうさまでしたぁ〜、兄さん早く学校行こーよー」
えらく上機嫌な心が言う。
「なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「だってだって、学校だよ〜?私たち昔からお姉ちゃんと修行ばっかりだったし、勉強はお父さんに教わってたから必要なかったし。学校なんて行ったことなかったじゃん」
「だから一回学校行ってみたかったんだよ」っと言う妹を見て響は考えていた。
(姉さんはそのことも考えて俺たちにこの任務を与えてくれたのかもな)
普段はあまりやさしい一面を見せない姉を思い浮かべながら苦笑する。
「どうしたの兄さん?」
「なんでもねぇよ。そんじゃ行くか!忘れ物するんじゃねぇぞ」
「そんなに子供扱いしないでよ!大丈夫。持ち物は昨日のうちに確認したから。」
っと頬を膨らませながら言う妹を見ながら、ニヤニヤする兄響。
「なによぅ」
そんな兄の様子を怪訝に思った妹は兄を睨む。
その視線をスルーしつつ
「そんじゃ行くぞ〜。」
と言い玄関に向かう響
「待ってよ、兄さん」
そこで、あわてて突いてくる妹に
「ところでよ〜、我が妹よ。その格好で学園に行くつもりか〜?ニヤニヤ」
「・・・ッツ!?」
爆弾を投下した。
「いい加減、機嫌直せよ、心。俺はちゃんと指摘してやっただけだろ」
「いやです。兄さんは最初から気づいていました。何であのタイミングで指摘するんですか?」
「そりゃお前。その方が面白いからだろう♪。」
「やっぱり・・・はぁ」
諦めた表情で溜息をつく心。
そんなやり取りをしてるうちに二人はあるドアの前に着いていた。
ここは藤歌学園の学園長室に続く廊下である。
これから彼らは学園長であり、元七聖であり、彼らの義理の父親である鋼 一心に挨拶に行くところである。
コンコン「入りなさい」
響がノックすると中から威厳を漂わせる声で入室を許可された。
「「失礼します」」
そう言って中に入った二人の前には、大柄でがたいのよい60歳くらいの男性が机をはさんで反対側の椅子に腰かけている。
「久しいの、二人とも」
「親父も久しぶりだな。元気そうで残念だ」
「こらっ、兄さん」
「ほぉっほぉっほぉ、そういうお前も元気そうだな、馬鹿息子よ。」
「おかげさまで」
お互いに皮肉を言いあい一段落し、さっそく本題に移る。
「本日付けでお前たちを我が藤歌学園の生徒として編入する。任務内容は聞いておろう?」
「「はい」」
先ほどとはうって変って、お互い真剣な表情で話し始める。
「相手の動きは全く掴めておらん。相変わらず訳の分らん奴らじゃ。お前たちにはその調査も含めて今回の任務に当たって欲しい」
「「了解」」
「うむ、さっそくだが、お前さんらのクラスを言っておく。響は2−A、心は1−Aじゃ。さらに2人には学園の風紀委員に参加してもらう。」
「風紀委員ですか?」
「そうだ。風紀委員は学園内での魔法使用が認められておるし、ある程度の学校の権限も使える」
「護衛などがしやすくなるわけか」
「そうじゃ。風紀委員内では基本5人1組で班を作っているから、お前さんらの他にあと3人組んでもらうことになる。3人とも我が学園を代表する実力者じゃ。」
「わかりました。」
響が答える。
「その他にも、その5人で学外の依頼もこなすことになると思うから、仲良くするのじゃぞ」
「はい」
心が答える。この藤歌学園は一般の依頼の中でも難易度が低いものを生徒に経験を積ませる名目で、生徒が依頼をこなすことがあるのだ。
「その3人には事前に伝えてある。2人は響と同じクラスで、1人は心と同じクラスじゃ。まぁ、クラスに行けば分かるじゃろ。放課後には訓練場に集まるように。それでは各々健闘祈る」
「「了解」」
二人同時に頷き退出した。
退出した2人はそのまま職員室に行き、担任の先生に挨拶をして、職員室を出るところだ。
「いよいよですね、兄さん。」
「ああ、そうだな。なるようになるさ。じゃ、また放課後にな」
「はい、それでは」
2人はそれぞれ自分の担任に連れられて教室に向かった。
予想よりちょっと長くなってしまいました。
次回には、他のキャラも出せると思います。