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~NERD~ 陰キャの異世界放浪記  作者: はぜの木屋
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001.オレと砂漠と宇宙戦艦



 眩しい、もう朝か……。


 日光は瞼を透してオレに起きろと催促をする。


 瞼を開けると仰向けに寝転がったオレの真上に太陽が燦々と輝いていた。真上という事は世間的に昼頃なのだろうが、その枠から外れたオレには何時もの朝で変わりはない。ただ変わっているのは外で寝ている事だ。


 ……オレはその原因となった昨夜のことを思い出す。慌てる事は無い。夢も希望も無いオレに時間だけはタップリとあるのだ。



◇◇◇◇◇◇



 オレはデブ・オタ・イジメの三段スライド式ヒキニート。


 中学で引きこもって以降の数年間、日中はおろか深夜にも徘徊する癖は無いし外で寝るという趣味も無い。そんなオレが昨夜外出したのはある天啓を受けたからだ。


 画像掲示板に張られた飯テロ画像。


 人はパンのみにて生きるにあらず。そのネットの真実に突き動かされたオレは唐揚げサンド欲しさに家族の目を盗み、コソコソとゴキブリの様にコンビニへ出かけたのだ。


 ゴキブリを見つけたら女は泣き叫び、男はそれを潰そうとする。キモいモノに対する普遍的な人の本能なのだろう。それはオレにも当て嵌まった様で、コンビニ帰りのオレは本能の赴くままに生きる獣性を顕わにした輩達に絡まれ、ボコられ疲れて河川敷で寝入ってしまった。



◇◇◇◇◇◇



 普段と違う事をすると、普段と違うトラブルに見舞われる。慣れない事はするもんじゃない。年寄りの冷や水、ヒキコモリの外出と言ったところか。


 昼日中の河川敷で大の字に寝転がるオレ。ヒキコモって早や数年が経ち、曜日の感覚は忘却の彼方に消え去っている。今日が何曜日なのか知らないが地域住人どころか最悪の場合は小中学生に出くわすこともあり得た。


 オレは言わば現代の妖怪かUMA。数年は人目に触れなかった完熟キモオタクソニートなのだ。


 うーむ、地域住人の好奇の視線に晒される事無く、また、オレの神秘性を守る為に如何にしてこの場所から帰宅するか……。


 河川敷の堤防の上は幹線道路が走りその向こうには住宅地がある……筈が些か奇妙だ。音が、車や家庭からの生活音が一切聞こえない。いや、生活音どころか小鳥の囀りさえ無い。河川敷だというのに川のせせらぎすら……。完全に無音だ。


改めて空を眺めると日本の薄い青空とは違う濃い青空。空気が乾いているのか太陽以外には雲一つ浮かんでいない青一色。


 周囲の状況を確認するために上体を起こしたオレの眼に映った物は砂、砂丘、砂漠。前も後ろも三百六十度ぐるりと辺りは砂だらけだ。


 「と……鳥○県かな?」


 いくら鳥○砂丘でも見える範囲が砂だらけという事は無いので失礼に当たる。近年、緑地化が進む鳥○砂丘がこんなに乾いてサラサラした砂ではないだろうし。


 解せぬ。河川敷で寝ていたオレが砂漠で寝ていた事はどう考えても解せない。そして更に解せないところがまだあった。オレの身体の変化とフルチンだ。


 フルチンは輩に服を剥ぎ取られでもしたのだろう。……イジメでも良くやられた。


 まぁ、フルチンは置いておく。それよりも分からないのが体の変化だ。段も出来ないほどパンパンに肥え太った腹は消え失せ肋骨の浮いた痩せた体になっていた。生ハムの原木の様な手も足も芋虫の様な指も子供のそれの様に細くなり、声も高いし顔を弄ると二重顎も下膨れの顔もすっきりしている。


 背の高さもだ。中学でヒキコモリになったオレの目線よりずいぶんと低い。そう、子供の目線だ。地面の近さから恐らく九才か十才児くらい、百三十センチ程度の身長だろう。そして胡坐をかいた細い両足の間には鬣を失った子象が居た。一口サイズのソーセージと言ってもいいかもしれない。


 「ぶ、豚のオレがチビガリの子供になっちゃってるよ、ブヒッ?」


 ……か、可能性としては異世界転生かな? トラックに轢かれたり通り魔に襲われたりしちゃって神様が別世界へ生き返らせてくれる、ラノベじゃ散々に使い込まれて手垢で黄ばんだジャンルだな。


 だけどオレはトラックに轢かれてないし、輩にボコられたのも死ぬようなケガじゃ無かった。


 それに科学や内政に関する深い知識も無ければ武術も知らない。広く浅くを旨とする転生させる価値も無い只のキモオタ。いつの間にオレは死んだのか? 謎だ。


 「ふむ、周囲は砂漠でオレは子供でフルチンか……。おかしいよね、ラノベじゃ貴族とか最低でも農家に転生じゃないの? 転移なら森の中とかさ……それで魔物や盗賊に襲われているヒロインを助けたり、サバイバル生活したりして物語が始まるんだよね……」


 オレは置かれた状況を確認するため、再度辺りを見渡すが虫一匹居ない。ただ果てしない砂漠を風が吹き抜けるだけ……。


 「誰も居ない砂漠でどうしろって言うんだよ! アレか? お前はここで乾いていけっての? フルチンで? こんな転生させるなら死んだままで放っとけよ!」


 「保護対象者の要請は管理規定に基づき却下されました」


 オレの嘆きに空気を読めないマジレスがあったが周囲は砂ばかりで誰も居ない。しかし、確かに女性の声だった。少し鼻に掛かった無機質な声ではあったが大人の女性に間違いない。股間の子象を見られない様に両手で隠し、姿を見せない女性に呼び掛ける。


 「ど、どど、どちら様!? もしかして神様、女神様?」


 「非現実的存在ではありません。私は保護対象者管理体。主幹演算体より現惑星下での保護対象者の生存責任を委託された存在です」


 女性の声はそう告げると砂の中から現れた。日の光を全身に反射させる眩い銀色の……。


 球体。ソフトボール大の。


 これは知ってる。アレだ。経験値を沢山くれる銀色のスライムだな。ゲームと違って尖がり頭も目も口も無いがゲーム的異世界転生なのかな? 取り敢えずオレの奇妙な境遇を知ってそうなので聞いてみるか。


 「あのー、管理体さんだっけ? オレって何で此処にいるの。しかも子供の姿でさ? 知ってること教えてくれない」


 「経緯の発端は、私の本体である漂流中の恒星間戦闘制圧艦が保護対象者の居住する惑星との衝突軌道に侵入したことに拠るものです。惑星地表面接触時のエネルギー変換で無制限空間転移を行い緊急回避した際、保護対象者を巻き込みました」


 ふむふむ、巻き込み事故かぁ。トラックの巻き込み事故ってのは聞いたことあるけど宇宙船もするんだ。


 「現惑星下へ転移後に発見した保護対象者の残滓から化学精製物と微量な反応過程生成物を検知。加えて記憶領域からネットワークによる集団意志の存在と不確かながら他星系からの侵略に対する恒星間防衛戦争の記録を採取。以上のことから保護対象者を星間文明を築く平和的種族と認定しました。」


 ネットの集団意志に化学精製物は何となく想像がつくけど宇宙戦争なんて地球では起こってない筈。オレがヒキコモってる間にあったのかな?


 ……まさかアニメや映画とゲームの記憶を勘違いしてるのならこの銀玉は現実と空想の区別がつかないアブナイ頭だな。これは大人しく言う事を聞いておいた方がよさそうだ。


 「文化生命体保護規約に基づき保護対象者の復元作業を試みましたが生体素材が枯渇していたため有機再現を断念。代替措置として恒星間戦闘制圧艦の特殊装甲材と現惑星下に存在する未確認粒子の化合物で疑似生体素材を精製、それを用い保護対象者を復元しました。体型については疑似生体素材量の不足から遺伝情報内より適応する体格を選択しています」


 「……つまり、オレは一度死んで謎惑星に謎金属で生き返ったという事でいいの? でも、宇宙船なんて見当たらないんだけど……」


 「その認識で概ね間違ってはおりません。恒星間戦闘制圧艦は保護対象者の復元再生に残存動力の大半を使用し、現在は地下六百五十メートルの岩盤層で休眠状態です」


 うーむ、謎だらけだが、なってしまった物は仕方がない。メタリックなスライムでゲーム的世界かと思ったがS(少し)F(不思議)な世界か。オレにどうこう出来ることでは無いので受け入れるしかないか。


 オレは念の為に頬っぺたを抓ってみると痛みを感じる。謎金属で出来ているとは思えないが夢でも無いのか……。あぁ、空が青いなぁ。


 「痛覚を含む全ての感覚は生体再現機能を利用しています。保護対象者自身の行為により作用し危機的外部不快要因を遮断します」


 「それって熱さ寒さも感じないってこと?」


 「その理解で間違いはありません」


 確かに太陽は燦々と照り付けている砂漠なのに暑くは無い。空気は熱く乾いているんだろうが息苦しくも無い。多分、呼吸の必要も無いんだろうな。


 「大体分かった。えーと……オレは管理体さんの事を何て呼べばいいのかな?」


 「お好きにお呼びくださってかまいません。ですが保護対象者の指名は登録して下さい」


 銀色の球体はプルプルと体を振るわせオレの名前を聞いてきた。


 ほーん、名前ね。つってもココがどんな星、どんな世界か分からない。転生物に付き物の西洋ファンタジーなら元の日本人っぽい名前は何かカッコ悪いよな。かといって呼ばれ慣れたキモオタやクソニートってのはオレの心が挫ける。


 うーむ、確か外国じゃ陰キャのことナードって言ってたな。エロ動画サイトで見た事が有る。ナードならオレの精神にはノーダメージかな? 馴染みが無いし。


 「よし! オレはナードで決定。管理体さんは銀色の球体だからタマさんって呼ぶことにする」


 「保護対象者はナード。私はタマと登録しました」


 二人の名前を付け終わったわけだがこれからどうしよう。三百六十度ぐるりと辺りは砂だらけ。この星に人間が居るのならば、どっちに行けば人里に辿り着くのか? それ以前にフルチン状態から脱しないと只の変態だ。


 「それでタマさんはどっちに行けばいいと思う? オレ、服とか欲しいんだけど」


 「現状、ナードの身体に影響を及ぼす脅威はありません。現惑星の全球が砂礫で覆われていないのであれば、どの方角でもいずれ砂礫地帯から脱すると推測します」


 タマさんはサラッと怖い事を言う。確かに火星みたいな砂と岩だらけの星と思うとゾッとした。誰も居ない星にタマさんと二人っきりなど冗談ではない。異世界ではキャッキャッウフフがデフォだろ。


 「……微弱な振動と未確認粒子の揺らぎを検知しました。方位と距離を視界内に投影します。表示単位はナードの記憶を基にした大凡の数値です」


 悩んでいたオレの視界に矢印と数値が表示された。ゲームの様な半透明の緑の矢印は砂漠の一点を指し示し、距離は約五キロとある。


 「おぉう! すごいなタマさん。もしかしてステータス表示とかも出来るの?」


 「可能ですが、意味は有りません」


 少し引っ掛かる語り口のタマさんはオレの視界にステータスを表示してくれた。そしてその言っている意味をオレは理解した。運動性、耐久性、敏捷性、反応速度等々その全ての数値が1だったから。


 フフッ。チートなんてなかったんだよ。キモオタの数値なんてこんなものかと思うと惨めで涙が出てくるけど数値は歪まない。……無駄に便利な機能だな。ステータスは封印しとこう。直視できない現実は見ないに限る。


 「ステータスオフ…永久にオフ。グスッ……さ、さぁタマさん。とりあえず反応のあったあっちに行ってみようか」


 「了解しました。ナード」


 オレはタマさんを頭の上に乗せ、視界に表示された砂漠の一点に向け歩き出した。フルチンでな。



◇◇◇◇◇◇



 人間が居ればいいなぁ、なんて思っていました。


 はい。人間は居ました。異星人です。オレの居る砂丘の下、五十メートル先です。それも革の鎧を着て剣や槍を持った人、ローブを纏い杖を持った人がいました。ファンタジー世界です。多分魔法もあるんでしょう。


 でも皆さん死んでいます。その死体はでっかいサソリが食べています。大型バスぐらいある紅いサソリが人間を頭から貪ってます。グロ耐性皆無のオレが見てはいけないモノがポロポロ辺りに散乱してます。


 うーん、別な方向に向かうことも考えたが死体のそばにある荷物は惜しい。フルチンから脱却できるかもだ。困った時は右クリックならぬタマさんに相談しよう。


 「タマさん。あのでっかいサソリどうにか出来ないかな。オレ、服が欲しい」


 「脅威対象ではありませんが排除は可能です。排除しますか?」


 あのデカいサソリが脅威ではないと言う。さすが元宇宙戦艦。そこに痺れるが憧れはしない。銀玉だからな。さて、どうやって排除するのかは分からないが出来るならやってもらおう。


 「して! やっちゃって! お願いタマさん!」


 「機能保有者の使用許可を確認しました。機能保有者は右手を排除対象に向けてください


 「えっ!? 機能保有者ってオレのこと? ……ま、まぁいいや。右手を向けるだけだからね。怖い事オレやんないよ!」


 生来の小心者のオレはタマさんの言う通り右手をでっかいサソリに向ける。此れでどうやったらあのサソリを排除できるんだ?


 「対象を捕捉しました。力場回廊を形成します。機能保有者が未習熟の為、視界内に回廊を表示。斥力球を最小単位で投射します」


 不思議に思っているオレの右手首に半透明の緑の輪が浮かび上がる。緑の輪は複雑な幾何学模様で構成され、何かの回路図か魔法陣の様にも見えた。そしてオレの指先とデカいサソリを繋ぐように右手首同じ半透明緑の四角い枠が等間隔に連なり、枠の中心には小さなBB弾サイズの歪んだ空間が浮かんでいる。


 「投射準備完了。排除開始」


 驚くオレを意に介さずタマさんは淡々と排除を宣言した。オレの指先に浮かんだBB弾サイズの空間は四角い枠の中を音も無く飛び、デカいサソリに命中したその瞬間、齧っていた人間毎サソリの前半分が消え失せた。文字どおり塵も残さず。


 「な、なな、何したのかな、タマさん? 怒らないから正直に言ってごらん」


 「空間浮遊物排除機能を使用。捕捉した対象の活動停止を確認しました」


 「空間浮遊物排除機能って何なのソレ?」


 「空間浮遊物排除機能は空間航行の妨げになる浮遊物の除去に使用します。未探査惑星下におけるナードの生存性向上処置により、ナードの身体に移設した恒星間戦闘制圧艦の機能の一部です。ナードの体積上、設備本体の移設は不可能である為、現惑星下の未確認粒子を利用すべく理論を書き換え、攻勢、防御、索敵、治療など全設備の88.57%を再現し機能のみを移設しました。主とする動力はナード同様、未確認粒子に依存します。」


 知らない間に知らない星に転移したと思ったら、知らない間に宇宙戦艦になっていた!


 ……ふむ、宇宙船オレ号か。知らないことだらけだがチートと思えばいいのかな?


 「ちなみにだけど最大火器の威力はどのくらい?」


 「恒星の融合反応を異常推進させ、力場回廊を通し指向性を与えた恒星風を収斂加速し目標とした惑星核を……」


 「ストーップ! 分かりました。もういいです!」


 過ぎたる力は何とやら。この身一つで宇宙をプカプカ漂うのは勘弁だ。釘を刺しておいた方がいいな。


 「タマさん。タマさんはこの惑星下でのオレの生存に責任があるんだよね」


 「はい。最優先事項です」


 「なら、この惑星が消滅したら困るよね」


 「はい。ナードの活動にはこの惑星の未確認粒子が必要です。しかし、何らかの方法で摂取が可能であればその限りではありません」


 「それでも。それでもこの惑星に影響する火器を使うのはやめとこうか。オレとの約束だ」


 「……分かりました。惑星に影響しない範囲でナードの安全を確保すように努めます」


 タマさんが分かってくれたようで一安心だけど惑星に存在する謎粒子でオレが動いていたとはな。そうなるとゴハンは? 異世界飯を味わえたり出来るのかな? 生体機能を再現したとは言っていたが……むむむ。


 うむ、取り敢えず今のところ腹は減って無いし、難しい事は置いといて現場検証だ。



◇◇◇◇◇◇



 「おぅふ……グロいでござるよぉ」


 サソリのお食事現場に来てみたんだけどグロ過ぎた。頭から齧られていた人間は足首しか残ってない。サソリのハサミでチョッキンされた他の死体は首が体からオサラバしていたり、上半身と下半身が腸で繋がっていたりと正視に耐えない。タマさんは平気らしく身体から伸ばした触腕?で死体やサソリを弄り回している。


 グロいからぱっと見しかしていないが多分全員男性。地球の白人とさして変わるところは無いようだった。服に関しても目の粗い生成りの服で文化水準は高そうではない。荷物を漁ろうかとも思ったが気持ち悪くて近付けない。


 手持ち無沙汰に辺りをうろついていると所々砂に埋もれた死体たちを発見した。


 「おぉ! 綺麗な死体だ」


 新しい死体は今までと違い外傷が少なかった。殆どが首の骨が折れているようでグロさが少ないのは救いだ。死体達はどれもが丈の短い貫頭衣を着ており、首枷に付けられた鎖で繋がっている。奴隷かな?


 ふむ、死因は首枷だろうな。おそらく誰かがサソリに跳ね飛ばされて数珠繋ぎに首にダメージがいったのだろう。ナムナム。


 オレは近場から鎖の連なる方に死体を確認していった。二十代の白人系男性が五人に女性が二人。全員とも首が折れており、突然の出来事に直面した驚愕の表情を顔に張り付かせ息絶えている。


 「外人はツルツルと思ってたのに……みんなモサモサじゃないか!」


 まあ、何がとは言わない。パンツ履いてないし、男女の確認が出来たからそういうことだ。


 鎖を辿っていくと、どうやら最後っぽい死体に辿り着いたが今までの死体とは勝手が違う。鎖が行きついたのは腕だったからだ。それも褐色の腕。その腕に鎖が二重に絡みつき、腕はくの字に折れている。そして腕から伸びる鎖は首枷まで続き、首枷の先にある頭を見たオレは息を呑んだ。


 うつ伏せに倒れ、横向きになった細面の整った褐色の顔に尖った長い耳。砂まみれだが綺麗な銀色の癖ッ毛ショートヘア。息があるのかゆっくりと上下する背中。


 そしてその下。砂から顔を覗かせている二つの球体。汗を掻き、砂が張り付いている褐色のお尻。こ、これはもしかすると……。


 「に、にに、煮タマゴはっけーん!」


 「ナード、この生物は煮タマゴというのですか?」


 何時の間に来ていたんだ、タマさん。比喩的表現にマジレスはやめてもらおう。




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