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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行6-魔犬親子

 魔人の名前の読みは、カナリいい加減……

 いや、異世界ですのでっ!

 お気になさらないでくださいませ~ m(__)m


 姫がタォに人界の話をしていると、空が俄に暗く曇り、稲光が走った。


三つ首の黒い大犬が二頭。

怒りの気を紅蓮の炎にして纏い、天に現れた。


いきなり襲いかかって来る!


「父ちゃん! 母ちゃん! やめてっ!!」


劫火の塊が船に激突する寸前で止まった。


「タォ……」


「この人達が助けてくれたんだ!!」


大犬達、顔を見合わせる。

「まさか……」「私達……」


大慌てで、纏っていた炎を消し、小さくなり、船に降り立ち、人姿になり、深く頭を下げる。

「申し訳ございません!!!」


「いえ、ご心配、お察し致します」


「ありがとうございます……」


「あの、本当に大丈夫ですので」

アオが父親の肩に手を添え、起こさせる。


顔を上げた父の胸に、タォが飛び込んだ。

「父ちゃん♪」


その声で母親も顔を上げた。

「タォ、いったい何があったの?」

頭を撫でながら、母が尋ねる。


「裏山で、大きな黒い手に捕まって……

気がついたら、あの船に繋がれてたんだ。

それを、この人達が助けてくれたんだよ」


「そうだったのか……なのに私達は……

本当に、失礼致しました」

「助けて下さり、ありがとうございました」

また深く頭を下げる。


「いえ、そんな……

とにかく無事だったんですから、もう……」


なんとか顔を上げてもらう。


「あっ! 三の姫様!」

母親が珊瑚を見、膝立ちし、胸の前で指を組み、頭を下げる。

父親も跪き、頭を下げる。


「あ……いえ、それは――」

「紫苑と珊瑚は、三の姫の子じゃ」


「その、お姉ちゃんは、人界の姫さまなんだよ♪」


「こちらは、天竜の王子様方でございます」


 爽蛇……何を張り合ってるんだい?


「こちらの船は――」言葉が続けられない両親。


「私達は……首が飛んでも当然の粗相を……」


 ほらぁ、また、こうなる……


「俺達は、偶然 出会って、この戦を終わらせたい、その気持ちだけで、出自など関係なく、共に戦っているんです。

それだけですから、お気になさらないで下さい」


「三界の次代を担う御方々が戦っていらっしゃるということは……

これから、魔界の深層に向かわれるのでしょうか?」


「ええ、いずれは。

ですが、まだ力不足だと解っていますので、人界で成すべき事を達しながら力をつけ、挑みたいと思っています」


「でしたら、魔界に入りましたら、是非とも『序関(ジョカン)の砦』にお越し下さい。

魔犬の国は小国ではありますが、全力を尽くしますので」


「ありがとうございます。

正直、魔界の事は全く知らない有様です。

本当に心強い限りです」深く礼をする。


その時、闇の穴――とは、少し違う穴が開いた。


「ワン将軍、直ぐお戻り下さい!」


「解った。

申し訳ございません……」


「いえ、お急ぎください」


「ありがとうございます。

お前達は、後から ゆっくり戻っておいで」


ワン将軍はタォの頭を撫で、アオ達に一礼し、穴に飛び込んだ。




「タォ、どうして助けを呼ばなかったの?」


「呼べなかったんだよぉ」


「それは、コレのせいじゃ」懐から輪を出す。


ハクとフジが身構える。


「ミズチ、コレを入れる瓶は有るか?

聖水を満たして持って来てくれぬか?」


「はい、姫様」


「この輪が、力を吸い取るよぅなのじゃ」


「それで、タォの気を見つける事が出来なかったのですね……

あっ、姫様は持っていて大丈夫なのですか?」


「大丈夫じゃ。

人には、そもそも吸い取られるモノが無いよぅじゃ」

カッカッカ♪


蛟が持って来た瓶に輪を入れる。


「これで大丈夫じゃ」ハクとフジを見る。


「姫様、その輪、貰ってもいいか?

確かめたい事が有るんだ」


「よいぞ」ハクに向かってポイッ。


「うわっ! 割れたら、どーすんだよっ!

殺す気かっ!!」必死で受け取った。


「人には何とも無いが、竜は死ぬらしぃのじゃ。

他の者にとっては、力を吸い取られる程度のよぅじゃ」


「そんな物が……」


「魔物が、よぅよぅ使ぅておるぞ」


「存知ませんでした……」



リリスが出て来た。


「わん太郎、耳と尻尾を隠せ」耳打ちする。


「えっ?」


「早ぅ!」


「う、うん」引っ込める。



「睦月さん、今、どの辺りですか?

明日の拡大図を描きますので――」


リリスは睦月と話し始めた。


「あの者は、普通の人なのじゃ。

人々は今、天界も魔界も、おとぎ話の世界としか思ぅとらんのじゃ。

悪意ある何者かに(たぶら)かされ、すっかり忘れてしもぅて、人と人とが争ぅておる始末じゃ。


力も、術を使う事も出来ぬ人々に、いきなり天界や魔界の力や姿を見せれば、人々は恐れおののき、殻に閉じ籠ってしまうじゃろぅ。

じゃから、ゆっくり……(まこと)、少しずつ、知らせてゆかねばならぬのじゃ。


あの者も、もぅ、竜が()る事は知っておる。

じゃが、ここに居る王子達が、竜じゃとは思ぅとらん。

今は、人の姿の王子達を『竜使い』じゃと思ぅとる。

まだ……そんな段階なのじゃ……」


「それが『成すべき事』……」タォの母が呟いた。


「成すべき事の、ひとつじゃ。

人は、知る事で、知恵を使う事で、この人界を護る事が出来ると、竜が教えてくれたのじゃ」


アオが近付いて来た。

いつの間にか、空龍の治療に行っていたらしく、三眼を背負っている。


「もうすぐお昼です。

まだ、お時間、大丈夫ですよね?」


「時間は……でも、そんな……」


「遠慮は要らぬ」


「ボク、食べた~い♪」


「タォ! この子は、もうっ」母、赤面。


明るく楽し気な笑い声が響く。



「あら……」アオに近付く。


「この剣……失礼致します」三眼に掌を翳す。


「この気……

我が家に、同じ気の玉が有るんです」


「えっ!?」姫とアオ。


姫がサッとアオを回して、背中を向けさせる。

剣の穴を指し、


「見ての通り、この剣は、まだまだ穴だらけじゃ。

我らは、この玉も集めておるのじゃ」


「でも、家にある玉は、もっと大きいのですよ?」


「剣の穴に、あてがうと小さくなるのじゃ。

その玉、見せて貰えぬか?」


「はい、すぐに、お持ち致します」


母親は穴を穿ち、入って行った。


暫くして、また穴が開き、出て来た。


「これです」


差し出した玉は五つ。

うち、ひとつは大きい。


「これは……」姫とアオ、顔を見合わす。


「頂く事は出来るのか?」


「もちろん。その為に、お持ち致しました」


玉を剣に込める。

大きな玉は、柄の鍔側の穴に収まった。

三眼が嬉しそうに輝く。


「あと、ひとつじゃな♪」柄を撫でる。


「ありがとうございます」深々と礼をした。




「あの……皆様は何を……?」


「あの船の……

乗組員の方々の遺品を修復しているんです」


「私にも、お手伝いさせて頂けますか?

いくら魔人でも、十日も飲まず食わずで生きていられたのは、その皆様に護って頂けたからだと思いますので」


「ありがとうございます」


母親とアオは、ハクの傍に座った。


「わん太郎、話の続きをしてしんぜよぅ」


「姫さまは、あれ、やらないのか?」


「わん太郎が、ひとりぼっちになるじゃろ」


「姫さま♪ ありがと♪」


二人は舳先に向かった。





凜「ヒスイ、サクラは?」


翡【まだ不十分だから、もう一度、眠らせたよ。

  凜、無理に起こさないでね。

  答えられる事なら、私が話すから】


凜「アオとサクラは、何を調べてたの?」


翡【いつの話?】


凜「サクラが大学を出て、人界の任までの

  空白の時。八十年くらいあるでしょ?」


翡【竜宝の事、とても古い歴史、それと……】


凜「ヒスイの事?」


翡【そうだね。それも。

  でも、内容は話さないよ】


凜「うん。話してもらえるとは思ってない。

  で、サクラって、アオそっくりだった

  んでしょ?」


翡【そうだね。アオの『まねっこ』してた】


凜「本当のサクラって?」


翡【どちらかと言うと……

  今の方が近いと、私は思うよ】


凜「ヒスイとサクラって?」


翡【私達は……アオの弟だよ】


凜「それ以上は話さない、って顔だねぇ」


翡【うん。そのうちね】


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