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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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航路へ8-海藻

 船に戻ります。


♯♯ 天界 長老の山 ♯♯


 シロとモモは大婆様の部屋に残り、ムラサキはクロの所に行った。


キン、ハク、ウェイミンは、本の山の前に居た。


「貴殿方が救おうとしている方の為に、私は全力を尽くします」

本の背をなぞりながら、ウェイミンが言った。

「古典研究をしていて良かった……」


「ウェイミン、もしかして学者なのか?」


ウェイミンが頷く。

「まだまだですけどね」微笑み、上を向き、

「また、本に囲まれて暮らせるなんて!」

両手を挙げ、広げた。

心からの喜びが溢れていた。



「さっき、モモお婆様が見せた本には、何が書かれてあったんだ?」


「ここに来る途中でハク様に話した、神を召喚して、封印から解放してもらう術についてです」


「なら、それが読み解ければ――」


「いえ……最適かどうかは分かりませんから……」


「あ……そうか……」


「一度、お会いする事は可能でしょうか?

その……封印されている方に……」


「人界は危険だぞ!

今は、アイツを天界に連れて来る事は出来ないんだ……」


「双方、護りながら、天界と人界の境界下でなら会わせられるかもしれない」

それまで黙っていたキンが口を開いた。


「一度、人界に戻って方法を考えたい。

ウェイミン殿、モモお婆様、それでは宜しくお願い致します」


モモが戻って来ていて、微笑んでいた。


「シロ爺さんは?」


「お城に、報告に行きましたよ」


「いろいろ、お手数おかけします」

キンが頭を下げる。


「これが、私達の生き甲斐なのよ。

もっと甘えて頂戴ね」にっこり


「今日は、お団子は作ってないけれど、加須底羅を焼いてますから、お持ちなさい」


「ありがとうございます」

「ありがとう! モモお婆様っ♪」


「気をつけてね」


「はいっ!」


キンはモモとウェイミンに丁寧に礼をし、ハクは軽く頭を下げてから手を振り、背を向けた。


 なんだか、二人共、大きく成長しましたね。


仲良く歩いて行く孫達の後ろ姿を、微笑ましく見送るモモだった。



♯♯♯♯♯♯



 フジは兄達を見送った後、船に降りようとしたが、リリスが甲板に居たので、眠ってしまったサクラを洞窟に連れて行き、アカに頼んで、再び船に向かっていた。


雲が出ていて、海面の様子は見えなかったが、

 この辺でしょうか……

と、降下し始めた時、


妖狐が雲を突き抜けて現れた。


宙を蹴り、降下する妖狐をフジは追った。


「これはっ!?」


 船が海藻に包まれ、動けなくなっていた。

海藻は蛇か何かのように、うねうねにゅるにゅると這い伝いながら、船を覆い、海に引きずり込もうとしていた。


「瞬く間に、このように……」

紫苑が宙で並んだ。


フジは頷き、降下して、甲板や物見にいた者を背に乗せ、舞い上がった。

そして、紫炎を氷に変え、海藻に放った。


海藻が凍りつく。

その一瞬後、紫氷は炎に変わり、海藻が灰になって散る。

次々と這い上がってくる海藻に、フジは紫氷を放ち続け、灰と化していった。


 紫苑と珊瑚は、それを見て頷き合い、アオと姫を各々乗せ、海に飛び込んだ。

海底から湧いてくる海藻の束に、氷結の術を放ち、氷の柱に変え、アオと姫が剣で鮮やかに断つ。

海藻は尽きる事なく湧いてくるが、次第に、海底に有る物が、ちらりちらりと見えるようになってきた。


 まさか……また神殿?

 二度も同じ手なんて、嘘だろ。


思いつつ、次第に深く潜って行くと――


確かに神殿が有り、中央の巨大な瓶から、海藻が湧いていた。


 これは、もしかして……また……


四人が、そう思った時、


ほ~っほっほっ♪ 高笑いが響き渡る。


 …………はぁ…………


「瓶 割ったら戻ろう……」


「……そうじゃな」


アオと姫が妖狐から降りる。

妖狐が、ため息を残して跳ねて行く。


瓶を挟んで向かい合い、同時に剣を振る。

スパッ! ぱっか~ん。


「行こう」


「何か光っておるぞ」


瓶の底には鏡が有った。

アオは鏡を懐に入れた。


「アオ、ここの柱にも玉が有るぞ♪」


「これ、ひとつだけ残して回収しよう」


二人で七つ集めた。


「紫苑殿、ここに、ひとつ残しておくよ」


アオと姫は浮上した。


馬頭鬼で遊んでいる妖狐達を残して。



♯♯♯



 船の上空では、フジが闇黒色の魔物達に囲まれていた。


 倒していいのでしょうか……


躊躇ったフジは、防戦一方となる。


「フジ様! 船はもう大丈夫でございます!」

蛟が船室に居た慎玄を乗せ、昇って来た。


慎玄をフジの背に移し、くノ一達を乗せ、蛟は船に向かった。


「この方々を浄化してくださいますか?」


「やってみましょう」


眩しい浄化の光が辺りを包む。


魔物達は一人を残し、かき消えてしまった。


フジは、残った一人を背で(すく)った。

慎玄が回復の術を唱えたが、魔人は瀕死だった。


続けて術を唱えようとした時、魔人は、それを制し、

「ありがとう……もう……十分です……

救って、くれ、て……ありが、と……ぅ……」息絶えた。


慎玄の経を供に、魔人は、さらさらと小さな光の粒となって風に消えた。



♯♯♯♯♯♯



「なぁ、姫――」

アオは浮上しながら話しかけた。


――が、返事が無い。


振り返ると、後ろにいた筈の姫が居なかった。


紫苑と珊瑚が浮上して来た。

その後ろで、神殿が崩れていく。


「姫を見なかったかい?」


「いえ……」二人、顔を見合わす。


「探します!」二つの光が、弧を描き、散った。


アオは気を高め、姫の気を探った。

蒼牙と三眼の光がアオを包む。


次第に、光は強く、広く辺りを照らし――


 あれかっ!?


アオは水を蹴った。





凜「ウェイミンさんは学者さんなんですね?」


明「はい。大学で古典文学を研究していました」


凜「魔界の大学ですよね?」


明「はい。どこの大学なのかは、まだ

  お話し出来ないのですが……」


凜「この先の話で絡むんですね?

  種族は、聞いてもいいのかなぁ……」


明「山羊魔(ヤギマ)族です」


凜「山羊に翼って……?

  それに、今はたたんでるの?」


明「ああ、あれですか?

  あれは、術で成していたんですよ。

  元々は翼なんて有りません」


凜「そっか。魔人って魔術が得意なんですよね」


明「はい。天人よりは魔人の方が、

  基本的に適しているそうです」


凜「天人が『術』って呼んでるのが

  魔術なんですか?」


明「そうですね。厳密には、天人の『術』は

  天人も魔人も使えますが、

  『魔術』という枠は、天人には使えない

  ものも含むんです」


凜「より広いのが『魔術』なんですね」


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