航路へ7-魔人
船も気になりますが、先に天界側を進めます。
♯♯ 天界 ♯♯
キンとハクに護られ、天界の門をくぐった魔人ウェイミンは、少し安心したのか、表情が柔らかくなった。
「私、魔界から出たのは初めてで……」
「さっき闇の穴から出たのがか?
で、イキナリ、竜とゴッツンコかよ」爆笑。
「ホント、驚きましたよ」あはは……
「おっ♪ やっと笑ったな」あはははっ♪
「あれ『闇の穴』って言うんですね?」
「いや、俺達が勝手に、そう呼んでるだけだ。
俺達からだと、闇みたいな色のモヤッとした穴みたく見えるから。
魔物が出入りするし、穴でピッタリだな、と」
「魔界側では、白く曇った鏡みたいな……
窓みたいな……そんな感じので、その向こうに何があるのか、よく分からなかったんです」
「ふぅん……違うんだな」
「とにかく怖かった……
どこに出るのか、何があるのか分からないのに、『行け』って、背中 押されて……」
「俺達が魔物を消したからか?」
「ああ……そうなんですね。
何が起こったのか確かめる為の捨て駒か……
それなら納得です。
私みたいな意識が残った者は皆、閉じ込められているんです。
それを出す理由なんて、そんなものですよね」
寂しげに薄く笑う。
「そんな顔すんなって~
おかげで俺達は出会えたんだから、それで良しって事にしてくんねぇかなぁ」
「それはもう!
感謝してもしても、しきれませんよ!
なんとか、お礼をしたいんですが――」
「気持ちだけで十分だって」
「でも……それでは……」
「ん~~
ウェイミン、術には詳しいのか?」
「それは、一応。魔人ですから、ひと通りは」
「一番 強い解呪って、どんなもんなんだ?」
「かけた者の強さとか、かけられた者の状態とか、色々な事象の組み合わせで、最適な解呪が決まりますから、『一番』というのは難しいですね」
「そっか~
例えば、だが、神が能力を封印した場合は?」
「神ですか……そうなると、神を召喚して解いてもらうのが最強でしょうね。
と言っても――」
「場合、場合に依るんだな?」
「はい」
「そっか~ そんな簡単にはいかねぇか」
「割り込んで悪いのだが……
もうすぐ着くので、先に行ってシロ爺様を探しておく。
二人は、ゆっくり来ればいい」
キンが最後の結界を解錠し、行こうとする。
「シロ爺なら書庫に居る。一緒に行こうや」
ハクは結界を再度、施錠し進む。
ウェイミンは何度も、この二人の動作を見て、ここまで来た。
こんな厳重な場所に、自分なんかが入って、
本当にいいんだろうか……
ウェイミンが考え込んでいる間も、キンとハクは話し続けていた。
「シロ爺様に何か頼んだのか?」
「頼む前に始めてくれてたんだ」
「ふむ……そういう事か」
「そういう事だ」真剣な目で頷く。
♯♯♯
長老の山に着くと、真っ直ぐ書庫に向かった。
奥に向かっていると――
「ハク、また来たのか?」
棚の陰から、ムラサキが現れた。
「キンまで……何か有ったのか?」
言いながら近付いて来る。
そして、キンとハクの後ろに居るウェイミンが見えたらしい。
「これは……魔界からのお客人か……」
「はい。
ご無沙汰して申し訳ありません、ムラサキ様。
何処かに向かわれているのですか?」
「あ、いや。
そろそろ、クロの様子を見ようかと思ぅただけじゃ」
「ならば、ご同席願えますか?」
「勿論じゃ」
シロは、まだ本の山と戦っていた。
その傍で、モモまでもが真剣に本を見詰めていた。
「シロ、モモさん。
ちょっと目を休めてくれるかの?」
ムラサキの声で、二人は顔を上げた。
「あら……」モモは、すぐ気付き、
「場所を変えましょう」微笑んだ。
隣室に移動し、ハクが経緯を話した。
「ここが最も安全だと考えたのですが、お願いできますか?」
「ふむ……
では、大婆様の所に行ってこようかの。
ムラサキ、善は急げじゃな♪」
二人の前王は部屋を出た。
「あの……本当に、ご迷惑では……」
「そんなご心配、要りませんよ」にっこり
「あの……何か、お手伝いを……
出来るかどうか……ですけど、
調べものでしたら得意ですので……
あっ、でも、魔物には知られたくなければ――」
「そんな風に仰らないで」にこにこ
「でも……文字は同じかしら……?」
「先程の積み上げていた本、全て、かなり古い解呪関連のものばかりでしたよね?」
「あんな短時間で、それを?」
モモは持ったまま出てきてしまった本を見る。
「もしかしたら、これ、読めるのかしら?」
「お借りします」少し目を通し――
「何度も解説が書き加えられていますね。
新しいものは、言葉が違っていて読み辛いのですが、古い方は……え~っと……この辺りまでなら、辞書無しで読めそうです」
モモが「まぁ……」と息を呑む。
「お力、お貸し願えますか?」
「はい! ありがとうございます!」
「それは、こちらの台詞だわ」ふふふっ♪
扉が開き、シロが顔を出す。
「皆、大婆様が、お呼びじゃ」
♯♯♯
大きな紫竜が、穏やかな表情で待っていた。
「よう来たのぅ。近ぅのぅ……
キンとハクも、おいで」
三人が近寄ると、大婆様は、温かく光る手でキンとハクの頭を撫で、
「よう頑張っとるな」うんうん、にっこり
ウェイミンを包むように、やわらかく光る両手で囲み、ゆっくりと両手を下ろしていった。
「今日からは、ここがウェイミンの家じゃ。
遠慮のぅ、ゆるりとな」にこにこ
「皆、頼んだぞ」
集まって来た長老達を見回した。
ウェイミンが振り返ると、色とりどりの大きな竜達が、周りを囲んでいた。
「お……」
「驚かせてしもぅたかの」ほっほっほ……
「竜は、歳を重ねると大きくなってしまうからの。
小回りが利かぬ。
世話になる事も多かろぅのぅ。
ウェイミン、年寄り共の世話、宜しゅうのぅ」
「は……はい」
ウェイミンは暫し呆然としていたが、ハッとして、慌て、
「宜しくお願いします」、「ありがとうございます」
と、何度も何度も深々と頭を下げた。
「よいよい、そんなに固くならずとも」
春の陽だまりのような穏やかな笑顔で、大婆様はウェイミンに頷き、キンとハクの方を向いた。
「キン、ハク、これを……」
大婆様は、天竜王家の紋章が刺繍された装飾箱を差し出した。
「開けてごらん」
中には、淡い色合いの輝石で作られた、可憐な花の形の髪飾りが入っていた。
「お婆様の大切な人に渡してくれるかの」
「はい。ありがとうございます。
きっと、大層、喜ぶと思います」
キンは六分儀の話をし、大婆様は、目を細めて何度も頷きながら聴いていた。
「また、人とも、魔人とも、仲良くなれればよいのぅ」
「はい!」三人は、深々と長く頭を下げた。
凜「それで、アオとサクラとヒスイは
どう繋がってて、何をしてるんですか?」
翁「それは、話せんよ。
サクラが命懸けでアオを護ろうと
しておるのじゃからな」
凜「やっぱり教えてくれないか~
じゃあ、三人の関係は?」
翁「それものぉ……ま、兄弟じゃよ」
凜「だったら、兄弟皆とも兄弟でしょ?
どうして、アオとサクラだけなの?」
翁「それものぉ……また、いずれじゃな
ただ……皆とも繋がっておるよ」
凜「う~~~ スッキリしな~い!」
翁「まぁ、ゆっくりとじゃよ
そうじゃ、少し古い話を聞いてくれるか?」
凜「はい♪ 何でも喜んで♪」
翁「そうかそうか♪」




