表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
84/429

航路へ5-魔物

 そういえば……雨のシーンって無いな……


(あ……ヒスイ、居てくれたんだ。

これから、また俺の中に居てくれるの?)


【少しの間だけね。

アオの中に、また戻るよ】


(アオ兄の傷、どぉなの?)


【うん、少しだけ良くなってる。でも……】


(ん? どぉしたの?)


【アオの力が強すぎるんだ。

錠を見つけて、なんとか保ってきたけど、私では、抑えきれないかもしれない……

頻繁に封印を抉じ開けようとするんだよ】


(ふぅん……そっか……だから……なのか……)


【傷が癒えるまで封印しておかないと……

アオは、魔に囚り込まれてしまうのに……】


(ヒスイは、傷 治せないの?)


【あの傷は、私の手には負えないんだ。

だから、封印するしかなかったんだ……

私では……たとえ、神に成れても……】


(ヒスイ、ごめんね……)


【どうして謝るの?】


(俺……責めてるんじゃないんだよ)


【わかってる。ありがとう、サクラ】


(あっ!)


【また、アオが開こうとしてるね】


(まずい! ……ヒスイ!)

サクラの苦しそうな声が、少し低くなる。

(俺の封印も強くして貰えないか?)


【サクラ、開いてしまいそうなのか?】


(時々……開きそうになる……今も……っ!)


【アオの力の影響だね……連動するから……】


(くっ……錠を……増やしてっ……早く!)


【これ以上は増やせない。

私では解除できなくなるから】


(鍵が、見つかれば……いい……だけだ、よね?)


【私にも、何が鍵なのか分からないんだよ。

鍵が見つからなければ――】


(今にもっ、開き……そぅ……なのに?

も……ぅ……無理だ……っ!)


【サクラ……】


(ヒスイ! お願い……助けてっ!!

俺は……どうなってもっ……アオ兄を、助けて!!)


【……解った。

少し我慢して。錠を増やすから】


(ん……っ! ぁグぅッ……)


【アオの錠も増やすから、堪えて……】




(ありがと……ヒスイ……おさまったよ……)

サクラの声が元に戻った。


【少し休んで……】


(……うん……)


【また来るよ……サクラ……】


(うん……またね……)「ヒスイ……」



 あ! また『ヒスイ』と……

 サクラは今も 、ヒスイ様と

 繋がっているのでしょうか……?


フジは、サクラの寝顔を見詰めた。



♯♯♯♯♯♯



「それじゃ、巡視に行ってくる」

難所を通過した船から、午後の空へ、アオと航海士父娘に見送られ、ハクを乗せた白銀の竜が飛び立った。




 船から離れ、ハクの背に乗っていたフジも竜になり、ハクと並んで飛びながら、サクラが寝言で『ヒスイ』と言った事を話した。


「翁亀様は、サクラが幼過ぎる訳を、自ら封印しているのではないか、と言ってたよな」


「ええ、アオ兄様の封印とも関係が有ると、お考えだと仰っていましたよね」


「さっきので、アオとサクラとヒスイ様が、何やら繋がっている事は確定だよな。

んで、二つの卵は、アオとサクラで決まりだな」


「そうですね。

二つの卵を生きさせた神竜は、翁亀様のご想像通り、ヒスイ様で間違いないようですね」


「そうだな……ただ……勝手な想像なんだが、

産卵直後までの細工をしたのは、ヒスイ様のお父上で、以降は、ヒスイ様なんじゃないだろうか……」


「ああ……そうですね……

その方が辻褄が合いますね」


フジがハクの方を向いた時、その視線の先に闇の穴が開いた。


「兄様っ!」


ハクは頷き、二人は気を消し、上下に分かれる。



 闇の穴から、三体の闇黒色の魔物が現れた。

うち一体は、例の檻を持っている。


闇の穴が閉じた瞬間、


上から白輝の稲妻が、

下から紫炎の激流が、


魔物を包み、直撃した二体を消し去った。


直撃を躱した一体が、体勢を立て直し、ハクに向かった!


フジは、宙を蹴って上昇し、途中、落ちて来た檻を受け取り、魔物に追い付き、その尾を掴んだ。


引きずり下ろすように投げつけたところに、ハクが放った波動が、銀の星を撒きながら軌跡を描いた。



 フジが檻を覗き込む。

(から)ですね」


「これから、神竜 捕まえに行くトコだった、って事か」


「次、見つけたら捕らえ――」


フジが言いかけた時、すぐ傍に闇の穴が開いた。


「えっ!?」「うわっ!!」ゴッ!

鉢合わせしてしまった。


引っ込もうとした魔物の角をハクが掴む。


引きずり出し、羽交い締めにする。


「お前ら、神竜 捕まえて何しようとしてんだ?」

鋭く凄む。


フジは、穴の前で、次が出て来るのを待ち構えたが、闇の穴は塞がった。


「動くなって!

素直に言えば悪いようにはしねぇよ」


 ハク兄様……

 なんだか……悪役みたいな台詞ですよ。


 でも、聞き出さなければいけませんよね……


フジは苦笑しながら、ハクの方を振り返り、もがく魔物の頭に、軽く衝撃波を当てた。


「おとなしくしてくださいね。

次は本気でいきますよ」

掲げた掌に紫炎が生まれる。


「さあ、言え!」


「知らん……目的など……知らん!」


「ふぅん……」


ハクの眼光に、魔物は一瞬 怯んだが、奮い立ち、反撃しようと、再び抵抗した。


紫炎が細く(しな)って伸び、魔物の首に巻き付いた。


「おとなしくしてくださいね」にっこり


魔物は、その笑顔にゾッとし、おとなしくなった。


「話す気になったか?」


「……本当に知らないんだ」


「じゃ、何でもいい。知ってる事を話せ」


「話したら、解放してくれるか?」


「ああ」


魔物はハクの目をじっと見、

「……解った。

私だって、好き好んで、こんな事している訳じゃないんだ……


故郷が焼かれ、捕らえられ……

国も滅んだと聞いた。

皆、無理矢理こんな色にされて……

訳も解らず、ただ言われるがままに働かされているだけなんだ。


私には自分の意識があるが、ほとんどの者が、この色にされた時、傀儡(くぐつ)にされてしまったんだ。

私が話せるのは、このくらいだ……」


「誰に滅ぼされたんだ?」


「分からない……聞いただけだし、焼かれた時も、姿を見てないんだ」


ハクは腕を解き、フジは紫炎を消した。


「……信用してくれるのか?」


二人が頷く。


「ありがとう……」


「お前、これから、どうするんだ?」


「もう、どこに逃げても……

殺されるだけだろうな……」

諦めたようにフッと笑った。


魔物の背後に闇の穴が現れ、巨大な闇色の手が、魔物を掴もうとした。


その時――


下から光の球が飛んで来て、魔物を包み、続けて飛んで来た球が、闇色の手と穴を消し去った。


 !!


下を見ると、


サクラが落ちて行くのが見えた。


フジが急降下し、サクラを掴まえる。


ハクは、それを見届け、

 魔物は!?

と、見ると――


魔物は元気そうで、キョロキョロと自分の身体を確かめていた。


「これは……さっきの光は……?」


「それが、本来の姿なんだな?」


魔物が頷く。


「来るか? 俺達と」ニヤッ


「私なんかが……行ってもいいのですか?」


「拒む理由が見当たらないんだが?」


「あ……りがとう……」深々と頭を下げた。





凜「ねぇ、ヒスイ。

  サクラと何をアヤシゲな事してるの?」


翡【何も怪しげな事など……】逃げた筈なのに……


凜「じゃあ、何してるの?

  アオとサクラの封印って?」


翡【サクラは……アオと同調するから……】


凜「どうして、解いちゃダメなの?」


翡【きちんと、術で解かないと、

  解ききれなくなるから……

  最悪、記憶も力も完全に失われる……

  呪に奪われてしまうかもしれない】


凜「だったら、それをアオに言えば?」


翡【アオの呪は、とても強いから、

  意志が有るように動くんだ。

  だから、アオが知れば、呪にも知られる。

  もっと悪い状況になってしまうんだ】


凜「他の兄弟にも言えないの?」


翡【私が、ちゃんと話せるのは、

  今は、アオとサクラだけだから……】


凜「サクラに言わせれば?」


翡【サクラはアオと繋がっているんだよ。

  だから、封印が必要だし、話せないんだ】


凜「私が言おうか?」


翡【本編で?】


凜「あ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ