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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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航路へ4-二つの卵

 前回まで:航路に向かって北上しています。


「ハク兄様、ご注文の薬です」


「早いな♪

そうか、コレ届けに来てくれたのか。

巻き込んじまったが、助かったわ。

ありがとな」


大渦戦が終わって、兄弟はアオの部屋に集まっていた。


疲れてしまったサクラは眠ってしまった。


その寝顔を見ながら、

「サクラの背中には、時々、翼があるよね」

アオが言った。


「えっ!?」

「神竜じゃねぇんだし~」

言ってから、翁亀の話を思い出し、ハクとフジは顔を見合せた。


「でも、さっき……あ……そうか。

二人は先に飛び込んでいたよね……」


「他には、いつ見えたんだ?」


「砂漠で、馬頭鬼の岩山の瓦礫の上に登った時……

フジは、あの時、見ていたよね?」


「あの時……そうですか……」


 爽蛇殿は、サクラが宙を滑るように飛んでいた

 と言ってましたね……

 翼で飛んでいたということですか……


「……私には見えていませんでした……」


 アオ兄様には見えている……


「あと、二人は居なかったけど、島で、魔物の舞台で踊っていて、姫が魔笛で意識を失った時……一瞬だけ」


「そうか……また見えたら教えてくれ」


「はい……」アオが俯く。


 見えてるんなら、アオには話した方が

 いいのだろうか……

 アオだけが見えているとしたら、

『もうひとつ』は、アオだったのか?


ハクは、フジの視線に頷いた。


 そうだな。話せる範囲だけ……


「アオ、お前は、別に変な事を口走ったワケじゃねぇんだ」


アオが顔を上げ、フジが頷く。


「俺は、お前達が、砂漠で馬頭鬼と戦っていた頃、天亀の爺さんに、あの輪っかについて教えて貰おうと、天界に行っていた。

輪っかは『竜血環』っていう物で、竜の力と生き血を吸い尽くす凶器だと判ったんだが――」


ハクは、アオの前に座り直した。


「その天亀の爺さん――翁亀様と話しているうちに、俺達の出生に関する話が出たんだ。

アオ、天竜の出生率、覚えてるか?」


「生涯出産平均1.2回、産卵数平均3.1個、孵化率が6割2分」

澱み無く答える。


「流石、医者だな」


言われて、アオがハッとする。


「勝手に出てきた……」


「王族の場合は環境がいいからか、孵化率は少し上がるよな。

踏まえても、俺達は、どうだ?

平均の倍以上の卵が、全部 孵化している」


「……奇跡の王子達……」


「ああ、そんな事も言われたな。

その『奇跡』に関して、翁亀様は、神竜の仕業だと言ったんだ」


「何のために……?」


「そこまでは分からねぇ」つか、言えねぇ。


「そう……ですか……」


「ただ、その神竜にとって、俺達は七人でなきゃいけなかった、としか考えられないらしい。

母上は多産系だというだけで王妃に選ばれたとはいえ、卵七つは天竜としては限界超えだ」


「その上、全部 孵化……」


「ああ、翁亀様が言うには、産卵時に、二つは瀕死だったらしい。

死卵だった、と言ってもいいくらいにな。

それを神竜が生かせた。

どうやって? 何のために? は、

神のみぞ知る、だ。

ただ、神竜が手を加えていたのを、翁亀様の情報源である小鳥達が見ていたんだ」


「その……二つの卵うち、ひとつがサクラ……?」


「だろうな」


「もうひとつは……?」


「分からねぇ。

だが……

もし、アオだけにサクラの翼が見えるのなら――」


「俺なのか……?」


「かも知れねぇ、ってだけだ。

何か呼応してるのかも知れねぇからな」


ハクは、アオの肩をポンッと叩き、


「でも、ま、神竜の仕業だか何だかに依ってだろうが、んなこた、どーでもいい。

皆、揃って生きている。

その事実だけ。

それだけで幸せじゃねぇか?」


フジが大きく頷く。


アオも頷いた。


その時、アオの中に声が聞こえた。


【アオ、大丈夫だよ。心配要らない】


「……ヒ……ス……イ……?」


【覚えていてくれたんだね。

いつも見守っているからね】


宙を見つめるアオの目から涙が流れた。


「アオ兄様!?」

「どうした!? おいっ!」


アオがハッとする。

「あ……いや……何でも。どうしたんだろ」


「憶測ばっかの話、して悪かったな。

あんま、気にしないでくれ」ポンッ


「何か……思い出しそうになったのかも。

不安定で、ごめん……」


「ん」アオの頭をクシャッとした。

「皆、居るんだ。心配要らねぇって」


 心配要らない……ヒスイも、そう言った……

 でも……ヒスイって……俺は知っているのか?


(ヒスイはねぇ……友達だよ。

んとぉ……兄弟みたいな……かな?)


(ヒスイを知っているのか?)


(卵の時から、ずっといっしょ♪)


(サクラ、もっと教えて?)


(……ぅん……)また眠ったらしい。



「アオ兄様?」フジが覗き込む。

ハクも心配そうに見ている。


「あ……焦らず、思い出すことにするよ」微笑む。


二人が頷き、微笑み返す。


「アオ、そろそろ、空龍さんトコ行くか」


「はい」立ち上がり、剣を背負う。


「フジ、俺達が戻るまでサクラ見ててくれるか?」


「はい」にっこり


ハクとアオは、航海士の部屋に向かった。




 先程、アオ兄様は、確かに『ヒスイ』と

 口になさいましたね……

 翁亀様のお話をご存知ないアオ兄様が、

 その名を知っているのなら――


(フジ兄も、ヒスイ知ってるの?)


(えっ!? サクラ!?)


(……ふにゅん…………)


 寝言でしょうか?

 でも、確かに『ヒスイ』と……


 それに……

 私は話し掛けていなかったのに、

 私の考えに反応しましたね……





凜「ヒスイも神様なの?」


翡【いえ、神では……】


凜「じゃあ、神竜の魂?」


翡【どうでしょう……】


凜「もしかして、自分でも何だか分かってない?」


翡【まぁ……そういう事に……しておいて】


凜「しておいて、ってぇ」


翡【そのうち判るから】


凜「また、消えちゃったぁ」


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