表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
82/429

航路へ3-渦

 飛べばいいのに……

どうしても、そう思ってしまいます。


 ハクが運んだ食材で、無事に夕食にありつけた、その後――


 航海士父娘は皆を集め、明日、通る海域が、航路に戻る道程の中で、最大の難所であると説明した。


船は、魔魚や魔鯨を避けるうち、航路から、かなり南に外れており、今は、航路に戻るべく北上しているそうだ。

その経路が難所ばかりの為、リリスが悩んでいたのだが、迂回を極力減して航行している。


それならば、真っ直ぐ大陸へ――の海図は、残念ながら途中までしか無かった。



 明日、通過する海域には、海面に出てはいないが、多くの山が在り、その山々の連なりに因り、海上からは見えない海峡が形成されているそうだ。

そのため、潮回りに依っては、航行に支障が出る程の大渦が発生する可能性が、高くなるとの事だった。


通過予定となる明日の午前中は、中程度の渦が発生しそうだと予測していた。


「だが、まぁ、くノ一達だったら操船技術も確かだ。

中程度なら大丈夫だろ」


「うむ。難なく通過できるであろうよ。

のぅ、睦月」


「はい、姫様。

細心の注意を払い、万全で望みまする故」


「まぁ、最悪、俺達の竜が危険海域のみ運びゃいいだろ?」


「そうでございますね。

では、そのようにお願い致します」



♯♯♯



 翌朝――


「あれが渦潮か? 面白いのぅ♪」


 くるくると小さな渦が現れては消える海を、航海士が拡大して描いた海図を手にした睦月の指示で、緩やかに右へ左へと揺れながら、船は慎重に進んでいた。


(うしとら)に大渦!!」

物見の氷月の声が、のどかな空気を割いた。



 前方、少し右に現れた大きな渦は、たちまち甲板からも、その擂鉢(すりばち)状の窪みが、はっきりと見える大きさとなり、船が引き込まれ始めた。


「空龍さん! リリスさん! 船室へ!!」

蛟が航海士父娘を誘導する。



「この部屋だけは、特別、頑丈にしております」

壁から帯を引き出す。

「これで体を固定してください」

扉を閉め、

「万が一の為、気密致します。

少しの間、我慢してくださいませ!」

プシュッ! と音がし、蛟の足音が去った。



 蛟が前甲板に出ると、竜と妖狐が船を念網で包み、引いているが、渦の拡大は止まず、勢いを増すばかりで、船はジリジリと渦に向かっていた。


(これ、普通の渦じゃないよね?)


(ああ、間違いなく魔物絡みだな)


蛟も聖獣に戻り、加わった。


それでも渦に負けている。


「埒 明かねぇっ! 元から断つ!!」


ハクが飛び込んだ。


続いて、紫を帯びた光が空から飛び込む。


「あ♪ フジ兄だっ!♪」



 ハクが抜けたことで、船は引き込まれることが確定した。

紫苑と珊瑚は、念網の目を潰し、風船の様にして船を包んだ。

そして、二人はサクラを見た。


「わかった! がんばる! 行って!」


サクラは、眩しく輝く程に気を高めた。


紫苑は、念の風船を一ヶ所 開き、入った。

珊瑚と蛟も続く。


そして、慎玄、姫、アオを各々乗せ、海中へと飛び込んだ。


念の風船の穴が閉じる。


アオは飛び込む瞬間、サクラを見た。


(アオ兄、心配しないでっ!)


(解った。任せたぞ!)


サクラが咆哮を上げる!



♯♯♯♯♯♯



 大渦から離れ、海底へと突き進んだハクとフジは、大渦の真下に神殿を見た。


「怪しさ満点だな」


「ええ」


神殿の中央部分には天井が無く、その下の空間から渦が発生していた。


「天井の穴からは入れそうにねぇな……」


「入口は正面のみのようですね」


「なら、簡単だ♪」顔を見合わす。


「正面突破だ♪」「正面突破ですね」


二人は笑った後、表情を引き締め、

「行くぞ!」「はい!」

魔魚を蹴散らしながら、一気に神殿の中央へと進んだ。



 中央の広間、その真ん中には、巨大な瓶が ひとつ。

渦は、その瓶から発生し、上っていた。


「不気味ですね……魔物が居ないなんて……」


「罠だろうな。でも、まぁ、アレ壊すか」


「そうですね。サクラが心配ですから」



 二人が踏み込むと――


神殿が揺れ、広間の入口が閉まった。

続いて天井の穴も塞がる。


「あっ!」とたんに室内が激しい渦と化す!


フジは一瞬、激しい流れに翻弄されたが、渦に逆行して泳ぎ、相殺して静止した。


「ハク兄様! 掴まって!」


ハクがフジの尾を掴む。


「助かった~ フジ、ありがとな」


「私は逆行するだけで精一杯です!

瓶をお願いします!」


「任せろっ!」

キンから借りた剣をブン投げた!


瓶、真っ二つ。


渦が収まった。


ハクは剣を拾い、瓶の底に鏡を見つけ、回収した。


「さて、どっか壊して戻るか~」


『そうは参りませんよ』ほ~っほっほっ♪



♯♯♯



 この声……


中央の広間の前で、扉を破壊しようとしていた紫苑と珊瑚が顔を見合せた。


『せっかく捕らえた竜、易々逃がすなど、有り得ません!

今度こそ、主様に献上させて頂きますよっ』


 声が高くなっているし、口調も変ですが、

 この総毛立つ感じ……

 間違いありません!


 ですが……奴は、母様が抹殺した筈……


「確かめましょう」「そうね」

紫苑と珊瑚は頷き合った。



♯♯♯



 中央の広間の壇上に、魔物が姿を現した。


「『今度こそ』って……

誰だ? アイツ」ハクが首を傾げる。


「さぁ……」フジが肩を竦める。



ズズズズズ……ン……


入口扉が崩れ落ちた。


濁りが流れ去っていく。


馬頭鬼(バトウキ)! 何故、お前が居る!?」

紫苑の声が凜と響く。


「これはこれは、御狐殿♪

ますます美しい毛並みに磨きが掛りましたな♪」

ほっほっほっ♪

「主様に再生して頂いた私に、もはや敵など居な――」


馬頭鬼が消えた。


――のではなく、背後の壁を突き破って、吹っ飛ばされていた。


紫苑がフンッと息を吐く。


 気色悪さが増しただけではありませんか!


紫苑と珊瑚が床を蹴り、光の矢となって、馬頭鬼を追って行った。


遠くで閃光が走り――


二人が戻って来た。



 ハクとフジが、この広間に来る途中、蹴散らしていた魔魚達を回収し、浄化していた四人も合流した。


「およ♪ 砂漠のと似た玉が有るぞ♪」

姫が指した柱に、三眼の玉が光っていた。


沢山ある柱のうち、八本に玉が埋め込まれていた。


八つ目の玉を回収した時、これで終わり、とでも言うかのように、神殿が崩れ始めた。




 浮上すると、サクラが宙で念の風船をぶら下げて、嬉しそうに尾を振っていた。


(頑張りましたね)

(よくやったぞ!)

(偉いぞ。サクラ)


(もっと褒めて~♪)きゃっきゃっ♪



 竜達が、念の風船に包まれた船をそっと降ろし、紫苑と珊瑚が、念の風船を解除した。

皆が人姿になった事を確認し、蛟は航海士の部屋に向かった。





 渦の海域を抜けた船は、

 再び、穏やかな海を進んでいます。

 兄弟は、アオの部屋に集まりました。


桜(ヒスイ! また、アオ兄が!)


翡【うん。また抉じ開けようとしているね】


桜(大丈夫なのっ!?)


翡【大丈夫……たぶん……

  アオは無意識なんだ。

  ただ一緒に戦いたがってるだけ。

  少しの辛抱だよ】


桜(でも、俺の方も弛んでるよ!

  大丈夫じゃないでしょっ!)


翡【大丈夫だよ……私が全力で抑えるから……】


桜(無理しないで!

  ヒスイが消えちゃうのは嫌だよ!)


翡【消えるなど……ないから……ね……】


桜(アオ兄より、俺のを閉めて!

  開きそうなんだ!

  俺に戻ってよ!

  アオ兄の気を逸らすからっ!)


翡【そう……うん。それが良さそうだね】


桜(お帰り、ヒスイ。悪いけど、早く!)


翡【ごめんね……サクラ……】

  力を使ったんだから、眠ってね……

  私が、ちゃんと抑えるからね……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ