航路へ2-買い出し
ハクとクロの話し方は同じです。
一緒に居ると、どっちが話してるんだか……
だから、クロを天界に?
そんなことはありませんよ――たぶん……
ハクは、睦月と皐月を、中の国の城下近くに降ろし、
「買うだけじゃなく、城でも補充するんだろ?
荷物、多くなるよな……んじゃ、城で待っていてくれ」
洞窟に飛んだ。
♯♯♯
「兄貴、今、いいか?」
「ああ」描いていた手を止める。
「どうしたんだ?」
「クロが持って来た小さな檻ってヤツを見たくてな」
「ああ……これだが」手渡した。
「これを開けるのに鍵とかは無ぇのか?」
「クロは、護竜杖を翳したら開いたと言ってたが……」
「護竜杖?」
「『竜殺し』を破壊する為に、長老様から借りた竜宝だとか言っていたな」
「あぁ~、アレか。
クロは、まだ、あの杖を持ってるのか。
じゃ、借りて来ねぇと――」
「それなのだが、護竜杖と同じ気を持つ剣が有ってな。
試してみたら、この剣でも開いたのだ。
持って行くか?」
「借りて行く。
クロから巡視を引き継いだからな」
「クロは、どうしてるのだ?
まさか、何かあったのか?」
「あ、いや、悪い事じゃねぇから安心してくれ。
何か新しい術か技を会得したいって、長老の山に行ったんだ」
「そういえば、先日、自分には何も無い、と落ち込んでたな……
そうか……前に進んだか……」フフッ……
「だから、クロが戻るまで、アオの傍に居ようと思う」
「そうしてくれるか。頼む」
「ああ」
返事をしながら、ハクは檻を閉め、剣を翳して開くことを確かめる。
「この剣も竜宝なのかな……」
「そうだろうな」
「さっき言ってた『竜殺し』なんだが、あれは『竜血環』って魔宝で、竜の力と生き血を吸い尽くす物らしい。
俺が爽蛇から預かって、持って行った竜血環は、遺物に近い再現物だったんだが、
その後、アオ達を襲った竜血環は、更に改良された物だったらしいんだ。
この前は、その護竜杖で破壊できたが――」
「今後、破壊不可能な物が現れるかもしれない、という事だな?」
ハクは頷き、
「俺達は、まだ、竜宝を改良なんて程遠い。
このままだと――」
「それなのだが、
物に関しては、アカが、
薬に関しては、フジが挑んでいる」
「えっ!?」
「アカは、先日『蒼牙』を復元した」
「あの、アオが使ってた剣か!?」
「ああ。
魔物との戦いの中で、砕け散り、行方不明となっていたが、
その欠片を、それとは知らず私が持っていた。
その欠片からアカが復元したのだ。
蒼牙は、元々強い気を持った、高位の竜宝剣だったが、復元した蒼牙は、以前よりも遥かに強い気を持っていた」
「改良……か……」
「そうなるな。
アオの力が戻る迄、まだ、どのような力を秘めているのかは、定かではないがな」
「アオの力か……」
「竜宝と言えば、武器や道具等の『物』だと思われがちだが、薬品も相当数、有ったらしい。
聖水と仙竜丸だけが、作り続けられ、今も使われているが、他の薬品は、何一つ現存していない。
たとえ遺物が発見されようとも、変質などして、使い物にはならないだろう。
そこで、モモお婆様とフジが、古文書から再現しようと試みているのだ」
「いつの間に……」
「私も、つい最近、知ったのだが、フジが薬師の修行中に、モモお婆様に提案したらしい」
「あーーーっっ!!!
俺も何か したくなったっっ!!!」
「負けては いられないよな」
「兄貴は、何 企んでるんだ?」
「まだ、言えぬ」ニヤリ
「クッソーッ! 俺も やるぜっ!!」
「ハクは、翁亀様から教えて頂いた知識が有るではないか。
まだ、私達には、話せない事が有るのだろう?」
「どうして……それを……?」
「長い付き合いだ。
何か腹に持っている事くらいは分かる。
それが何かは分からないが、な」
「そうか……でも、ホント悪ぃ。
まだ……兄貴にも言えねぇんだ」
「ああ、無理して言わなくていい。
ハクの想いは理解しているつもりだ」
「ありがとう、兄貴」
♯♯♯
そして、キンに『華雅の宝剣』の話をした後、ハクはフジに薬を注文し、城へと向かった。
表門には、大仰に門番が立っていたので、通用門でいいよな~、と裏に回ったが、そこにも門番が立っており、ハクの姿を確認するや、膝を突き、頭を下げ、潜めた声で、
「お忍びの御用にごさいまするかっ!
白之進様っ」
ハクは、後ろに誰かいるのか? と振り返った。
「白之進様、人目につく前に、ささ、中へ」
ハクノシン?
その……妙な名は、俺の事なのか?
ともかく、すんなり入れたから、
睦月と皐月を探すとするか……
すぐに厨に行き当たり、隣接する倉で皐月を見つけた。
食材が入った木箱や樽を出していると、買い足しに出ていた睦月と、米俵を担いだ男達が来た。
米俵を三つだけ受け取り、残りは後日という事で、倉に入れてもらい、男達には持ち場に戻ってもらった。
ハクは周りに人が居ない事を確かめ、木箱と樽を高々と積み上げ、担ぎ、
二つの米俵の縄に指を掛けて持ち、もうひとつを空いている肩に乗せると、
銀の髪を靡かせ颯爽と歩きだした。
あ……門、くぐれねぇな……しゃあねぇ。
タンッと地を蹴ると、ヒラッと塀を越え、城を後にした。
睦月と皐月が、腰を抜かしている門番に向かって、口の前に指を立て、片目だけ瞬いて、ハクを追った。
♯♯ 天界 修練の山 ♯♯
ムラサキは、クロを休ませていた。
「勿論、曲空は単なる移動にも便利じゃ。
ただし、見えぬ場所に移動する場合は、知っている者の気を掴むか、その場所を思い浮かべねば、移動出来ぬのじゃ」
「じゃあ、知らない場所には行けないんですか?」
「基本は、その通りじゃよ。
しかし、応用範囲の広い技じゃからの。
不可能ではない。クロ次第じゃよ」
「オレ次第……はい! 頑張ります!」
「クロは、曲空への適合が、ズバ抜けて良さそうじゃからの。
頑張り次第じゃが、連続曲空も出来るじゃろ」
「普通は、連続ってムリなんですか?」
「目に見える範囲じゃと、大したことはないからの。
それなら、無限に曲空出来る。
しかし、見えぬ場所となるとな、かなり力を要するんじゃよ。
儂は三回が限度じゃな」
「そっか……考えて発動しないとダメなのか……」
「まぁ、回数も、クロ次第じゃ」
「はいっ!」
「で、距離も、修行次第じゃが、気を付けねばならぬのが、境界じゃ。
曲空で越える場合も、通常と同じじゃからの。
条件が整っておらねば、命を落とすぞ」
「そっか……
迂闊に飛んだ場所が、他の界だったら、死んじまうのか……」
「発動者に触れておる者も伴ってしまう。
じゃから、己だけでのぅて、同伴者の条件も考慮せねば、殺めてしまうぞ」
そっか……姫を乗せて天界に曲空――ん?
って! 何考えてんだよっ! オレ!
有り得ねぇだろ! ったく~
「どうした? 何か悩みか?」
「あっ、いえ、なんにもっ!」
「そうか? ならば、再開じゃ」
「はい!」
凜「白之進様♪」
白「その名で呼ぶなよぉ~」
凜「藤之丞も嫌なの?」
藤「嫌です!」
凜「なんで? 楽しいじゃない?」
藤「名で遊ばれているような、その感じが
嫌なのです!」
白「ま、その通りだな。俺は銀鱗だしなっ」
凜「あ、そこに誇りを持ってるのね」
白「だから、ここの表記も不満なんだよ」
凜「それは仕方ないでしょ。
『ハ』の方が良かった?」
白「どっちもどっちだよなぁ」
凜「じゃあ、諦めてよ」
白「しゃあねぇなぁ……」
藤「姫様は、私達皆の名を勝手に付けて
いるのでしょうか……」
白「付けてるんじゃねぇの?」
凜「他も楽しみだわ~♪」
白&藤「面白がるなっ!!」




