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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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絆の島17-姫の家臣

 前回まで:竜の兄弟は初めて一緒に眠りました。


 空龍の治療をした後、キンに呼ばれ、ハクとアオは食卓に戻った。


「ハク、空龍殿の治療は暫く掛かるのだろう?

こちらに居ても構わない」


「兄貴は?」


「私は船が出たら洞窟に戻る。

長老様方が千里眼で話し掛けられた際に、長く不在となれば、要らぬ心配を掛けてしまうからな」


「そうだな」


「あとは……クロは、こちらの方が良さそうだな」

遠くで姫とサクラの遊び相手をしているクロを見る。


「アカとフジは、その作業を何処で続ける?」


「工房」

「私も洞窟の部屋で続けたいです」


(サクラ、アオと共にだな?)


(うん♪ ずっと一緒~♪)


(うむ)


「アカ、また船大工の船を押して欲しい」


「ああ」


「フジは、船を見送ったなら、

アカを乗せている事にして飛んで欲しい」


「はい」


 キン兄さんは、やっぱり、きっちり決めるんだ。

 うん。随分、思い出せている気がする。


 そうか……

 今回は、誰の振りも しなくていいんだな。

 まぁ、サクラでなければ、

 やってもいいとは思うけど……



「船主さん、お邪魔しても構いやせんかぃ?」

棟梁が現れた。


「ええ、何でしょう?」キンが応える。


棟梁とアオの目が合った。


「へっ!? ふ……二人!?」


「ああ、双子なんです。お気になさらず」


「そ、そうでやしたか……」


「それで?」


「ああ、そうでやしたな。

船が、もうすぐ仕上がりやす。

昨日から、追い込みかけておりやしてね。

明日の朝から、最終確認いたしやすんで、何事も無ければ、午後には出られやす」


「急がせてしまって、すみませんでした」

アオが頭を下げる。


「いえ、お待たせしやして、すぃやせん」


「そぅか、ならば、報酬の話じゃな」

いつの間にか、姫とクロが来ていた。


「姫様!」

はは~っ! と平伏しかけたのをクロが止め、話を促す。


「いえ、それなんですがね。

前金を頂いておりやすし、材料は揃えて貰いやしたし。

毎日、旨いモン食わせて貰って、上等の酒まで頂きやしたから、もう、その上になんぞバチが当たりやす」


「そぅは言ぅてものぅ……

用意したもの、引っ込めるなど出来ぬぞ。

よぅ頑張った褒美じゃ。受け取るがよい」


サクラが千両箱を持って来た。


「はいっ♪」二箱 重ねたまま渡そうとする。


「ど~ぞっ♪」ポイッと投げかねない。

(投げるなよ!)(は~い♪)


姫を見る。  姫が頷く。

船主を見る。 船主も頷く。


 軽そうに持ってるし……

 中身は詰まってないのやもしれんな……


「では……一箱だけ……」

おずおず手を伸ばし、持っ――


ズシッッッ!!


棟梁、腰二つ折りになって、千両箱が地に めり込む!


 どんだけ入ってんだ!?

 てぇか、千両箱ってヤツぁ

 こんな大きかったか!?


棟梁が目を白黒させながら、ギリギリ離した両手を振る。

足も無事だ。確かめて安堵した。

姫を見、サクラを見、振り返って船主を――


やっと、棟梁の視界に、ハク、アカ、フジも入った。

前後キョロキョロと見、


「な、な、ななな――」


「如何した?」


「な、七人!?」


「――が、如何した? 皆、兄弟なだけじゃ。

ワラワの家臣に何か?」ギロッ


 あ~あ……

 とうとうキン兄まで家臣扱いだよ……

(キン兄は怒ってねぇか?)


(楽しそぉだよ♪)


(なら、よかった……)


 同じ顔が七人居るだけで、これじゃからのぅ。

 このよぅな衆庶の者が竜を見たら、

 腰を抜かすであろぅのぅ……

 いや、泡を吹いてしまうかの……

 最悪、心の臓が止まってしまうやも……


姫は小さく、ため息をつき、

「サクラ、運んでやるがよい」


「は~い♪」

地面の千両箱も拾い上げ、重ねて、浜に向かって弾んで行った。


「ぁぅ……ぁぅ……」腰を抜かした。


「仕方ないのぅ。クロ、運んでやるがよい」


 え~~っ! オッサンをかよぉ……


兄弟達が、笑いを押し殺しているのを横目に、クロは渋々、棟梁を運んだ。



♯♯♯


 クロとサクラが戻って来た。

サクラの手には、千両箱がひとつ。


「如何したのじゃ? 渡さず戻ったのか?」


「いや……棟梁が『勘弁してくだせぇ』って泣くから、仕方なく……なぁ」


「『天罰で死にたくないぃ』って……ねぇ」

クロとサクラは顔を見合わせ、頷き合う。


「仕方ないのぅ」姫、少し考える。

「ならば、その出版費用に致そぅぞ♪」

卓上を指す。


皆、一斉に姫を見る。


「空龍殿とリリスの名で、本にするつもりなのじゃろ?」


竜達、頷く。


「まさか、只で出せると思ぅとったのか?」


「無論、費用も渡すつもりではあったが……」


「じゃが、安く出そぅとすれば、出版する側の意向が入ったりするものじゃ。

そのままを本にしたくば、それなりに積まねばならぬぞ」


竜達、顔を見合わせる。


「まぁ、何じゃ。

全て竜任せなのも癪に障るからの。

人にも、一枚噛ませよ♪」


「あ……ありがとう……」


「うむ♪ 決まりじゃな♪」


 イキナリ全員 敷かれた……


 この姫が、クロの嫁に?

 ……末恐ろしい限りだ……



 姫は鼻歌まじりで、弾みながら去って行った。


その後ろ姿を見送った後、クロに視線が集中したのは言うまでもない。



♯♯♯♯♯♯



 夜、兄弟の小屋では――


「あれ? アカとサクラは?」


クロが厨から戻ると、アカとサクラの姿は無く、フジは、まだ書いており、アオは、それを読んでいた。


「アカは、爽蛇に呼ばれて、作業小屋に行ったよ」


「サクラも付いてったのか?」


「そう」


「キン兄とハク兄、もう寝たのか?」


「うん。昨日は寝ていなかったからね」


「そうなのか?」


「明け方まで外に居たよ。

いつ出たのかは知らないけどね」


「オレが起きた時には、寝てたよな?」


「うん、その少し前に戻ったんだ」


「そっか。

なら、サクラを連れ戻さねぇ方がいいよな」


「そうだね。

で、何処に行くんだい?

ああ、姫の所?」


「ちげーよっ!」


アオが口の前に指を立てる。


「あ……

巡視だよ。

洞窟に戻った時にな――」


 クロは、神竜の魂に会った話をした。

フジも手を止めて聞いていた。


「――だから、毎日、巡視しようと思ってるんだ」


「それなら私も」


「そっか。ありがとな」


 二人が飛んで行くのを見送り、アオは一層、竜に戻りたいと強く思った。





 サクラは、アカと蛟の手伝いをしていたが――


桜(ヒスイ、アオ兄は何してるの?)


翡【夜空を見上げてる】


桜(そうじゃなくてっ!)


翡【竜に戻りたがってるんだ】


桜(それって、まさか……)


翡【うん。無意識に抉じ開けようとしてる】


桜(って、平然としてる場合じゃ……

  ヒスイ、俺に構わず!)


翡【大丈夫だよ。まだ、私でも……】


桜(無理しないで!

  アオ兄の力は大きいんだからっ!)


翡【まだ、なんとか……心配しないで】


桜(嘘! 俺の方が……やっぱり、同調してる。

  さっきから、おかしいと思ってたんだ。

  あっ……ダメだっ! 開きそうだよ!)


翡【もう少し……

  これで大丈夫。アオを眠らせたからね】


桜(ヒスイ……俺の……)


翡【ごめんね。サクラも一緒に眠って……】



蛟「あ……お休みになられてしまいましたね」


赤「昼間、疲れさせてしまった」布団に運ぶ。


蛟「何かございましたのですね?」


赤「うむ。まぁ、な」作業続行。


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