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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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絆の島16-兄弟だから

 竜達、楽しそうです。


 ハクは、離れた卓で、慎玄と話している空龍を見ていた。


話が終わったのか、空龍が立ち上がり、小屋に向かって歩き始めた。

空龍は義足を着けて歩いているが、その歩き方は ぎこちなく、やっと進んでいる様子だった。


アオもハクの視線に気付き、空龍を見る。


「十左のように、跳んだり走ったり、できるようになるでしょうか?」

医者であるハクに、アオは尋ねた。


「十何年だか使っていない筋肉だからな……」

ハクは立ち上がった。


「あの様子だと、全身に支障を(きた)している筈だ。

治療する。アオも来い」


「はい」


「あ、『三眼』背負ってな」


「サンガン?」


「『華雅の三眼』玉込めた宝剣だ」


「解りました。

そんな名前だったんですね」



♯♯♯



 ハクとアオは、航海士の小屋に向かった。

父娘は、次の海域の海図を見ていたようだ。


「空龍さん、まだ歩き辛いでしょう?

足、診ていいですか?」


ハクは、筋肉や骨格の状態を説明しながら、空龍の足に、掌の光を当てていった。


「凄いですね……随分と楽になりました」


「いえ、まだまだです。

全身に影響してますので、そちらも」


空龍に俯せに寝てもらい、全身に掌を翳す。


「やはりな……アオ、いけるか?」


三眼の力を十分に吸収したアオが頷く。


 おっ……そんななっちまうのか!?

 光ってるぞ! 大丈夫なのかっ!?


「ハク兄さん?」


「あ、そっち側に頼む」


 空龍の左右に向かい合って座り、両掌を下にして並べ、ハクとアオは指先を合わせた。

空龍の頭から、足に向かって、ゆっくりと 四つの光る掌が移動していく。


空龍から安堵の ため息が漏れる。


爪先まで移動すると、また、頭に向かって戻る。



 五往復した。

ハクはアオを見て、限界だな、と思い、


「今日は、ここまでにします。

ゆっくり治しましょう」空龍の肩に触れた。


「ありがとうございます」起き上がる。


「岩を背負っているかのような重さが、すっかり無くなりました」

頭を下げた。


「あぁ……動いても、背中や腰が痛まない。

こんな短時間で……」

感動を顔に溢れさせ、何度も何度も頭を下げた。


「いえ、それほどの事は……」照れる。



 空龍が義足を着けようとしているのを見て、

「あ、たぶん、微妙に合わなくなってますよね?

蛟を呼んで来ます」アオは出て行った。


「竜使いさんは、いろいろな事ができるんですねっ」

リリスが瞳をキラキラさせて、ハクの前に座った。


 あ~ この真っ直ぐな瞳かぁ。

 フジが苦手だって言ってたのは……

 全て見透かされてる気分になるんだな。きっと。

 そもそも自覚無いからなぁ、アイツは……


 あ……今、笑っちゃなんねぇな……

 アオが、俺の『竜使い』し易いように

 しといてやらねぇとな。


ハクは、真面目な医者の姿勢を崩さず、

「まだまだ、私達は、人目を避けて生きねばなりません。

自分達で、全て こなせなければ、死活問題なんです」


「そうなんですね……」


「少なくとも、竜達には医者が居りませんから、このような術を会得しなければ、大切な友人達を失いかねませんので」

ハクは風雅に会釈した。


「その治療術は、竜の為のものだったのですねっ」

更にキラキラ。


コンコンッ「失礼致します」蛟が来た。


「それでは、私は、これで……」

入れ替わりにハクが出ようとした時、


「あ♪ 昨日は、ありがとうございました」


「昨日……何か有りましたか?

私達の方が、沢山お話を伺いましたので、お礼を申さねばなりませんね。

ありがとうございました」丁寧に一礼。


「乗せて頂いた白い竜さんは、ハクさんの竜さんですよね?」


 あぁ、俺です。それ。


ハクは頷いた。

「また、いつでも呼びますよ」ニコッ


扉に手を掛ける。


「あとは、アオさんの竜さんだけ……かな?

青い竜さんですよね? 見てみたいなぁ」


 俺も、早く見てぇし、

 一緒に飛びてぇよ……


「ええ、青い竜ですが……

そのコは今、養生中ですので、いずれ……」

会釈して、小屋から出た。


父娘の『ありがとうございました』という声が、扉越しに聞こえた。


ハクは空を見上げた。


 早く一緒に飛びたい! だから……

 そのためなら、何でもしてやる!


下ろしたまま握りしめた拳を挙げようとした時、


「ハク兄さん? どうかしたんですか?」

背後からアオの声がした。


慌てて振り返ると、アオが小屋の壁にもたれて立っていた。


「あ……大丈夫か? 疲れは?」


「疲れはしましたが、大丈夫です」


ハクは光る両掌をアオの肩に置き、

「明日は四往復にしとこう」


「明日は、もっと慣れますから、五でも六でも いけますよ」

にっこり


「力と記憶が、ちゃんと戻ったら、めーーーいっぱい頑張ってもらうからなっ。

今は無理すんなって」両肩をポンッ。


「俺も医者になれるのかな……」


「何、言ってんだよ~

アオが居なくなったから、誰かが医者しねぇと! って、なったんだ。

記憶が戻れば、ちゃんと医者だ」でこツン。


「俺……迷惑かけてばっかりですね……」


「あ~~っ! もうっ! 暗くなるなって!

アオは俺達を護ろうとしてくれた。

だから今度は、俺達が助けるのは、当たり前なんだよ!」

アオの頭に掌を置く。


そして、

「そんな……貸し借りみたいなの関係ねぇよ。

兄弟なんだから助け合うさ」優しく言った。


「ハク兄さん……ありがとうございます」


「いいって!」

ハクは、アオの髪をクシャッとし、

「ったく~」と言った後、笑った。


(ハク兄♪ アオ兄♪

キン兄が呼んでるよ~♪)


「あ……フジの手伝い……」

「……忘れていましたね」


二人は、笑いながら駆け出した。




 アオ、大丈夫だ。

 もうすぐ封印は解除できる。

 そしたら一緒に飛ぼうなっ!


 爺さん達!

 カッコつけたんだから、

 早く見つけてくれよなっ!




♯♯ 天界 長老の山 書庫 ♯♯


「ムラサキ、四眼の情報は有るのか?」


「いや……魔物に奪われたのは、神代だからな。

当然、伝説しか無い。

だから、正確な情報なんて皆無だろうよ。

だが、伝説からしか得られないから、とりあえず読んでいる状態だ。

で、一応、際立った特徴を見つけたよ」


「どんな特徴なんだ?」


「三眼と四眼は、見た目は同じだが、持つ力と光の色が違うらしい。

その光なんだが、四眼は、竜宝剣には珍しく金碧光も出すらしいんだ」


「青、紫、赤系の光が殆どな竜宝剣がか……」


「高位の竜宝剣は、そういう色だな。

低位なら色が無くて白光だよな。

そういう事からも、こんな色を出す華雅というのは最高位の竜宝剣だという事になるな」


「金碧とは、どんな光なんだ?」


「黄緑? そんな所じゃないかなぁ?」


「だったら、意外と簡単に見つかるんじゃないのか?」


「どうだろうな。

戦闘時は曙紅光という記述も見たんだよ。

だから、金碧光だけを探しても見つからないかもな。

ただ、複数の色の光を出す凄い剣だという事は判ったよ。

しかし、まぁ、この伝説が本当に正しければ、の話だがな」


「何を読んでるんだ?」


「言い伝えを纏めた本なんだが、華雅が出て来るのは……ここだ。

古の大神戦(ダイシンセン)の時代、大火乱(ダイカラン)の頃だ。

青身神(アオミカミ)』って神様が、三眼、四眼を両手に持って戦ったり、四眼を掲げて、大勢の怪我をいっぺんに治したりしてるんだよ。

でな、治療の場面で『金碧光に輝いた』と、書かれているんだ」


「大神戦……おもいっきり太古の伝説かぁ」


「そのくらいしか、記述なんて無いんだよ。

遡っていってたんだが、この後は、その『青身神』が、大神戦後、初代最高神に華雅を授けたって記述が有ってな。

闇神戦(ヤミシンセン)が始まった約百年後に『四眼が闇黒竜(アンコクリュウ)に奪われた』って記述だけなんだよ。

あとは、華雅が作られた記述を見つけたら、軍記を調べるさ。

で、そっちは?」


「古代文字は苦手だから、史中期を探している」


「ったく~

孫にカッコつけるなら、ちゃんと勉強しろよな」


「ごもっとも……」


「こっち終わったら、そっち手伝ってやるよ」





 前回の後書きの続きです。


凜「では、そのように♪

  しっかり、キン様の恋物語を――」


金「何故、そうなるのだ?」


凜「じょじょ冗談ですよぉ。

  そんな睨まないでっ!」


金「話した通り頼む」


凜「はい! 確かに、そのようにっ!」


  キン様は真面目だ。トコトン真面目だ。

  だ・か・ら~

  たぶん、しない……きっと、できない……

  書いてる私が私だから~


  ちゃんと、踏まえるよ。

  だから、約束は違えない。

  でもね……


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