絆の島14-兄弟揃う
前回まで:ハクとフジが天界を出ました。
ハクとフジは、人界の上空に差し掛かった。
「船に団子を届けて参ります」
フジが、ハクから離れようとした時、
「あ……俺も行くわ」
「はい♪」
(サクラ、船の真上に飛んでもらえますか?)
(フジ兄だ~♪ ちょっと待っててねっ♪)
ハクとフジが、背中合わせで見回しながら、宙で待っていると――
雲を突き抜け、綺桜の竜が現れた。
二人が向かう。
「ハク兄、フジ兄、おっかえり~♪」
サクラが、嬉しさを振り撒くように、尾を振る。
「皆は、どうしてるんだ?」
「ん~と、船が鯨に壊されて~
島で直してもらってる♪」
ハクとフジは顔を見合せた。
「皆、無事なのか!?」
「うん♪ 元気だよ♪」
「そりゃ……良かった……」
「でねっ♪
今、俺達『竜使い』ってことになってるの♪
だから、人になって、乗って~♪」
「どういう事だ? それは……」
「航海士さんや十左が、俺達のこと、『竜使い』だって思い込んでるから、そうしてしまおう、って、クロ兄がねっ」
「なんとなく解りました」にっこり
「あ♪ そーだっ♪ ハク兄に乗りたいっ」
「なんで――おいっ、サクラ!」
ハクの返事を待たず、サクラは人になって、ハクの背に乗っていた。
「フジ兄も乗って~♪」ぽんぽん♪
「お前、ヒトの背中でっ」
きゃははははっ♪
「ハク兄様、失礼します」フジも乗った。
「しゃあねぇな~ 行くぞっ」
雲を抜けると、真下に島が見えた。
「船が無い方の浜ねっ♪」
「おいっ! 人がいるぞ!」
「えっ!? キン兄様!?」
「いいの♪ 降りてっ♪」
浜で、白い竜と矢太の話をしていた航海士父娘は、目を見張った。
「白い竜……」
陽の光を浴びて煌めく、白銀の竜が舞い降りた。
(ハク兄、喋っちゃダメだからねっ♪)
(解ったよ……)
リリスが駆けて来る。
その後ろを、キンの肩を借りて、空龍が来る。
(二人は、白い竜が大好きなんだ♪
乗せてあげてよ~)
(そうなのか……)白……まぁ、いいか。
「乗って♪」
白銀の竜は、航海士父娘とサクラを乗せて、舞い上がった。
「キン兄様、これからは、竜の姿を人に見せていくのですね?」
「ああ。そう決めたのだ」
二人は空を見上げ、目を細めた。
「フジ~! お帰りっ♪」
クロが、フジの背後から抱きついた。
フジが振り返ると、アオが笑っていた。
「おっ♪ これは、昼に皆で食おう♪」
クロが、フジから団子の包みを奪い、駆け出す。
「調理中だから、また後でなっ!」
手を振って、去って行った。
兄弟三人は、丸太に座った。
キンは、描きかけの絵に、木炭を走らせた。
「キン兄様、その絵は?」
「リリス女王だ」
「リリィホワイト様!? どういう……」
「戻って来ているから、すぐに話が聞けるよ」
アオが空を指した。
「アカも一緒だな」
「皆、揃いましたね」
「天界の門 以来か……」
「そうですね……」
申し訳なさそうに俯いたアオの肩に、キンは優しく手を置いた。
「昨日は言ってなかったな……お帰り、アオ」
「お帰りなさい、アオ兄様」
溢れそうになる涙を隠そうと、アオは顔を逸らし、頷いた。
♯♯♯
白銀と深紅の竜は、少し離れた所から、興奮冷めやらぬ父娘と、楽しそうな兄弟達を眺めていた。
「兄貴の、あんな顔、初めて見た」
「クロが何か変えたらしい」
「クロが!?」サクラかアオだと思ってた……
「今朝、一緒に嬉しそうに飛んで行った」
「そうか……」
黒輝の竜が、航海士父娘を迎えに来た。
「昼食で~す」
(おい、サクラ! クロは喋ったぞ!)
(あれはね『竜使い』が、竜の口 使って、喋ってるの~♪)
(どんな技だよっ!)
航海士父娘は、紅白の竜達に手を振りながら、黒竜に乗って、去って行った。
(もう、人になってもいいのか?)
(いいよ~♪)
♯♯♯
「誰か、ちゃんと説明してくれっ」
皆、声を上げて笑う。
「今日は、全員ここに泊まりだ」
「うんっ♪」「はい♪」 全員、頷く。
兄弟、ぞろぞろと、草地に向かって森を歩く。
キンとハクは、前を行く弟達を眺めながら、並んで歩いていた。
「ハク、何か心に決めたのか?」
「ああ、決めた。後で、ゆっくり話す。
兄貴は……何かフッ切れたのか?」
「ああ、そうだな。
確かに、ふっ切れた。後で、ゆっくり話す」
暫く、無言で歩いていたが、
意を決して――
「私は、ずっと一緒に、歩んで行きたいんだ」
「俺も、兄貴と一緒に、護りたくなったんだ」
同時に、ひと息に言った。
そして、顔を見合せ、笑った。
♯♯♯
「アカ兄様も、こちらにいらしていたのですね」
「サクラに呼ばれた」ボソッ
「だって~、団子あったから~♪」
「それは、呼ばないとね」「うんっ♪」
「アオ、兄弟の事……」
「うん。『全て』が、どれだけなのかは分からないけど、ちゃんと、兄弟だって事は思い出したよ」
「うむ」「良かった……」
「皆、ありがとう。
心配かけて、探させて……すまなかった」
「いえ、アオ兄様……」
アカが、アオの肩に掌を置いた。
アオが頷く。
フジが隣に並んだ。
アオが精一杯の笑みを返す。
「アオ兄、大好き~♪」背に、ぱふっ♪
「ありがとう……」
その頃、厨では――
黒「おいっ! 何やってんだよっ!」
姫「ほったらかして、何処ぞ行きおったから、
ワラワが腕を振るう番じゃと思ぅての♪」
黒「食えなくなるだろっ! 出てけっ!」
姫「怒らずとも……」
黒「あっ、すまねぇっ!
料理の事となると、つい……
怒っちゃいねぇからな」よしよし
姫「ならば、ワラワも手伝ぅてもよいのじゃな♪」
黒「触んなって! 食いモンじゃなくな――
あ……いや、まさか一国の姫君に、
こんな事させるワケにはいかねぇからな」
姫「ワラワも、ここに居りたいのじゃ……」
黒「だったら、味見役な。
これは重要な役目だからな」
姫「よいのか!♪」
黒「しっかり味を確かめてくれよ。いいな?」
姫「あい解ったぞ、クロ♪
もしや、その包みは――」くんくん♪
黒「これは味見しなくていいっ!」
姫「クロ……」うるっ
黒「いや……その……人数が多いからな。
味見しなくても確かなモンだし……な?」
姫「うむ」コクン
黒「代わりに、そっちの饅頭なら食っていいぞ」
姫「まことか!?♪」
黒「ああ。団子が来たからな。
それで我慢してくれ」ぽんぽん
姫「クロの饅頭も絶品じゃ♪」あむっ♪




