絆の島6-気持ちの壁
天竜王子達は各々別の屋敷で育ちました。
サクラは、アカの工房前に着地した。
(アカ兄~♪ 出てきて~♪)
アカが出て来た。
空龍が降りるのを手助けする。
十左は身軽に飛び降りる。
「来い」アカは工房へと歩き出す。
十左は、空龍の肩をポンッと叩いて、
「ぶっきらぼうだが、いい奴なんだ。
行こうぜっ!」
工房に入ると、アカは椅子を指した。
「座れ、だってさ」十左が通訳する。
空龍が腰掛けると、アカは無言で、背高の提桶を運んで来た。
提桶の中には、何やら半透明のトロッとしたものが入っている。
「それに、足を浸けるんだ」
十左が有る方の足を指す。
空龍が、恐る恐る爪先を浸ける。
そして、グッと足を差し込む。
「温かくて、心地良い……」
「それで、足の型を取るんだ」
暫く待つ。
その間、アカは刀を研いでいた。
アカが立ち上がり、別の提桶を運んで来た。
「もう固まってるから、足をゆっくり抜くんだ」
そっと抜く。
意外と軟らかい感触で、するりと抜けた。
「次は、切断面の型だ」
アカが置いて行った、新たな提桶を指す。
アカは、最初の提桶を持って、隣の部屋に入った。
少しして、戻って来ると、空龍の足をあちこち測り始めた。
無言のまま、膝や足首の角度を変えては、測っては書き込み、を繰り返す。
そして、二つ目の提桶も、隣の部屋へ運ぶ。
隣の部屋の入口で、背を向けたまま、
「明日の夕方だ」とだけ言った。
十左は、空龍の肩を、またポンッと叩き、
「俺の家に行こう」杖を渡した。
そして、
「その杖も明日までだなっ♪」
言いながら、工房を後にした。
♯♯♯
(キン兄♪ 行っていい? 隠れさせて~)
(どうしたのだ?)
(なんかね~、俺達、『竜使い』ってことになってるんだ。
俺が乗せて戻ったから、隠れてろって、クロ兄が言うんだよ~)
(解った。
見つからないよう、気をつけるのだぞ)
サクラが、そっと入って来た。
(キン兄♪ ただいまっ♪)キンに抱きつく。
(おかえり、サクラ)頭をポンポン。
(それで『竜使い』とは、どういう事なのだ?)
(え~っとねぇ――)
コンコンッと、扉が叩かれる。
サクラがサッと隠れた。
「何だ?」
「キン兄、ただいま」クロが入って来る。
(先に声かけてよ~)
(あ……悪ぃ、忘れてた)
(ヒドイ~)
「どうした? その箱は?」
「船の修理代。姫が用意させたんだ」
「修理代なら有るが……」
「姫の船なんだし、顔立ててやってよ」
「そうか……なら、任せる」
キンは、チラッとサクラを見て、
「何故『竜使い』なのだ?」
「それは――」経緯を説明する。
怒られるかなぁ、とドキドキしながら……
♯♯♯
「まぁ、今後も、一般人との接触が有るだろうから、好都合かも知れないな」
少し考えて――
「ということは……
今、私は金竜使いなのか?」
そう言って、少し笑った。
「そうだね」二人も、ホッとして笑った。
「で、これ、ちょっと置かせといて。
オレ、昼食作るから」千両箱を置く。
「ああ。それで、いつ行くのだ?」
「昼過ぎには……
向こうの夕食、作らないといけないから」
「そうか……解った」
あ……
キン兄、とっても寂しそうな色になった。
クロ兄に教えてあげた方がいいのかなぁ……
♯♯♯
クロが工房に行くと、アカが、ひとりで作業していた。
「義足は、明日の夕方だ」立ち上がり、
可愛らしい装飾を施した女物の剣を持って来た。
「受け取れ」ポイッ、くるり、作業再開。
何だコレ? 誰が注文したんだ?
あ!
姫の剣が折れたとか言ってたな……
「ありがとう、アカ。
きっと大喜びするよ」
剣を掲げ、じゃあなっ、と工房を出た。
それをチラッと見て、アカは微笑み、再び黙々と作業した。
♯♯♯
あの二人、工房に居ねぇってことは、
十左ん家かな?
「十左、居るか?」
「おう」戸が開く。「早かったな♪」
空龍も居た。
「やっぱ、ここだったか~
これから、オレ、昼食作るから、ここで待っててくださいね。
じゃ、十左、よろしくなっ」
「おう、旨いもん頼むなっ!」
「不味いもん食わせた事ねぇだろっ!」
小さな村に、愉しげな笑い声が響く。
♯♯♯
久しぶりに自分の厨で調理し、見習い達に留守を頼み、味噌の樽を両肩に乗せ、クロは外に出た。
(サクラ~、そろそろ準備しろ~)
(クロ兄、こっち来ないの?)
(千両箱、持って来てくれるか?)
(キン兄に顔見せてあげてよぉ)
(何で? 味噌樽、担いでるんだけど……)
(待ち合わせ場所に、置いといたらいいでしょ)
(う~ん……)そこそこ遠い……面倒くせ……
(キン兄、寂しそうだからぁ)
(んなワケねぇだろ)あはははっ
(この前、ハク兄も、そんなふうに言ったけどぉ。
さっき、クロ兄の顔 見た時、すっごく嬉しそうな色になって~
昼過ぎに行くって聞いた時、すっごく寂しそうな色になったんだよぉ)
(まさかぁ~)あはは……
(って、待てっ! 色って何だ!?)
(気持ちの色だよ。
ハク兄は、見えないって言ってたけど、クロ兄も見えないの?)
(見えるかっ!)不思議能力、第二弾ってか?
(ん? ちょい待てよ……)
(うん♪)
(お前……まさか……
ずっと、オレ達の気持ちを色で見てたのか?)
(うん♪ そぉだよ~♪)
頭が痛ぇ……
恥ずかし過ぎて、言葉が出ねぇ……
(クロ兄? どぉしたの?)
(あ……いや……この事、他の誰かに言ったか?)
(ハク兄とクロ兄だけ~
こないだ、ハク兄に、普通は見えないって言われるまで、み~んな、見えてるって思ってたから~
それに、ハク兄から、他の兄貴達には言っちゃダメだって、後で言われたし~)
(ん~と……でも、キン兄が寂しそうだから、オレには言ってくれたのか?)
(うん♪)
(ありがとな、サクラ。そっち行くわ)
(うんっ!♪)
なんか、オレ……
キン兄に、壁 作ってたよな……
子供の頃から、ずっと、周囲の扱いが
『キン様とハク様は次の王』だからって、
何でも特別で……
それが、まるで呪みたく気持ち縛ってて……
なんか……
別世界の人みたく思ってたよなぁ……
ハク兄は『次の王』嫌がって反発してるから……
だから 『こっち側』って、
勝手に、身近に感じてるんだけど、
キン兄は『次の王』受け入れてて……
それも、なんか……オレ、
キン兄自身が『私は、弟達とは違う』
って思ってるんだろな、って……
これ、だいぶヒガミだよな。
もしかして、キン兄が受け入れてるのって、
オレ達を自由に生きさせてやりたい、って
思ってくれてるからなのかな……
ただ、一番先に、卵の殻、
割って出ちゃった、ってだけなのに……
そんな重いモン、
ひとりで背負う気だったのかな……
気持ちの色か……
おかげで、気持ちの壁、溶けちゃったな。
(サクラ、ほんっと、ありがとなっ♪)
扉を叩こうとして、止めた。
「キン兄、入るよっ♪」
サクラみたく、扉 開けてみた。
気持ちの扉を開けるつもりで――
♯♯♯♯♯♯
そして、綺桜の竜は、クロと空龍と、千両箱、味噌樽、酒樽それぞれ二つを乗せて、島へと飛んだ。
(重いもんばっかで、すまねぇな)
(へ~き♪)
綺桜の竜は、ますます楽しそうに、ひと声 鳴いて、天高く舞い上がった。
凜「蛟、この布団の団子みたいな塊は?」
蛟「アオ様でございます……」
凜「何してるの? アオ?」
青「…………」
凜「寝てるの?」
蛟「起きていらっしゃるようでございますが、
小屋に戻られて、ずっとあのように……」
凜「あ、それが例のカツラねっ♪
よく出来てるね~」
蛟「ありがとうございますぅ」
青「二度と被らない……もう絶対に……」
蛟「アオ様っ!? お気を確かにっ!」
青「俺には無理だ……演技など……」
凜「蛟、そっとしときましょ……」
蛟「そうでございますねぇ……」




