表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
63/429

絆の島2-リリス

 サブタイトルは変わりましたが、同じ島でのお話です。


 アオ達の小屋には、アオ、クロの他に、夕食を終えた蛟、紫苑、珊瑚が居た。

「たっだいま~♪」

森に、慎玄を迎えに行っていたサクラが帰って来た。


慎玄を待つ間に、笛の話で盛り上がり、魔でも妖でもない笛での三重奏が始まった。



♯♯♯



 姫は、その笛の音を、アオ達の小屋の裏手の森で聞いていた。

小屋の窓から、クロの後ろ姿が見える。


夕闇の中、姫は、暫く佇んでいたが、ため息をひとつ残して、森を出た。



 もちろん、珊瑚は姫を誘っていたが、姫は、クロの顔を見るのが怖くて、行くことができなかった。


「如何な顔で会えばよいと言ぅのじゃ……」

独り言ち、また、ため息……



 姫が、とぼとぼと自分の小屋に向かって歩いていると、慎玄と見知らぬ男が、アオ達の小屋に向かっているらしく、ゆっくりと近付いて来ていた。


姫は食卓の陰に身を隠し、二人が通り過ぎるのを待った。




 姫が小屋に入ると、踊り子が海図を広げて、考え込んでいた。


「如何したのじゃ?」


「あら 姫様、お帰りなさい♪

いえ、大したことではないのですが、予定していた航路を、随分と外れているので、海流を読みながら、どう進もうかと考えていたんですよ」


「リリスは凄いのぅ。

こんな図で海流までも分かるのか……」


「父が航海士だったんです。

子供の頃、よく、海の話を聞いていたんですよ。

父が、いつも見ていたから、海図にも興味を持ってしまって……

ということにしてますが、父と話がしたかっただけなんですよね」


そう言って、踊り子――リリスは照れたように笑った。


「ご病気なのは、お母上じゃったな?

お父上は、如何にしておるのじゃ?」


「父は……航海に出たまま行方不明に……

もう、十年以上も前の話です」


「そぅじゃったのか……すまぬ……

悪い事を聞いてしもぅたのぅ」


「いいえ……」微笑み、

「もう、すっかり諦めてますから」


「さよぅか……」話を変えねばっ!

「いつも読んでおる書物は、航海のものか?」


「ええ、何かお役に立てればと……

でも、それもあるのですが……

今更ですが、父と繋がっているような気持ちになりますので……」


リリスは、海図を撫でていたが、不意に、その手を止めた。


「ここは……」一点を見詰めた。


「如何したのじゃ?」


「航路に戻る道筋が、とても難しいんです。

ここが通れるかどうか……

でなければ、かなり迂回しなければならないんです。

アオさんに相談しないと……

私には決められません……」


「今ならば、皆、アオの小屋に居るぞ」


「姫様は、どうしてここに?」


「ワラワは……その……眠くなったからじゃっ」


 あら、また、そんな分かりやすい嘘を……

 きっと、クロさんとご一緒なのが

 恥ずかしいのね♪


「姫様、皆さんは、魔物と戦うための打ち合わせかもしれませんから、私が入っても構わないのか、一緒に いらして中の様子を見て頂けませんか?」


 リリスは海図を丸め、強引に姫の手を取り、アオ達の小屋に向かった。

姫は、離してくれ、嫌じゃ、行かぬ、などと、ずっと ごねていたが、リリスに、しっかり手を握られ、引きずられるように連れて行かれた。



♯♯♯



 一方、アオ達の小屋では――


慎玄が連れて来た男の話を、皆で聞いていた。


 男の名は、空龍(クリュウ)

大型商船の航海士だったが、嵐の海に放り出され、足に怪我を負い、この島に漂着した。


空龍が漂着した時には、聖霊が、ただひとり、この島に閉じ込められていた。


島には、空龍と聖霊が『闇』と呼んでいた、恐ろしい気配が漂っていて、『闇』は、様々な感覚を狂わせた。


『闇』から発せられる霧に因って、光も射さず、景色も見えず――

島は、何日も何日も、白い世界に閉ざされた。

晴れている日は『闇』の気配は、然程ではないが、霧が出ると、気配が濃くなり、感覚も狂い易かった。


 空龍は、助けを待つばかりではなく、幾度も、筏を作り、島を出ようとしたが、霧に阻まれ、出ることはできなかった。

晴れた日ならば、と挑んでも、少し沖で、見えない壁に阻まれてしまった。



 聖霊は、美しい音楽に満ち溢れた国で、歌い、舞いして暮らしていたが、時々、仲間と人の世に来ては、美しい音楽や舞を、拾い集めて楽しんでいた。


ある時、美しい音に惹き寄せられ、気付いたら、仲間から、はぐれてしまっており、さ迷っていると、見えない手に捕まり、この島に閉じ込められてしまった。

音の無い、霧ばかりの狭い島で、聖霊は、気が狂いそうになりながら、必死で仲間に助けを求め続けていた。


偶然 『闇』に触れた時、聖霊の記憶にある音楽が、霧の中に響き流れ、聖霊は、ひと時だけの幸せを味わってしまった。

そして、音楽を求める気持ちに負け、度々『闇』に触れるようになっていった。


しかし、まだ、その時点では、聖霊は自分を失ってはいなかった。


そんな時、空龍が流れ着いた。


 聖霊は、空龍が来たことで、孤独から救われ、『闇』を頼ることはしなくなったが、やはり、音楽は恋しかった。

空龍の足が壊死し始めた時、聖霊は、空龍の命を救う為、『闇』の力を借り、空龍の足を切断した。

その、『闇』に頼った時に、『闇』は、聖霊が恋い焦がれる音楽を流した。


我慢していた音楽を聴いてしまったことで、聖霊は『闇』に囚われ、やがて『闇』と一体となり――


近くを通る船を引き込み、歌舞を要求し、できなければ、生気を奪うようになった。

時折、正気に戻り、苦しみながら――



 空龍は、住み処とする洞穴から、殆ど動くことができなかった。

その為、聖霊に引き込まれた船の乗組員達に、直接、会う事はできなかったが、彼らの話が、洞穴に居ても、稀に聞こえることがあった。


それらを繋ぎ合わせると、どうやら、この島は、普通に航行していると、船からは見えず、近付いて初めて見えるようだった。


ただ……島が見える位置まで来てしまうと、もう二度と出られないのだが――



 そうして、十数年――

空龍は、この島で生き抜いた。


助けを求める事も、脱出する事もできない、この小さな島で――



♯♯♯



 さて、リリスと姫は――


姫がジタバタするので、時間がかかったが、どうにかアオ達の小屋の前に着いた。


踊り子が扉を叩き――


扉が開き始めると、姫を押し込んだ。


「わわっ! リリス! 何をするのじゃっ!」


「リリス!? 今、リリスと言ったか!?」


半開きの扉から、確かに、その声は聞こえた。


リリスは、動けなくなった。


 ……まさか……そんな……


(しわが)れてはいるが、その声は、間違える筈もない、大好きな父の声だった。


姫が扉を全開にして、飛び出て来た。


白髪を後ろで束ねた男がいた。

その顔には、十数年の時が刻み込まれてはいたが、間違いなく父の顔だった。


「お父……さ……ん……」


海図が滑り落ち、広がる。


踊り子の目から、涙が溢れ出た。


「お父さん!」駆け寄り、抱きつく。


「リリス……本当に、リリスなんだね?

なぜ、この島に……?」



♯♯♯



 感動の父娘の再会の陰で――


姫は感涙に咽びつつ、そぉぉぉ~っと、その場を離れようとしていた。


「どこ行くんだよ?」襟首を掴まれる。


「うっ……」


今度は、クロの手で、小屋に引き込まれた。





 前話、後書きの続き――


黒「――ってことで、やっぱ、この島には

  人が住んでたんだ。

  もちろん、船に乗せるよな?」


青「当然だよ。こんな無人島なんかに

  置き去りになんてできないよ」


黒「よしっ! じゃあ、夕食からは

  ひとり増えるなっ♪

  最高に美味いモン、食わせてやっからなっ」


青「そっちは頼んだよ、クロ」


黒「任せとけって♪

  でも、アオ、こうやって人が増えたら……

  護れるのか? お前ら」


青「それも、クロ頼みだね。

  これからも、居てくれるよね?」


黒「そっか?♪

  アオに頼まれちゃあ、断れねぇよなっ♪

  よぉし! そっちも任せとけって♪」


桜(アオ兄、いいの? クロ兄ってば

  すぐに、調子に乗っちゃうよ)


青(うん。乗せているんだよ)


桜(そっか~♪)


青(でも、事実、クロ頼みだからね。

  そこは、ちゃんと認めているよ)


桜(うんっ♪)


黒「黙って、何だよぉ。遠慮か?

  んなモン、要らねぇからなっ♪」


青「うん。ありがとう、クロ」


黒「おう♪」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ