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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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霧の島11-練習の成果

 土日祝は全て予約投稿です。


「練習の成果、見てやるよ」

そう言って、クロが近付いて来た。


「クロ……」


「何だ?」


「ワラワ……」


「ん?」


 ずっと何か様子が変だけど、

 グズグズしてる場合じゃねぇんだよな……


クロは姫と向かい合い、(ひざまず)き、姫の手を取り、見上げる。

「踊って頂けますか? 姫……」


クロは、ただ、儀礼的な開始の挨拶をしただけだったが、


姫は何も言葉が出せず、ただただ頷いた。


円舞曲が流れてきた。

思わず舞台の方を見る。


厨の裏窓――その向こうの扉が開いていて、舞台が見える。


サクラと踊り子が舞っていた。


 曲を流すためか? 姫のために?


手を組み、足を踏み出す。


 へぇ……凄いな。こんな短時間で、

 別人みたく踊り易くなってる。

 流石、身体能力は、ズバ抜けてるよな……


必死でクロに付いて来ようとしているのが、痛いほど伝わってくる。


 そんなに緊張すんなよ。

 上手く踊れてるからさ……


クロは、そう伝えたかったが、視線が合わない。


 なかなか目を合わせてくれない姫が、進行方向を変えた時、視線を移す瞬間を捕らえ、大丈夫だから緊張するな、と微笑んだ。


それが、姫目線では、優雅で艶やかな最上級の笑顔に映る。

しかも、何やらキラキラした華を伴って――


そんな事とは、つゆ知らず、クロは姫を(いざな)い、踊り続けた。


曲が、もうすぐ終わる。

姫の背に添えていた手が、少し離れた時、姫は手を離し、くるくる回って――


草に足をとられた!


よろけた姫を受け止め、抱き寄せると、姫は、顔から火が噴いたように真っ赤になり――


――気を失った。


「おいっ! 姫!?」


曲が終わる。


(サクラ! 頼む! 助けてくれっ!)


(どぉしたの~?)


(アオを厨の裏(ここ)に寄越してくれっ!)


(は~い♪)


すぐに、アオが走って来た。


「何か分からんが、気絶した!」


アオは笑いながら、姫の額に手を翳した。


姫が、ゆっくり目を開ける。


が――


クロに抱き抱えられていると判るや否や、逃げ出そうと、もがいた。


「おとなしくして。足、挫いてる」

アオは、今度は、足首に手を翳す。


「もぅ……立てる……」

両手で顔を覆ったまま、姫がモゴモゴ言った。


聞き取れねぇよ、とクロが言おうとした、その時、


(アオ兄、クロ兄、ご指名だよ~

姫も連れて来てね♪)


クロは、サクラと話し続けながら、歩き出した。


姫を抱えたまま――


どちらかと言うと、話すことに集中していて、姫を抱えている事を忘れていたのだが――



 厨の横からクロが姿を現した時、皆、響動(どよ)めき――

くノ一達は、きゃあきゃあ はしゃぎ――

如月が、気を失って崩れ落ちた。


「何だぁ?」


「クロ、そろそろ降ろしてやらないかい?」

アオが笑っている。


「あ……」慌てて、姫を降ろした。




【ふむ……揃ったか……】


【円舞曲に合わせ、奏でられるか?】


「やってみよう」


【二組で舞踏せよ】


「着替えても よろしいですか?」

踊り子が申し出た。


【では、待つ間……笛を聞かせよ】


アオが舞台に上がる。


踊り子が、姫の手を取って、小屋へと走り出す。



 この魔物……

 そんなに悪いヤツじゃねぇよな……


クロは、そう思い始めていた。


クロだけでなく、皆、既に、そんな気になっていたが、先程、クロが現れた時の衝撃で 、そんな思いは、どこかに吹っ飛んでいた。



慎玄が、クロの横に並ぶ。

「先程の話の続きですが――」


クロと慎玄は、皆から少し離れた。



♯♯♯



 小屋では――


「これをワラワが着るのか!?」


「きっと、お似合いですよ」にこにこ♪


「それに、舞踏は、裾が花のように広がってこそ、華麗な舞になるのですよ。

着物ですと、はだけてしまって、恥ずかしい状態になるだけですから」


渋々着替えた。


――が、


扉から顔だけ出し、

「恥ずかしゅうて、出られぬ~」


 昨日までの姫様でしたら、

 きっと大はしゃぎしたことでしょうに……


クスッと笑って、踊り子は姫を迎えに行き、姫と手を繋いで、軽やかに駆け出した。


途中で手を離して、くるくる回り、


「いかがです? 美しく広がるでしょう?」


姫の瞳は、驚いた後、嬉しそうに煌めいた。


「さあ、参りましょう♪」


二人は、弾むように舞台に向かった。



♯♯♯



 笛の音が止む。


たっぷり、静寂があった後――


【揃うておるな。では、始めよ】



 四人が舞台に上がり、華やかな円舞曲が流れ始めた。


アオが音を重ねる。


美しい音色が、寄り添い合い、交わっては、少し離れ、また交わり――


可憐な妖精達が、追いかけ合い、じゃれ合うように、キラキラと響いていた。


クロとサクラは、その音を体に吸収し、それぞれの相手に、目で合図して、同時に踏み出した。


衣の花が咲く。


巧く位置を入れ替わりながら、二組である利点を最大限に活かし、華麗な花を咲かせ続けた。



♯♯♯



 珊瑚が小屋に戻ると、蛟が配っていた『御守』が落ちていた。


 今、笛が鳴っている!


姫のものか、踊り子のものかは不明だが、珊瑚は、二人を探そうと小屋を飛び出した。


 二人は、舞台の上!?


珊瑚は『御守』を握りしめ、


 ここで妖狐になるわけには……


舞台に向かって走り出した。





 厨の裏で、アオが治療を終えた時――


桜(アオ兄、クロ兄、ご指名だよ~

  姫も連れて来てね♪)


黒(『姫も』って事は、姫も踊るのか?)


桜(ご指名だから、そぉなんでしょ?)


黒(どう組むんだ?

  極上なら、オレと踊り子さんか?)


桜(クロ兄と姫でしょ)


黒(それで、極上しろだと!?)


桜(できるでしょ。クロ兄なら♪)


黒(う……しゃあねぇなっ!)


桜(がんばって~♪)


黒(ん? 騒がしいな……)「何だぁ?」


青「クロ、そろそろ降ろしてやらないかい?」

 (サクラ、計画的犯行かい?)


桜(どぉだろ♪)きゃははっ♪


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