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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
51/429

霧の島2-サクラ?

 書き忘れていましたが、『提桶』はバケツです。


 オレ達『竜使い』って事でいいのか?

 それで不都合は無いのか?


と、クロが考え込んでいる間に――


サクラはアオに近付き、

「アオ兄♪ なぁに真剣に話してるのぉ?」


「あ……サクラ……」アオは海図から顔を上げた。


「この島が海図に載っていないらしいんだよ」


アオの言葉に、踊り子が頷く。


「あの小さい島が、これらしいんだ」

アオが島を指し、続いて海図を指す。


「向こうの、もっと小さい島が、この点なんです」

踊り子が、それぞれ指す。


「ふぅん……

あ♪ 空から確かめてみる?」


(サ~ク~ラ~)クロが睨んでいる。


「やばっ」

サクラは逃げ出そうとしたが、クロに捕まった。


「蛟を待たせてるんだ。行くぞ!」

サクラを引っ張って行く。


「後でね~♪」

クロに引っ張られながら手を振った。




 クロは、まず、蛟の小道具袋を取りに船に向かった。


「あっ……クロ兄、ちょっと待ってぇ」


「何だよ」むっ


「アカ兄が……え? なぁに?……」


(予備の剣、置いている。アオに渡せ)


(わかった~♪)


「たぶんね~

アカ兄、予備の剣、持って来る途中のどこかで、キン兄に捕まって~

それで、船、押して来ることになったんだよ~

剣、『アオに渡せ』だって~♪」


「ふぅん。で、何処に有るんだ?」


「あ……」(アカ兄、剣どこ?)


(……船)


「船? あ♪ あれじゃない?」

サクラが指す方を見ると、甲板で何かが陽の光を反射している。


 その時、

「船主さん、なんか用ですかぃ?」

船の方から声がし、船底の穴から棟梁が出て来た。


「船主さん……じゃないようだな……」


「あ……兄なら向こうに――」アオを指す。

 たぶん、棟梁が言う『船主』は、

 キン兄なんだろうけど……


「弟さんですかぃ。よく似てやすなぁ。

で、なんの用ですかぃ?」


「荷物を――船室から荷物を出したいんだが」


「ああ、そうだな……不便させたなぁ。

気が利かなくて すまねぇな。

上の方は、好きに出入りしてくれ。

底の方は、危ねぇから近寄るなよ」

そう言って、棟梁は船に戻って行った。



 クロは、誰も見ていない事を確かめ、高く跳び、甲板に降りた。

サクラが続く。


 甲板には確かに剣が有り――


「この剣は……そうか……見つけたのか……」


 だから 『後で聞かせろ』って言ってたのに、

 わざわざ持って来たのか……


クロは、ひとり納得した。


サクラが縄梯子を持って弾んで来た。

「コレ~♪」


「そっか、それなら、皆も出入り出来るな」


サクラが布に何か書き始めた。


「何だ?

『上は出入り自由、船底に行くのダメ』

おい、なんだよ、その文言はぁ」


「じゃ、クロ兄、書く?」


「いや、いいよ」ぷいっ


「ニガテだもんね~」くすくす♪


「んなんじゃねぇよっ!

布がムダになるからだっ!」


結局、サクラが書いたままを、縄梯子に結び付けた。



 クロは、剣と小道具袋を持って、蛟が居る草地に向かった。

サクラが、その後を軽やかに弾んで行く。


(これ渡したら、皆から見えない所で竜になれ)


(なんで?)


(お前、『後でね~♪』って言ったろ?)


(乗せて飛んでいいの?)


(仕方ないだろ!)サクラを睨む。

(ただし、オレも乗せろ)


(いいよ~♪)


 サクラは調子に乗りやすいから、

 一応、怒っておいたが、

 この際、乗せるって話を利用して、

 『竜使い』を『真実』にするのも

 悪くねぇよな……




 草地に着いた。


「蛟、小道具袋だ」


「ありがとうございます。クロ様♪」


「一人で大丈夫か?」


「もちろん大丈夫でございます」にこにこ♪


「んじゃ、任せた。宜しく頼む」


「はい♪」


「あ、それと……これ」

アカが持って来た剣と、蛟が人界に来た日に預かった革袋を渡した。


「この剣は……アオ様の……」


クロは頷き、

「近いうちに、どっちも使えるようになるだろうからな」


「はいっ♪」


「サクラ、行くぞ」「ん♪」


クロとサクラは、森深くに入って行った。



♯♯♯



(この辺でいいだろ。着物、貸せよ)


(え~~っ!? なんで~??)ぃやんっ


(いいからっ)


クロとサクラは、着物を取り替え、サクラは竜になる。


クロは、綺桜の竜(サクラ)の背に乗り、髪を結い直した。


目を閉じ、一瞬、気を高める。


前髪を摘まんで確かめ、

「これでよしっ」と呟いた。


(お前、ぜっっったい! 喋るなよ!)


(わかったよぉ)


(笑うなよ!)


(う……うん……)自信ないけど……


(アオの所に飛べ。岩に隠れながらだぞ)


(うん♪)



 そして――



「アオ兄~♪」

サクラ(・・・)を乗せた、綺桜の竜(・・・・)が、低位置を保ち、岩に隠れながら飛んで来た。


「乗って♪ 乗って~♪」

アオと踊り子も竜に乗る。


「しっかり掴まってね♪ いい?」

(一気に上昇だ)


(は~い♪)

綺桜の竜は、船大工達に見つからないように上空へと舞い上がる。


(サクラ?)アオは呼び掛けてみた。


(なぁに~?♪)


(どうしてサクラが二人いるんだい?)


(乗ってるのクロ兄だよ♪)


(え!?)アオが固まり――


(ゆっくり降下して、陽の光を背に受けるんだ)

クロの指示が届いた。


竜は位置を調整し、船と陽の間で止まる。


「海図、俺にも見せて~♪」


「解るのかい? サクラ」

 笑ってはいけない……笑っては……


「どぉだろ」ケラケラ♪


「島だけ見て、こういう線は無視すれば大丈夫ですよ」

踊り子が海図を広げ、指で なぞりながら言う。


そして、サクラ(クロ)に微笑み、海図をくるりと回し、

「これで、同じ絵になりました」

見比べ易くした。


「ホントだ~♪

やっぱり、あの島だけ無いね~」

サクラ――ではなく、クロが、海図の島が有るべき場所をツンツン突っつく。


アオは踊り子に気付かれないように、必死で笑いを堪えていた。



♯♯♯



 その頃、浜では――


「やっぱり、あいつら、竜使いだったんだな!

そっかぁ。

乗って来た竜は、サクラのだったんだな。

だから一緒に乗って来たのかぁ」

十左が、うんうんと一人合点していた。


「……そのよぅじゃな……」


 このカラクリ……

 クロに訊ねたところで、

 はぐらかされるに決まっておる。

 サクラなら、簡単に喋りそぅじゃな……


姫は、そんな事を考えていた。


 聞き出す策を練らねばと、竜に乗らなんだが、

 乗って観察した方が良かったかのぅ……


「なぁ、サクラの竜がアレなら、クロの竜は黒いのか?」


「あ? あぁ、そぅじゃな」

 クロが、黒い竜なんじゃがな。


「そっか……

俺は、クロの竜に助けられたのか……」

 後で、きちんと礼を言わねばな。



 海風が心地よく頬を撫でていく――



「俺が、倒れているアオを見つけた日……

長く尾を引く青い光が、落ちるのを見たんだ。


さっき、サクラの竜を見て、あの青い光がアオの竜だったんじゃないか?

と、思ったんだよ。

あの竜……今、どうしてるんだろな」


「アオの兄弟が面倒を見ておるのではないのか?

それとも、爺様の所に居るか――

後で、クロにでも尋ねてみればよかろ?」


「そうだな……」

十左は空を仰ぎ見たが、空の眩しさで、綺桜(あやざくら)の竜は見えなかった。


「実は、この世には竜が沢山いるんだろな……

人が知らないだけなんだろな」


 言われてみれば……

「おそらく……そうなんじゃろな……」


 何故、竜は隠れて生き、

 人は、竜の存在を否定するのじゃろ……


「あちこちに竜神様が(まつ)られてるってことは、昔は、そこぃらじゅうに居たのかなぁ」


「そぅやもしれんな……」


十左と姫は、竜の戻りを待って、空を見上げ続けた。



♯♯♯



「ところで……」


「ん? なんじゃ?」


「姫様は、誰が好きなんだ?

クロか? アオか? それとも他の――」


「ばっ!! 何を申すのじゃっ!!

す、す、好きなどとっ! 馬鹿も休み休み――」


綺桜の竜が急降下して来た。


「わわっ!」


姫は、真っ赤になった顔を両手で覆って、走り去った。





凜「あの小屋、家賽(ヤサイ)って名前だったのね~」


蛟「はい♪ 量産型の竜宝でございますぅ」


凜「量産型?」


蛟「竜宝には、神様にしか、お作りになれない物と

  天竜の皆様が、お作りになられる物が

  有るのでございます」


凜「その天竜が作れる竜宝が量産型なのね?」


蛟「そうでございますぅ」


凜「あの壺も? いっぱい入るヤツ」


蛟「はい♪ 集縮(シュウシュク)の壺でございます♪」


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