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三界奇譚  作者: みや凜
第二章 航海編
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西航行3-再会

 前回まで:アオは魔蛸との戦いで気絶しました。


 魔化した旗魚(カジキ)、蛸と戦った翌々日――


蛟が仙竜丸(センリュウガン)を手に、アオの部屋に向かっていると、

眠ったままのアオの様子を見ていた踊り子が、扉から顔を覗かせた。


「あ、蛟さん。今、起きましたよ」にっこり


「えっ!?」

アオに駆け寄り、抱きつく蛟。

「ご無事で何よりでございます! アオ様ぁ♪」


アオは笑いながら、

「心配かけてしまったようだね。

すまなかった」


 なんだか口調が、少し……

 この、穏やかな声と気は……

 もしかして……


ごく小さな変化に気付いた蛟が、顔を上げた時、


踊り子が本を手に、

「皆さんにも伝えて参りますね」出て行った。



「アオ様、仙竜丸を――」


「ありがとう、爽蛇(ソウダ)


 えっ!? まさか……本当に?


「思い出されたのでございますか!?」


「爽蛇という名だと……いうことだけ……」

アオは、そう言って恥ずかしげに俯いた。


「あ、あ、あ……アオ様ぁぁぁ~♪」

真っ先に思い出したのが自分の名だと知り、蛟は天にも昇る幸福感を心の内でヒシと抱きしめた。


実際、蛟はアオを、ぎゅ~~っと、抱きしめていたのだが――


そこに、

「アオ兄♪ 起きたんだねっ♪」

扉が勢いよく開き、サクラが顔を出した。


が、アオに抱きついている蛟を見て止まり、

「・・・後にするねっ♪」バタン

引っ込んだ。


 あ…………あっ!!


「お待ち下さい! 誤解ですっ!

サクラ様ぁ~っ!!」

蛟は慌ててサクラを追いかけた。


(眠っている間、ずっと名を呼んでくれていたのは、サクラなんだね……)


(アオ兄? 話し方――)それよりも気が――


(うん。ありがとう、サクラ)


(アオ兄♪ もしかして、戻った!?♪)


(少しだけ……たぶん、ほんの少し……)


(兄貴達っ!♪ アオ兄が戻った~!!♪♪♪)


扉がバンッと開く!


「アオ兄ぃぃぃ~♪」

今度は、サクラが抱きつく。


(こっちに来てからのコト、覚えてる?)


アオは笑いながら、

「大丈夫だよ。思い出した記憶の代わりに消えてはいないようだよ」


「良かったぁ」ニコニコ♪


「アオ兄が、絶っっ対! 会いたいと思ってるヒト、連れて来たんだっ♪

入って~♪」

扉に向かって手招きする。


入って来たのは――


「まさか……十左、本当に!?」


十左は、ヨォと片手を挙げる。

「お互い、無事で何よりだなっ」ニカッ


アオは頷き、二人は笑った。


「それで、今まで何処に?」


「お前さんの兄弟の所で厄介になってる」


「洞窟に!?」


「あ、いや、洞窟の周りに何人か住んでて、小さな村みたくなってんだ」


 ああ……そうか。

 キン兄さんを(カシラ)って呼んでた人達か……


「村で、お前さんと別れて、魔物の相手してたら馬と義足をヤられてなぁ。

炎と魔物に囲まれて、どうにも身動きとれなくなっちまった所を、黒い竜に助けられたんだよ。

竜だよ竜! ……信じてくれるか?」


アオは頷いた。


「運ばれてる途中で、気ィ失っちまって……

何日も眠ってたらしいんだな。


気がついてからも暫く声が出なくてな~

喉を火傷してたらしいんだよな。


お前さんソックリなのが、入れ替り立ち替り来るんだが、話しもできなくてよぉ。

もどかしいったってありゃしねぇ。


やっとこさ声が出てな、飯 運んで来た奴に『アオ』って呼び掛けたら大騒ぎになって、アレヨアレヨって間に、新しい義足が出来て、調整してもらいに行ってこい、って、竜に乗せられて……

んで、ここだよ」


十左は、アオの肩をポンポン叩きながら大笑い。

二人で、また再会を喜びあっていると、


「十左~♪ 義足の調整してくれるって~♪」

サクラが入って来た。


十左は立ち上がりながら、

「そういや、サクラは、いつ来たんだ?」


「一緒に来たのに~」きゃははっ♪


「そっか、後ろに乗ってたのか」

うんうんと一人合点。


「アオ、また後でなっ」

十左とサクラは出て行った。



 ほんの少しかもしれないが記憶が戻った、その喜びをアオが噛み締めていると、


扉がコンコンッと叩かれ、

「アオ殿、失礼いたします」

紫苑と珊瑚が入って来た。


アオは、村人を救い、十左を探し始めた時から協力してくれた紫苑と、

アオの願い出を聞き入れ、付いて来てくれた珊瑚に、改めて礼を言った。


「十左は無事でしたが、旅は……

続けたいのですが――」


アオの言葉に、紫苑と珊瑚は、安堵の表情を見せた。


「私達の旅は、まだまだこれからですから、ご一緒して頂けるなら、嬉しい限りです」

二人は、宜しくお願い致します、と頭を下げた。


「アオ殿も変化があったようですね」


アオは、記憶が少しだけ戻ったと伝えた。


紫苑は、慎玄が爆発的な術を発した事や、

アオと宝剣が輝き、一瞬だけだが、青竜の姿が見えた事を話した。



♯♯♯



 その頃、竜ヶ峰近くの洞窟では――


「キン兄!♪ 聞こえたよなっ♪

さっきの――あれ?」

クロは、キンの部屋の扉を開けて、立ち尽くした。


「どこ行ったんだろ? キン兄……許可……

ま、いっか。オレ、お目付け役だからなっ♪

あ♪ そうだっ♪」

自室に戻り、蛟から預かった革袋を掴む。



 弾みながら外に出ると、アカが工房の前で、天を仰ぎ見ていた。


「アカも行くか?」


アカは首を横に振り、

「後で聞かせろ」ニヤリ

工房に入って行った。


「おう♪」

クロは西へと飛び立った。



♯♯♯



 その頃――


キンは、アオ達の船の遥か上空に居た。


 サクラに気付かれないよう細心の注意を払い、サクラを通じて、アオの様子を感じ取る事が出来るギリギリの距離を保っていた。

相手がサクラでなければ、こんな事は出来ない。

この為にキンは、クロではなく、サクラを向かわせたのだった。


 アオの記憶が戻り始めた事に安堵した時、より上空を移動している禍々しい気を感じた。


反射的に、その気の方に向かったキンは、手に鳥籠のような小さな檻を持った、闇黒色の竜が凄まじい速さで飛び去るのを見た。


キンは全力で追いかけたが追いつけず、闇黒色の竜は、唐突に開いた闇の穴に消えた。


「あれは一体……」


 フジならば追い付けたのではないだろうか……


そう思うと、自分の不甲斐なさが歯痒くて仕方ないキンだった。



♯♯♯



 もちろん、天界で翁亀の話を聴いていたハクとフジにも、サクラの『声』は届いていた。

喜び合う二人を、翁亀は微笑ましく眺めていた。





 アオが魔蛸を浄化した直後――


翡【サクラ、起きて。サクラ!】


桜「あ……ヒスイ……俺、また同調?」


翡【そうだよ】


桜「アオ兄は!? あ……

  俺が生きてるから、だいじょぶだよね」


翡【大丈夫だけど……封印が……】


桜「あ……俺のも緩んでる……

  ヒスイ、お願いっ!」


翡【もう、あまり――】


桜「言ってらんないでしょっ!」


翡【…………そうだね】


桜「アオ兄のも、お願いね」


翡【解ってる。サクラ、耐えて……】


桜「ありがと、ヒスイ」


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