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三界奇譚  作者: みや凜
第一章 竜ヶ島編
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天亀湖4-竜血環

 前回まで:ハクは意外と心配性。


 ひとしきり笑った後、翁亀は続きを話し始めた。


「青いのらは、城下町衆から、西の国の砂漠に魔物が横行しとる、と聞いとったから、まずは、そこに向かうことにしたんじゃ――」



♯♯♯♯♯♯



 アオ達は、竜ヶ峰を下り、西の国に入る前、

国境近くの森の村で、砂漠に、突如、たくさんの岩山が現れ、そこに魔物が棲み着いた、と聞いた。


 岩山には、魔物に依って魔獣化された砂兎や、妖魔となった魂が巣くっていた。

アオ達は、砂兎達を元に戻し、妖魔の魂を浄化し、岩山を砂に還しながら、砂漠を西へと進み、砂漠の中央にある商人の街に着いた。


 商人の街は、廃墟となっていたが――

商人達は地下に街を築き、北の街に向かって地下道を掘り、通商を再開していた。

商人の街の近くに、一際 高い岩山が在り、そこには、砂漠の脅威の元凶・馬頭鬼がいた。



♯♯♯♯♯♯



「お前さん、ここまでは見とったじゃろ?」


「あぁ、はい」


「なら、ここから、も少し丁寧に話すかの」


「はい。お願いします」


「お前さんが、天界(こっち)に飛んだ後、青いのらはのぉ――」



♯♯♯♯♯♯



 アオ達が、馬頭鬼の岩山に向かおうとしていた時、馬頭鬼が、竜の匂いを嗅ぎ付け、現れた。

馬頭鬼は、アオ達を捕獲せんとし、縦横無尽に飛ぶ伸縮自在な輪を放ち、召喚した魔獣にも攻撃させた。

アオ達は苦戦を強いられ、陰陽師二人が捕らえられてしまう。

狐の姿にされた陰陽師達は、馬頭鬼に操られ、アオ達を攻撃する。


 陰陽師達の攻撃を避けたアオが、輪に捕らえられた、その時、天界から、破環の竜宝を借りて戻ったクロが飛来し、輪を粉砕した。

クロの加勢で劣勢に転じてしまった馬頭鬼は、陰陽師達を連れ、闇の穴に消えた。



♯♯♯♯♯♯



「その様子を、砂兎が魔物に操られて暴れとると聞いて、偵察に行っとった天兎の右大臣が見とったんじゃ。

天兎は、妖狐と仲が良いからの。

妖狐王の姫の顔も知っとった。


右大臣殿は、妖狐王の三の姫様が捕まってしもぉた~、と思うての。

慌てて、ハザマの森に向かい、狐の(やしろ)に飛び込んだんじゃ」


「それで天兎が……」


「そういうことじゃ♪」


なるほど~、と思った後、ハクはハッとした。

「もしかして、輪というのは、これですか!?」

蛟から預かった輪を懐から取り出す。


「魔宝・竜血環(リュウケツカン)じゃな。

『元祖』と付けた方がよいかの――」

暫し、小鳥達の囀ずりに耳を傾ける。


「長きに渡って、古の竜宝も、魔宝も、謎多き物であって、研究対象でしかなく、改良できる者など、ついぞ現れなんだが……

とうとう、魔宝を改良できる者が現れたようじゃな……」


翁亀は黙りこみ、

ハクは、じっと次の言葉を待った。


「もはや伝説でしかないが……

この戦の発端は、神と神の争いじゃと言われておる。


今では、竜の神達は、天界の上空を神界として、そこに住んでおるが、かつては、天界の地上に住んでおったんじゃ。

そんな、昔々の大昔。

神達の間で争いが起こり、神は天界を上下に分け、神界を作ったのじゃ。

そして、天界と神界に分かれ、大きな戦をしたそうじゃ。


それまでの竜宝は、生活を便利に、豊かにする為に生み出されておったが、この戦で、兵器が生み出されてしもうたんじゃ。

人神と魔神の説得に依り、この戦は、一旦は収束したんじゃがのぉ。


再び、竜の神は戦を始め、負けた神が、地下界に逃げ込み、その後、地下の人界、魔界の大半を支配して、復讐の為に、天界に攻めこんだそうなんじゃ。

その、二度目の戦いの中で、兵器として生み出されたのが魔宝なんじゃ」


「どちらも神の創造物だったのですか……」


「そうじゃ――と、言われておる。

天界で、お前さんら天竜の力が絶大なように、神族の中でも神竜の力は絶大じゃ。

それ故、竜の力を削ぎ、竜を攻撃する為の魔宝が圧倒的に多い、という事じゃ」


「この竜血環というのは……?」


「竜の力と生き血を吸い尽くす物じゃよ。

お前さん、そいつに噛みつかれると命を落とすぞ」


「えっ!?」慌てて落としそうになる。


「危険じゃから、儂が預かってやろう」


「翁亀様は大丈夫なのですか?」


「なんともないわい」笑いながら受け取る。


「これは……復元された物じゃな。

新しそうじゃ。

まだ血を吸っとらんから、これに掛かった竜は、おらんようじゃな」


「ええ、それはアオの蛟が掛けられた物です。

蛟は、人姿になれなかったと言ってました」


「竜でない者にとっては、そんな程度の物よ。

じゃから、陰陽師らは狐に戻った。

操られたのは、別の何かの力じゃろうて。


青いのは、環に捕まっても、竜には戻らんかったそうじゃ。

一瞬、戻りかけたそうじゃがのぉ」


「アオは大丈夫なのですか?」


「すぐに黒いのが粉砕したからの。

命は大丈夫じゃ。

ただ、暫くは動けそうにないがのぉ……

後で、診に行ってやるんじゃな」


「はい」

無事だと判ったし、行く口実が出来たので、ハクは嬉しかった。


「あ……そういえば、馬頭鬼は?」


「陰陽師らの母親・妖狐王の三の姫が瞬殺したわい。

圧倒的な力の差が有るからの。


それは良かったんじゃが~

馬頭鬼がチョッカイ出したせいで、陰陽師らの妖狐としての力が、目覚めてしもうてのぉ。

三の姫は封印しようとしたんじゃが、二人は戦うために解放して欲しいと願うての。

修行を兼ねて、自力でハザマの森まで行くことになったんじゃ」


翁亀が、そう言い終わって、一息つこうと団子に首を伸ばした時、


ハクの視界が、ぐにゃりと歪んだ。

思わず目を閉じ、また開くと、傾きかけていた陽が、高い位置に戻っていた。


ハクが驚いていると――


「ここは、ハザマの森が近いからのぉ。

時々、時空が歪むんじゃよ」


翁亀は平然と「よくあることじゃよ」と笑った。


「今ので、進んだのか、戻ったのか……

小鳥よ、どうじゃ?

……そうか、進んだのか。そうかそうか」


「どのくらい進んだのですか?」


「さぁのぉ……

さっきの歪みは、ちと大きかったからのぉ……

十日か、二十日程かの」


「そんなに!?」


「もぅ帰らねばならんのか?」

なんだか寂しそうだ。


「あ……いえ……まだ大丈夫です」

輪の事は、一応、聞けたが、もっと魔宝について聞きたいハクだった。


「そうかそうか♪ まだ聞いてくれるか♪」

とたんに嬉しさが溢れ零れる翁亀だった。



「あ……」


「なんじゃ?」


「あの二人……そうか……

あの二人が、妖狐王の孫なのか……」


「そうじゃよ。三の姫の子じゃからの。

さっきから何度も言うておろ?」


「いえ、輪の事を伺いたくて来たので、つい素通りしてしまって……

だから、妖狐王は、アオの事をやたらと気に掛けてるのか~」


「ん?

妖狐王が、青いのの周りをウロウロしとるのは、今に始まった事では無いぞ」


「え……やっぱり、子供の頃から……」


「そうじゃよ。

孵化してすぐから、ずっとじゃ」


「もしかして……

アオと陰陽師達を、妖狐王が会わせたのか?」


ふふん「どうじゃろのぉ」


「でも……何の為に……」


「彼奴には、何かが見えておるのやもしれん」


「えっ!?」


「ただのジジィの独り言じゃ」はっはっは♪





桜「蛟さ~ん♪」


蛟「サクラ様っ、私には『さん』も不要で

  ございますのでっ!」


桜「でもぉ、呼びにくいよぉ

  いいでしょ? つけても~」


蛟「困りますのでっ」


桜「仕方ないなぁ。 じゃ、みずちん♪」


蛟「おやめくださいませっ」


桜「ダメばっかり~」ぷぅ


蛟「それより、サクラ様」作業小屋へ。


桜「あ~れ~」引っ張り込まれる。


蛟「アオ様の事なのですが……」


桜「心配要りませんよ。

  どうしても無理はするでしょうが、

  俺が引き留めますから」


蛟「よろしくお願い致します」深く礼。


桜「そんなにしなくても……

  それより、これを――」


蛟「これは……?」木箱……竜宝でございますね?


桜「甘魅了(カンミリョウ)ですよ」


蛟「姫様の為でございますか?」


桜「クロ兄も作るでしょうが、

  毎日となると――」あはは……


蛟「クロ様がキレなさる前に、繋ぎを

  という事でございますね?」


桜「そゆこと♪」


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