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三界奇譚  作者: みや凜
第五章 闇神城編
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神の戦3-姉妹

 アオとサクラは闇神城に戻されてしまいました。


【追って来たのか、ディアナ……】鋭く睨む。


【姉様! アオとサクラは――】


【それは解った。

しかし、止める事 能わぬ!】


【何故……このような事を……?

全ては誤解なのです。話をお聞きください!】


【煩い! 失せよ!!】

サフィアは闇黒の波動を放った!



♯♯♯



【アオ! サクラ! こっちに来いっ!!】


 コバルトの声でアオとサクラは、闇の神の間へと曲空した。


【魔法円の様子が変わった! 囲め!】


(この魔法円って……)

(まだ繋がっているね)


(アオ兄、ディアナ様は――)

(そうだね……きっとサフィア様と――)

(うん……だから俺達も――)

(やるかい?)(うん)


 アオとサクラは己が身を光で包み、魔法円の中央に飛び込んだ。

そして向かい合い、掌を合わせ、目を閉じた。


【アオ! サクラ! 何をする気!?】


(だいじょぶだよ、スミレ)

(心配要らないからね)


二人は気を高め始めた。



♯♯♯



 サフィアが放った闇黒の波動を、ディアナは杖で止め、消し去った。


【話を聞いて! 姉様!】


【今更 聞いてどうなるのだ!

誤解とて、もはや止められぬのだ!】


【いいえ、姉様と私、力を合わせれば止められる筈。だから――】


【無駄だ! 大神であろうが止める事 能わぬ。

それほど強い呪を掛けたのだ。

たとえ私が滅されようが止まらぬ!】


【姉様を滅するなど考えておりません!

私が全ての力を以て、その呪を浄化します!

姉様……術を止めて……お願い……】


【自身を滅すると言うのか? 愚かな……】


【構わない! 止められるのなら、それで……】


サフィアの瞳が揺れる。


【私は、ただ……幼き日のように平穏に、姉様に寄り添い、微笑み合っていたかった。

誰もが願う、そんな細やかな幸せに満ちた穏やかな世を、この三界に取り戻す為なら、私ひとりなど――】


【犠牲になろうが止められはせぬ!】


【姉様……】



【ディアナ……私は……神界に帰りたかった。

ただ、それだけだった……】


サフィアの纏う気が、穏やかな色に変わっていく。


【それはきっと、ディアナと再び――】


言葉を止め、ディアナを見詰めた。


【そうだな……ディアナと同じだ】目を伏せた。


【それならば術を止め、これから再び――】


【止められはせぬのだ。

私自身にも喰魂獣の魂を込め、その魂に呪を掛けたのだからな……。

たとえ私が滅されようが、喰魂獣が呪も闇も、私の全てを受け継ぐ。

だから最早、如何な者にも止められはせぬ】


【姉様……止めたいとは願って頂けますか?】


【遅すぎたが……な……】



♯♯♯



(竜宝達、みんな力を貸してね)

(神様方、御力をお貸しください)

(兄貴達、俺達に力を込めてね)

(妖狐王、慎玄殿、純慎殿、共に浄化を)

(クロ兄、姫、供与全開ねっ)


(サクラ、全てを解放するよ)

(アオ兄、おもいっきりねっ)


アオとサクラが翼を広げる。


光輪と翼が、羽ばたく毎に輝きを増していく。


芳小竜達が次々と魔法円に飛び込んだ。


(皆も、お手伝いお願いね)【は~い♪】


(みなさ~ん♪ せ~のっ!!)



♯♯♯



 ディアナは、手にしていた杖を消し、両手を広げた。


【まさか……ディアナ……私と……】


【姉様、共に……全て、二人で……】


ディアナの頬を涙が伝った。


【大好きよ、姉様……ずっと一緒に……】


【私を……そこまで……】


サフィアの瞳からも涙が溢れた。


 何故、もう少し早く……

 私が、もう少しだけ早く、

 心を取り戻していれば……


 ディアナを巻き込む事など、

 無かったろうに……


 何故、今になって……

 今更このような気持ちに……


 もしや、あの二人……アオとサクラは、

 私に取り憑いた呪すらも浄化したのか!?


 あの二人こそ、まさしく神であったのか……


 そうか! 伝説ではなく真実であったのか!

 青身神は実在していたのか……


 アオ様……サクラ様……

 どうかディアナをお救いください!


 どうか……この願いよ……


 お願い! 届いて!!



♯♯♯



(うっわ~♪ クロ兄と姫ってば凄っ!♪)


(フジは、二つの大器を全開にしているね)


(慎玄さんと純慎さん、アオ兄と俺みたい)


(共鳴する光と闇が支えてくれているよね)


(キン兄も凄いよ~♪ 雷が共鳴する~♪)


(アカも神様の力だね。サクラと同じだね)


(紫苑さんと珊瑚さんも神様なのかなぁ?)


(狐の神様だよね。妖狐王様もそうだけど)


(ハク兄ってば、ぜ~んぶ双璧してるよ!)


(神様の御力まで双璧しているから凄いね)


(翼……ちょっとイタいかも~。光輪も~)


(溢れてしまいそうだけど頑張って保とう)


(うんっ!♪ 俺っ、ガンバる、からっ!)


(あっ!? 覚醒!?)(アカ兄、今!?)

(フジも今っ!?)(ハク兄もだよっ!!)

(連鎖してしまったね……大丈夫かな……)

(アオ兄こそっ! だいじょぶなのっ!?)

(うん……そうだね……サクラも無理――)

(アオ兄っ!? しっかりし……てっ……)


 耐えている二人が気を失いかけた時、アオの内から伸びた掌握が二人を抱きしめ、支えた。


 この掌握()……ルリ姉だ……

 優しくて……とっても強い力……


 いっしょに……俺も闇障なんだから……

 ルリ姉と一緒にアオ兄を支えなきゃ……。


サクラも掌握を伸ばし、アオを抱きしめた。


(サクラ、もう振りする余裕は無いだろ?)


(はい。もう無い、です……アオ兄、さん)


(俺も、もう限界だから、話せなくなるよ)


(はい……集中、し、ます……)


(そう、だね……)



 魔法円から伝わってくる……


 ディアナ様とサフィア様は……

 今、三界を護ろうとしてる……


『闇の神』の術も、呪も、ぜんぶ……

 いっしょに『ひとつ』になろうとしてる。


 すべてを浄化しようとしてる……


 だから、アオ兄も浄化しようとしてるんだ。


 魔法円の向こう……

 ディアナ様とサフィア様が

 御力を使いきって消えないように……


 俺達が先に全てを浄化するんだ。


 支えないと……アオ兄を……

 『闇障()』が『(アオ兄)』を支えるんだ。


 俺……また……

 アオ兄と『ひとつ』になれるのかな……


 俺はアオ兄で……アオ兄は俺……


 アオ兄に……還れるのかな……


 俺……――



♯♯♯



 ディアナが発した光が二神を包み、拡がり、その空間を満たした。



 アオ様、サクラ様、

 姉様を戻してくださって、ありがとう。


 闇の神は、今、消え去りました!



♯♯♯



 アオとサクラが、溢れ出した煌めく光を纏う。

纏う光を追うように、二人の内から力の殻を押し割った閃光が迸った。


 届け!!!


全てが輝きに変わる。


音すらも輝きとなり、無に還る――



♯♯♯



 闇神城の上部が輝いた。


「綺麗……」「あの光……」「あっ、こちらに!」


綺桜と瑠璃の煌めきを纏った純白の輝きが迫り、頭上を通過し、光の尾が辺りを包んでいった。


「やわらかくて、あたたかい光ですね」

「それに、とても清らかだわ」

「この光はアオ様とサクラ様よ。きっと」

「そうですわね」


(やはり、あのお二方は……)

(青身神様なのね……)



♯♯♯



 魔竜の女性兵達は、敬礼して見送った。


「サクラ王様の光ですよね」

「煌めきが桜色ですからね」


「瑠璃色の煌めきも美しいですよ」

「これは双青輝伝説の第二章だわ」


【アオ様とサクラ様は……】

【やはり大神様なのですね……】

集まった神達も見上げていた。




 輝きは拡がり、駆け抜けていく――




「サクラ……この光……全てを優しく包んで……」


虹藍は、上空の闇黒色の者達が色を戻していく様を見てハッとし、振り返った。


「急ぎ上空の方々を収容してください!

それと、間もなく王が御帰還なさいます!

お迎えの準備を!」



♯♯♯



「ほぅ……流石、アオだな」


 妖狐王は目を細め、天を仰ぎ見た。

白い毛が靡き、碧の光の尾を引く。


「心地よい風だ……」



♯♯♯



 異空間を満たした輝きは、一瞬にして一点に吸収された。


きゅるる、る……――


宙で、コロンと芳小竜が転がり――


現れたカルサイが、それを掬い上げ、消えた。


 ディアナ様! 消滅などさせません!



♯♯♯



 アオとサクラから迸った純白の輝きは、三界を駆け抜け、輝きで満たし、全てを包み込んだ瞬間、弾け散った。



――ゆっくりと色彩が戻る。




【カルサイ!? 何処!?】

叫んで、ドルマイが消えた。


【アオ!?】【サクラ!?】

スミレとヒスイが二人の気を探す。


【子孫共! 何処だ!!】





 アオとサクラが光を放出する直前――



 あ……思い出した……

 卵の中……ガーネ様の御声……


『モルガナ、暫くカイヤナの中に戻すよ。

 ヴィオラが落ち着いたら、また分けるからね。

 ジェイドも眠っていておくれ――』


 この術は……きっと、外から共心させる術!


 だったら、俺もアオ兄の内から支えられる!

 待ってて、アオ兄。すぐに還るからね!


(サクラはサクラだ。アオの一部ではない。

 共心は私が拒絶する)


 あ……楽になった……

 ルリ姉が底上げしてくれてる!


(ルリ姉? でもアオ兄を支えないと――)


(内から支えるのは私の役目だ。

 サクラは外から支えろ。

 サクラは原神なのだから身体に何か有ろうが

 支えられるのだろ? だからサクラは外だ)


(でも――)


(問答無用だ。共心は妻の特権だ)


(ルリ姉……)


(早く支えろ。放出が始まるぞ!)


(うんっ!)


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