闇神城7-闇の神の間へ
『闇の神』『初代魔王』と、竜達は好き勝手に
呼んでいますが、魔王達は『神』と呼んでいる
ようです。
♯♯ 闇神城 ♯♯
(アオ兄おかえり~♪)ぱふっ♪
(ただいま)なでなで。
(みなさ~ん♪ 次、こっち~♪)
サクラが飛んだ。
(まだ曲空は使っちゃダメだよ~)
兄達から了解の返事を受ける。
(メライトさん、七階だけではなさそうなんですね?)
【はい……まだ歪みを感じるのです】
(真神界に作ったような、異空間を通る歪みと同類ですか?)
【そうですね……似ています。
おそらく、私が作った鏡を利用し、曲空すれば異空間に引き込むように変えている……そんな気がするのです】
(そんな物が出来ていたのですか?)
【未完成だと思います。
私は、そこまでは作れていませんでしたし、短期間で完成出来るとは思えませんので。
曲空封じを解除されたので、無理矢理それを発動したのではないでしょうか】
(それだけに恐ろしいという事ですね……鏡の在り処は分かりますか?)
【いえ……ずっと上……その程度です】
(ありがとうございます。
では、初代魔王に直行します。
誘導お願い致します)
サクラに続いて鏡をくぐり、回収出来る結界魔宝を解除していたアオとクロは――
(アオ、あっちこっちに魔王がいるけど、どうするんだ?)
(流石、クロには見えるんだね。
サクラは初代に直行するつもりだよ。
初代を浄化出来れば、全てを浄化出来るかもしれないからね。
魔王達は俺達の動きを把握していながら、動かないね。後ろを塞ぐつもりかな?
今は、襲って来たら戦う。それでいいと思うよ)
(そっか)(監視だけは頼むよ)
(解った)(うむ♪)
(しっかし、隠居っつっても強ぇんだな)
(ああ、それか。初代が復活させたからだよ)
(え? じゃあ……)(全員、現役だよ)
(ゲッ……)
(勝てるのか?)(勝つよ)
(どこからそんな……)(俺達だから、かな?)
(おいおい……)(大丈夫さ)くすっ。
(初代にとっては、想定外だらけだろうからね)
(想定外?)
(三界中の人族も神族も、全てが協力している。
長い時を掛けて分断したのにね)
(そっか……だなっ♪)
(だからこそ成し得たんだけど――)
(ん?)
(ここまで侵入されるなんて、思いも寄らなかっただろうね。
しかも神まで来てしまった。
だから慌てて未完成の魔宝まで使わないといけなくなったんだよ。
そこまで追い詰めたんだ。皆の力で)
(この曲空封じか?)
(曲空は出来るよ。ただ、罠が仕掛けてあるんだ。
最初の曲空封じを解除されたから、今度は無理矢理に厄介な罠を起動させたんだ)
(どんな?)
(そこまでは分からないよ。
でもきっと戦えなくなる。
ま、そんな事じゃあ俺達を止められないけどね)
(おう♪ 皆の力があるからなっ♪)
(それに、この状態でも見える者が居る)
クロと姫を見て微笑む。
(オレ達だけ!? まさか……アオには見えてねぇのか?)
(うん。闇が強過ぎて、よく見えない。
神様方も同様だと思うよ。
そうでなければ、人神様と魔神様も苦戦しなかっただろうね)
(もしかして、さっきも見えてなかったのか?)
(神眼では真っ暗だったよ)
(オレ、知らずに……サクラ怒鳴っちまった!)
(いいよ、そんな事 気にしていないから。
どうしてもなら、後にしてね。
サクラは今、元・現魔王に案内して貰っているからね)
(もう友達になったのかよ)(たぶんね)
また鏡をくぐる。
(あ……初代、近いぞ)(見える?)
(奥の部屋、魔法円がある!)
(マズいね。追い詰められているから……)
(サクラ、魔法円が有るらしい)
(うん、ありがと。気をつける~。
もぉすぐだからね。
アオ兄……ディアナ様をお願いね)
(うん……解っているよ、サクラ)
【この突き当たりです。
歪みの鏡も、あの部屋に有ります】
(ありがとうございました、メライトさん。
安全な所にお送りします)
【いえ。このまま、お供させてください】
(危険ですので、それは――)
【私が、これまで貴殿方に――いえ、この三界にしてきた事を考えれば、既に滅されていて当然です。
まだ少しでもお役に立てる可能性が有るのでしたら、お連れください】
サクラは立ち止まって考え、
(では……引き続き、お世話になります)
前を向いた。
【ありがとうございます】
(ルリ、通路の壁に埋め込まれている結界魔宝は取り出せるかい?)
(ふむ……なんとか、な)次々と出す。
(あの部屋の中は?)
(もちろん探る)
(無理はしないでね)
(無理だとは思っていない)
片っ端 解除していく。
♯♯ 天竜王城 ♯♯
「親父! 何があった!?」ギンが飛んで来た。
「ムラサキが集縮工場に行ったんじゃ。
硝子工房に行きたくての」
「武器を量産するのか?」
「全界が苦戦しておるからの」曲空。
「親父が……曲空?」いつの間に会得を?
【ギリギリ間に合ったようだな】
「えっ!?」まるで黄色いルリさんだな……。
【城は相変わらずだな】
「ヒマワリ……」曲空して現れ、固まった。
【兄上、成ったばかりの神だが、手伝えるか?】
「なんで神に……?」
【成り行きだ。孫を護りたくてな】
「壺を運ぶ! 神の光を込めてくれ!」
【お安い御用だ】フフン♪
「ギン! 執事達を集め――ヒマワリ!?」
大きな箱を抱えたまま固まった。
【シロ兄♪ 久方振りだな】
「後で ゆっくり聞かせろ!
とにかく手伝ってくれ!」
「シロ! 壺運びを手伝え!」
ムラサキが大きな壺を四つ置き、シロを掴んで消えた。
執事達が集まる。
「中身も集縮か……」
ギンが大壺の中から壺を出した。
シロが置いた箱から鏡を出し、壺へ。
「ヒマワリ様、この壺に光を」
【ふむ。これが武器なのだな?】光輝神雷♪
蓋をして、ひとつ出来上がり。
「神の光しか効かんからの」次の大壺を置く。
「手分けして流れ作業だ」
「畏まりまして御座います」一斉に礼。
【鏡を入れた壺と蓋を持って、そこに並べ】
執事達、ずらっと一列。
【光輝神雷】光が走る。【どんどんいくぞ!】
♯♯ 闇神城 ♯♯
サクラは強い闇を感じる扉の前に立った。
(みなさ~ん、初代はここだよ~。
歴代魔王も集まるかもだから気をつけてね)
【サクラ、この結界は私が破壊します】
(最高神様にしか出来ませんよね?)
【サクラには何もかもお見通しなのですね】
(そんなことないよぉ)
神よりも神らしき子……頼りにしていますよ。
【では――】気を高める。【放ってください!】
サクラは、カルサイの光を結界に向け放った。
闇の結界が、光の粒と成って弾け散った。
刹那、部屋の中央の魔法円が、闇に覆われた。
【ひと足 遅かったな……】「まさか――」
【間もなく、この世は終焉を迎える!】
狂気染みた高笑いが響き渡る。
人神、魔神、白九尾が攻撃を始め、キン、ハク、フジが加勢し、闇の神を魔法円から離す。
(サクラ、この鏡か?)
(ありがと♪ ルリ姉♪)
アオが通路に退き、鏡を浄化し眠らせた。
(曲空できるよ!)
(よしっ!)(集めよぅぞ!)
クロ、姫、アカ、ルリが集める結界魔宝をアオが解除した。
(光、使えます!!)アオは部屋に曲空した。
(神様方、術を止めてくださいっ!!)
竜の神達が絆竜から出で、魔法円を囲む。
【無駄だ。大神だろうが、最高神だろうが、その術は止められぬ!】
(術は神様方にお任せする他は無い!
サクラ、俺達は初代魔王の方だ!)
アオは、部屋を浄化している慎玄と純慎を背に庇った。
(初代、あんまり力残ってないよ)
(そうだね、使いきったみたいだね)
【私を殺しても術は止められぬぞ】
「そんなに甘くない事くらい解っている。
改心して貰おうとは思っているけどね」
懐に曲空し、光を放って曲空。
光が飛び交う。
【目障りだ!】
強烈な闇の波動が拡がり、皆、壁に磔にされた。
【全く以て鬱陶しい!】
初代魔王の周りに新たな魔法円が現れる。
アオ、サクラ、白九尾から閃光が迸り、拡がり、闇の呪縛が弾け散った。
【還闇降臨!】天から闇黒色の雷が走り降る。
(自身に!?)(若返りやがった……)
【失せよ!!】再び波動に巻き込まれた!
闇に包まれ、身動きも出来ず、強い力に圧され、飛ばされる――
(アオ! サクラ! 起きろ!!)
ルリがサクラを心の手で引き寄せ、叫んだ。
(ルリ……ありがとう)(起きた~)
(どうやら異空間だ!)
(兄貴達、どこだろ……)
(かなり広範囲だ!)(やばっ!)
(サクラ! ルリ! 皆を押し戻すよ!!)
(アオ兄! ルリ姉! せーのっ!!)
光が闇の圧をジリジリと押し返す――
(アオ兄! 上げるよっ!!)(よしっ!!)
(もっかい! せーのっ!!)
光が炸裂し、闇を打ち消し、神々と兄弟と仲間達を闇神城へと押し戻した。
【小癪なっ!】
闇の神は、達した光を闇で弾いた。
♯♯ 中 ♯♯
匡「岩田様! 御無事で御座るかっ!?」
岩「此の程度、造作も無き事よ!!」
匡「武器は刀ではなく、この鎚で御座る!」
岩「虎縞津の若、其は何ぞ?」
匡「仏様の光が出る鎚で御座る!
竜神様が届けてくださったので御座る!」
大きく振り被って――
ドォォォン! 光が噴き昇った!
上に迫っていた魔物が、光に包まれ、
色を戻し、落ちた。
匡「魔物は全て操られし者で御座る!
『元に戻し、保護せよ』と、
静香姫様よりの御言葉で御座る!」
岩「そうか……して、鎚は幾つ有るのだ?」
匡「表門に山と積んで御座る!」
岩「兄者! 皆! 我に続け! 表門だ!」
屈強な男達は駆けて行った。
♯♯ 仁佳 ♯♯
睦「霧影殿、この投石器にて、壺を投じるので
御座いまする」
霧「睦月殿は凄腕の射手なので御座るな」
睦「いえ。この投石器にて放たば、壺は
魔物に吸い寄せられるので御座いまする」
霧「ならば早速! 皆、放つのだ!
……して、他国には?」
睦「我等、月衆が全ての国に伝えておりますれば」
♯♯ 東 ♯♯
嘉「珠姫、こちらに!」
珠「嘉韶様……」
嘉「ここに居れば大丈夫だよ。
浄化の結界の内だから魔物は入れない。
弐彌にも戦い方は伝えたよ。
それと……私の両親も連れて行くからね。
再婚して幸せになりなさい。帷長と」
珠「その事を……何故……」
嘉「無理矢理に嫁がされた……その事からね。
私の心が、もう少し強ければ、誰も不幸に
などしなかったろうに……。
帷長も、まさか珠姫が嫁ぐ事になるなんて
思っていなかったろうし、
弐彌――いや、今は帷韶だったね。
全ては息子の為にした事なのだよね?
だから本当の親子で過ごせばいい。
長く、辛い思いをさせてしまったが、
これから幸せを掴んで欲しいのだよ。
それを伝える為に来た。
もう二度と現れないよ。さようなら」
珠「疎まれているのだと思うておりました……」
嘉「そんな事……ただ、珠姫が誰かを一途に
想っているのは伝わっていたからね……。
再婚直後に子を宿していると知った時には、
正直、安堵したよ。その時に、継いだ後は、
私が家を出ようと決めていたのだ」
珠「だから嘉韶様は私に指一本触れず……
それなのに……私は……何度も――」
嘉「あの子達は、強く立派に育ったよ。
次の妖狐王になるそうだよ」
長「嘉韶……」
嘉「ああ、やっと来た。
私は戦いに行くから、珠姫を頼む。
これからずっと――」
嘉韶は微笑んで、結界から出て行った。




