闇神城5-六階、純慎
アオ達が戦っている相手は――
♯♯ 魔王城 六階 ♯♯
ルリは三体の魔王からの攻撃を躱し続けていた。
(アオ! 光を使ってもいいか!?)
(もう無理かい?)
(いや、反撃ではなく防御としてだ)
(なら、いいよ)
(さっきから何をしている?)(観察)(は?)
(こんな時に何を呑気にっ!)
(こんな時だからだよ。おかし過ぎる)
(ルリ、光を吸着するように、闇の牆壁!)
(ほら、魔王が発した雷が吸着されたよ)
(どういう事だ!?)(炎も、だね)
(こっちは謎解き出来る状況ではないのだ!
解りやすく言えっ!)
(だから、魔王からの攻撃も、偽りの姿に見えているんだよ。
おそらく、この魔王達は魔王じゃない)
(では誰だ!?)(兄弟だね)(はあっ!?)
(それは判ったが……この幻覚をどうやって解くか、だな……)
最初の光は見えた。
まだ闇の効果が不十分だったんだろうな。
なら既に、たっぷり吸い込んでしまったと
考える他は無いだろうな……。
神眼では……
始祖様と同じく、何も見えない、か……。
三人の気すら感じられないのだから
話しかけても無駄なんだろうな。
(サクラ!)
壁や天井は……
俺の光の球が、少し手前で跳ねているのか。
新たな結界といったところかな?
部屋の外に居るクロ達なら開けられるか?
(クロ! 姫!)
……やはり話せないか。
声を出すのは控えたいが、やむを得ないな。
「千里眼、クロに」――これも使えないのか。
出来るのかどうだか、だけど――
(始祖様、おもいっきり光輝神雷をお願いします)
【ふむ。おもいっきりだな】気を溜める。
【では、私も――】トパーズも加わった。
(ルリ、光明全開で、同時に浄癒閃輝だよ)
(解った)
【光輝神雷!!!】(浄癒閃輝!!!)
バンッ!
神の光が迸ったと同時に、扉が勢いよく開いた。
新鮮――とは言い難いが、風が吹き込む。
「お前ら! 何やってんだっ!!!」
クロの声と共に、今度こそ新鮮な風が吹き抜けた。
――浄化完了。
真っ白な世界から、視界が戻る。
(あ……クロ兄……)
(よく見ろサクラ! 自殺する気か!?)
(あ……アオ兄……なんで???)きょとん。
(ハク兄とフジには神眼が無ぇから しょーがねぇ!
けどサクラは持ってんだろ!!)
(アオ兄ごめんよぉ)うるうる。
(解っていたから大丈夫だよ)よしよし。
(アオ、解ってたのか?)
(まぁ、俺には、始祖様とルリが居るからね)
(反撃しないので、変だとは思いましたが……)
(仲間割れを仲裁してるのかと思ってたぜ)
(俺達、視覚を狂わされてたんだね~)
(おそらく、そうだね。感覚全て、だけどね。
互いの姿も、攻撃も偽りだったよ。
サクラは光で攻撃していたんだろ?
雷や炎に見えていたよ。フジの薬品もね)
(よく三人もの攻撃を避け続けられたな)
(それはルリだよ。
だから俺は安心して観察出来たんだ)
(ルリ姉、すごいね~♪)(褒めるなっ!)
(いや、俺達はともかく、サクラを避け続けるなんざ、大したどころじゃねぇぜ)
(いや……それは……)
(うん♪ ぜんぶハズレた~)
(そうですよね。全く当たりませんでした)
(…………)
(お~い、ルリさ~ん♪)
(あんまり褒めるから、隠れてしまったよ)
(可愛いなっ♪)(はい♪)(うるさいっ!)
(なぁ、遊んでるけど……魔王達、散ったぞ。
気配が消える直前、爆発的に気が膨れたけど、あれは何だったんだ?
城に入る前にも同じようなのあったぞ)
(クロ兄、まだいた~)(悪いかっ!)
(後で話す。紫苑殿の方、現魔王だね。行こう)
♯♯♯
アオ達は、白九尾、キン、アカ、慎玄が、慎玄の弟・純慎を依代としている現魔王と戦っている部屋へと移動した。
気と姿を消し、アオとサクラが先に入る。
アカが逸早く気付いた。
(アオ、終わったのか?)(逃げられてね)
(これを頼む)(うん)光を当て、解除。
(アカ、魔王は、掌握では無理なのかい?)
(いや。捕まるが、すぐ逃げる)(そう……)
「今度の魔王は鰻なのかい?」
【アオ……待っていたぞ】
「倒されるのを? 意外と殊勝なんだな」
【私と共に、闇の世界を創ろうぞ。
お前こそ、闇の王に相応しい】
「お前に好かれても困るだけだが、一応、褒めて貰っていると思っておくよ」
(アオ、そろそろ攻撃出来る間合いだ。
光も使えるぞ)(あ……使えていたね)
「ただし、そんな者になど成る気は無い!」
光の衝撃波を放ち、曲空。
それを合図に、サクラと白九尾も光を放った。
通路で待機していた兄弟が踏み込む。
(アカ、サクラ、同時に捕まえるぞ!)
掌握を伸ばし、掴もうとしたが――
(ん? いない?)(アオ! 今、左足首だ!)
(ありがとう、クロ)(右肩に! 腹! 頭!)
(チョコマカするね~)(見辛いし、困ったね)
(こうなったら)(追い出すのかい?)(うん)
(留尊鐸、至冀、神華侖。
技の対象は、魔王の依代だよ。お願いねっ)
【畏まりまして御座います、我等が王】
(アオ兄、せ~のっ)「蒼月煌!」
アオとサクラに掛かるべき光が、跳ね返されて現魔王に当たった。
【何をした!? これは――グオォォォォッ!!】
(出るぞ! 掴め!!)
弾かれるように、魔王が依代から出た。
(掴んだぞ)(俺も~♪)(よしっ、浄化!)
皆、神以鏡から全力で光を放った。
現魔王の絶叫が空間を切り裂く――
――そして、静寂……。
【滅されたのでは……無い……と?】
「とーぜんでしょっ♪」
浄化の光と聖水は、勢いそのままに、依代であった純慎に向けられた。
【あとは俺がやろう】(では、お願い致します)
コバルトはアオの手から浄化を放った。
(サクラ、結界魔宝が、まだ居そうだよ)
(うん……気配あるから探してるんだけど~)
(竜宝達、分かるかい?)
【壁の中、結界の向こうで御座います】
(あ♪ 見えたよ♪ 竜宝達、ありがと♪)
とっとことっ♪
(アカ兄、ここ♪ 魔宝 出して~)(うむ)
壁に手を入れる。
(これか?)(ありがと♪ 解除♪)
サクラは、その魔宝を見詰め……満面の笑み。
(神拒絶の結界魔宝なんだって~)上を指す。
【ならば出るか】
コバルトがアオから出た。
【あとは光拒絶を全て解除せねばならんな】
(サクラ、竜宝達に協力してもらおう)
(うん♪ 竜宝達、お願いね~)
【畏まりまして御座います、我等が王】
回収、解除、回収、解除、回収――
(なぁ……アオ、サクラ。
純慎さん、このままなのか?)
(あ……忘れてた)
(それじゃ、アオ兄♪ せ~のっ)「緋月煌!」
(なぁ、それって、自分にしかかけらんないヤツだよな?
オレにもかけてたけど……)
(そうだよ。
本来は自分にしか掛けられないんだけど、留尊鐸、至冀の璧、神華侖の相乗効果で、対象を変える事が出来るんだ)
(ふ~ん……って!
神禍乱って、魔王の魔宝じゃねぇのか!?)
(これじゃ、クロ。さんざん使ぅたであろ?
クロも呼んでおったではないか)
(あ……そっか、これか~)
(竜潔環も色が変わっておるぞ)
(竜血環!?)
(もぉみんな友達~♪)字も変わったんだよ~♪
(魔王作の魔宝達も、新たな道を模索して頑張ってるんだよ)
皆の環を交換する。
【全て見つけまして御座います、我等が王】
(クロ兄、掌握できない結界魔宝達、光ってもらうから回収してね~)
(ちょい待てっ)(うむ、参るぞ♪)
(姫も行くのか?)(当然じゃろ♪)
姫とクロが、消える、魔宝を置く、消える――を繰り返し、アオとサクラが解除していった。
(アオ。始祖様は、どちらにいらっしゃるのだ?)
キンが飛んで来た。
(結界が減りましたので、神様方をお呼び出来るのか、確かめに行ってしまわれました)
(そうか……純慎殿も、共に戦いたいそうだ。
二人共、浄化と回復を頼めるか?)
(すぐ動くのは――)
(解っている。しかし――)
【神達を連れて来たぞ】
コバルトの声で振り返ると、神々は既に純慎を浄化していた。
【とぉさま~♪】きゅるる~♪ 飛んで来る。
【あ♪ みんな~♪】キュルリが迎えに飛ぶ。
(えっ!? 子供達、どうして ここに?)
きゅる♪ きゅきゅるっ♪ きゅるるる♪
アオの頭や掌に乗る。
(楽しそ~だけど、どぉするの? アオ兄)
(来てしまったのなら仕方ないね。
鱗の内に入ってなくちゃならないよ)
きゅる♪
一斉にアオの体に、ぴとっ♪
(ひとりずつ兄貴達にお供させたら~?)
(そうだね。この子達の浄化の力は強いから、お護りにもなるね。
キュルリ、魔王の闇を教えてね)【は~い♪】
♯♯ 通路鏡を護る結界の上空 ♯♯
「鏡から強い光が出なくなっちゃった……」
ボタンと背を合わせて、神以鏡から光を放っていたミカンが、戸惑いの声を上げた。
「私もですわ……交換致しましょう」
ミカンの手を取り降下。
「だから沢山くださったのね~」
結界の内へ。
「でも……この調子ですと、すぐに全て尽きてしまいますわね」
「ボタン様、ミカン様。
差し出がましいかとは存じますが……」
「なぁに? 爽蛇さん♪ 遠慮しないでよ~」
「王子様方は、属性技で後押しされているようなので御座います」
「後押し……ですの?」
「はい。この鏡に込められておりますのは神様の光なので御座います。
その光を放った直後、属性技を放ち、勢いを増して攻撃を届けるので御座います」
「なんとなく解ったわ♪」
「試みてみますわ」
ボタンとミカンは新たな神以鏡を手に、再び上昇した。
カ【慎玄、純慎。貴殿方は天竜、魔竜の力を
強く受け継いでいます。
純慎が闇の神に捕らえられた事で、
無意識に慎玄は、純慎の属性を己の属性に
取り込み、相殺して封じ、純慎が、
闇の神の闇に染まるのを防いだのです。
その力は、孔雀様から受け継いだ神竜の力。
今、それら深層の力を開き、在るべき所に
戻しますね】
慎「宜しくお願い致します」合掌。
必死で理解しようとしていた純慎も
慌てて合掌する。
カ【孔雀様、二人をお願いしますね】
孔【はい!】
カ【釈迦様と弥勒様もお支えくださいますよ】
孔【あ……有り難き事……】
カ【急ぎ向かわねばなりません。始めます】
孔【はい!】
ドルマイがカルサイに並び、絆神達が
魔法円を囲んだ。
金【孔雀、お前さんが二人の真後ろじゃ】
孔【えっ!? そんな畏れ多い――】
金【お前さんの他に誰が居るのじゃ。
早うせぃ】
孔【あっ、はいっ!】
アオとサクラをコバルトが引っ張って来た。
始【左右だ】「またそんな……」「ねぇ」
【仲間の為だろ】「「……はい」」
カルサイとドルマイが声を合わせ、大神達が
重ねていく。アオとサクラも。
そして、神の光が二人に吸い込まれる。
カ【二人の属性は呼応します。
互いに高め合えるのです。
慎玄は光と雷、純慎は闇と火。
この数珠は、光明鐸と闇障鐸の形を変えた
ものです。アカと幽月が作りました】
二人の首に掛ける。
カ【慎玄の天性、治癒は既に開いています。
純慎も天性を持っていますよ。
では、上に参りましょう】




