闇神城1-突入
『魔王』というのも、ギンが勝手に付けた
呼び名でしたよね。
『龍神帝王』は、二代目以降らしいです。
重ねた通路鏡を通ったアオ達は、闇神城に向かって進んでいた。
神華侖では通れない新たな結界が現れた為、クロと姫は神眼で結界魔宝を探し、アカとルリは神眼と掌握で辺りを探り始めた。
(アオ、闇神城の内に新たな結界が生じたぞ)
ルリは掌握を城内へと伸ばした。
(今度は、どんな結界なんだい?)
(五階の結界は、光と闇を封じ、六階は……どうやら神――身体を持たぬ者を封じているようだ。
排除ではないようだが、人神様と魔神様が七階に閉じ込められ、戦っている)
(下から破壊出来そう?)
(そこまでは分からぬ。
六階の結界故か、会話も出来ず、気の色すらも確かめ辛い。
掌握は完全に妨げられている)
(城内を上がっていた魔宝を掴んだ)
アカが掌握で掴んだ物が、アオの目の前に現れた。
(どうしても神の光が必要なんだね)
(では、運びます)
白九尾が念網で包み、咥えて行った。
(アオ! 上の方で魔王らしき者の力が爆発的に膨れたぞ!
何人も いっぺんにじゃ!)
(下りて行ってるぞ! 神様 助けねぇと!)
目の前の結界が消えた。
(さっきの当たりだったね~♪ 行こっ!)
(先に向かいます!)
白九尾が戻り、即、跳んだ。
竜達も飛んだ。
進みながら、光臨鐘を埋めていく。
ルリは、その間も神眼と掌握で探り続けていた。
(こちらの曲空を封じた為に、魔王達も移動に制限が有るようだな)
(ルリ、見えているの?)
(力の移動は分かる。大きな力だからな。
魔王達も飛んで移動している)
(アオ! また通せんぼだっ!)
(また新たに生じました)白九尾も留まっている。
(サクラ、この結界は)(中途半端~♪)
(雷だけは大丈夫だね)(闇と共にならばな)
(あ、魔王が飛んで来ているね)(ふむ)
(彼の属性なんだね)(通るつもりなのだな)
(アオ兄♪ ルリ姉♪ やってみよ~♪)
アオとサクラは両掌を合わせ、術を唱え始めた。
二人各々の掌の間に闇の球が生じ、膨張した。
膨れた二つの球が重なり、ひとつとなった時、闇の球を包むように稲妻が走り、球の内に輝きを生んだ。
(いくよっ! せ~のっ!)
二人、両手を挙げた。
雷を内に保った大きな闇の球が浮き――
消えたかと思ったら、結界の向こう側に現れ、上昇を続け、結界の天に触れた瞬間、爆発した。
稲妻が結界を伝うにつれ、結界に亀裂が走り、上方から弾けて消えていった。
(サクラ……雷……って……)ホンモノだよな?
(クロ兄、もぉ驚かないんでしょっ)
(そっか……サクラだもんなっ♪)
話している間に亀裂は結界全体に及び、一気に弾けた。
(クロ! 進むのじゃ!)(おう!)
(念網で包んでおきます♪)
白九尾が、漂っていた神竜の魂を背に乗せた。
♯♯♯
聳え立つ闇神城の前にアオ達は並んだ。
(高っけーなぁ)仰ぎ見る。
(曲空封じ、早く なんとかしねぇとな)
(一階の奥に、扉の無い部屋が有るぞ。
魔王が居る……魔宝も有るよぅじゃ!)
(闇を封じた魔王とは連携していないのかな……そうでなければ罠だよね)
(いずれにせよ、行かねばならぬのじゃろ?
参ろぅぞ!)
姫を乗せたクロが扉に向かう。
(お待ちください!)
御札が飛び、クロを追い越した。
扉の前に、見えない壁が有るかのように、御札が次々と貼り付いた。
(其は……)(結界か?)(いえ、呪です)
御札の妖文字が紅く光り、拡がり、呪の壁が露になった。
(浄浄万象!)
慎玄の錫杖からの輝きが、雷の尾を引いて飛んだ。
呪の壁が城に向かって弾けて消え、その勢いは扉を吹き飛ばした。
白九尾が入口へと跳ぶ。
城の内を確かめ、(進みましょう)にっこり。
(闇封じは上の方だけだね)掌に闇の球。
(じゃあ、結界魔宝 探す~♪)
アカとルリが次々と結界魔宝を掴み集めた。
サクラも纏う闇を強め、集め始めた。
(あとは闇封じより上の階だ)(俺もムリ~)
アカは更に結界魔宝を二つ増やしたが、
(掌握を打ち消された)悔しさを露に仰ぎ見た。
(ひとまず竜の神様の所へ運びますね)
白九尾が念網で包み、咥えて跳んだ。
♯♯♯
白九尾は姿を消し、通路鏡を抜けた――
(楽しそうですね)紫苑が視線を落とす。
(直面する必要はありませんからね)
(母様が、ですよ)微笑む。
(そうね)ふふふっ♪
(計画していたのですか?)
(母様が、ですよ)うふっ♪
最外結界の穴を抜け、光臨鐘の輪の内に包みを置いた。
(竜の神様、お願い致します)念網を解除。
♯♯ 闇神城 一階 ♯♯
クロ、姫、アカ、ルリは、引き続き偵察を兼ね、結界魔宝を探していた。
集めた結界魔宝は、白九尾がせっせと運んでいる。
フジと慎玄は屋内の浄化をしている。
(あの部屋……光封じ強いね~。
でも、闇だいじょぶ~♪)
アオとサクラが穴を開き、キンとハクが入った。
(様子見る~♪)穴に掌を翳す。
姫も並んで掌を翳した。
(え?)(およっ)
姫を掴んでサクラが飛んだ。
(逃げてっ!!)(逃げるのじゃっ!!)
皆が入口に向かって飛んだ時、部屋の壁が飛び散った!
壁の破片は雷の尾を引き――
城の外壁に無数の穴を開けた。
(うわ~、部屋の向こう側、外が見えるよ~)
(うん。部屋の壁がすっかり飛んでしまったね)
(兄貴っ! イキナリ過ぎだっ!!)
(まだ……加減が……だな……)ぽりぽり……。
(お~い魔王、生きてるか~?)瓦礫 掘る。
(アレじゃねぇのか?)クロが外を指す。
随分遠くに、薄ぼんやりした光が二つ見えた。
フジが飛び、浄化を始めた。
(で、これ、また運ぶのか?)瓦礫の下から魔宝。
(こっちにも有るぞ)クロの足元にも魔宝。
(なら、俺が行くよ)(アオはダメだろっ)
(この階は光が使えそうだからね)掌に光を出す。
(だからキン兄 爆発したんだ~)きゃははっ♪
(始祖様なら途中も大丈夫だと思うから、お連れするよ)
結界魔宝を光で包み、抱えた。
白九尾が戻る。
(紫苑殿、珊瑚殿、上に向かってください)
アオは複製を消し、飛び去った。
♯♯♯
アオが通路鏡を抜けると――
「アオ様~♪」爽蛇がお茶を持って来た。
「ありがとう、楽しそうだね」
「はい♪」アオの耳に寄り、声を落とし、
「しっかりお護り頂いておりますので」
視線を上に向けた。
「狸玖大将とワン将軍も。なら、安心だね」
「また通られますか?」
「何度か紫苑殿も通った筈だけど」
「あの風……そうで御座いましたかぁ」
「姿を消していたんだね。
じゃあ、そろそろ行くね」
女性達に会釈して、結界の外に出た。
最外の穴を抜けると、竜の神々が、大勢の竜と魔人を浄化していた。
【アオ、何かあったのか?】
(始祖様をお迎えに――この方々は?)
【狐と狸が運んで来た、元・影と幹部だ】
(魔竜ですか?)
【ああ、属性が闇のみだ】
アオとコバルトが話している間に、持って来た結界魔宝は解除された。
(始祖様、闇神城一階は光が解放されました。
途中の通過は、俺の中でしたら闇障で大丈夫だと思います。
闇障鐸と勝闇も有りますし)
【ふむ。やっと乗り込めるか】
(嬉しそうですね)
【当然だろ。急ぐぞ】(はい!)
カルサイが寄って来た。
【コバルト、闇障を持つ神は貴方だけ。
皆様をお願いしますね】
【任せておけ。おとなしく待っていてくれよ】
神達が頷いた。
♯♯♯
アオが闇神城へと、再び通路鏡をくぐった事に気付いたのは爽蛇だけで――
「紫苑様、珊瑚様にソックリだったらしいのよ♪ 見たかったわ~」ひそひそ♪
「そうなんですか?」もちろん小声で。
「ね、桜華様♪ あら?」キョロキョロ。
「いらっしゃらないわね」
「上に……」「えっ?」「いつの間に……」
「ミカン様、参りましょう」「そうねっ」
「リリス様、通路鏡をお願い致します」
「はいっ! 私でも保てるのですね?」
「勿論ですわ。リリス様も竜なのですよ。
竜体になれないだけ。中身は同じですわ。
こちらに手を添えるだけですのよ」
ボタンが掌を翳し、光を放った。
「見えたかしら? この気を保てますわね?」
「はい♪ 頑張ります!」
「お願い致しますね。
ワカナ様、竜宝をお護りくださいね」
「すみません……私も竜なのに……」
「それは言わないのっ」チリンリン♪
ミカンは神以鏡を配った。
「もし来たら、練習の通りにねっ」
「ワカナ様、ルリ様からお預かり致しました結界竜宝ですの。こちらの結界を重ねているそうですのよ。
こちらもお願い致しますね」
ボタンは背後に置いていた箱を渡した。
「私達は、ちゃ~んと修練したんだから♪
ワカナ様でなければ、アカ様の結界を護れないのよ。それに道具の管理や補修なんて、私達にはムリなんだから~」
「それは……それなら……頑張ります!」
「すぐに戻るわねっ」「それでは」
ボタンとミカンは上昇した。
フ【あとひと押しよ! 高めてっ!
一点に集めてっ! そうよっ!】
光が迸る!
?【はあぁぁぁあ"あ"あ"ぁぁぐごあっっ!!!】
フローラが光を添え、支えた。
立ち昇った黄金光を、同じ発生源から追った
輝緋光が覆い、発生源へと引き込んだ。
?【……ありがとう、アンタ……】胸を押さえる。
フ【これで貴女も神よ】賑やかだったわね♪
?【とうとう成れたのだな……】深い息を吐く。
フ【でも、まだ調整しないといけないわ】
?【へ? まだなのかい!?】
フ【すぐに終わるわ。気を鎮めてね】
フローラは微笑み、優しい光で包んだ。
?【あ……この柔らかな気……まるでベニ姉……】
フ【ゴルチル様も、そう仰ったわ】ふふふっ♪
?【フローラ様は……ベニ姉の……?】
フ【ベニだけじゃないわ。貴女も私の子孫よ♪】
?【えっ!? あ……まさか、初代王妃様……】
フ【はい♪】うふっ♪
?【失礼を致しましたっ!!
これまでの数々の御無礼、どうか――】
フ【いいわよぉ、そんなことなんて♪
これからよろしくねっ♪】
?【宜しくお願い致します!】




