越結界4-鏡は任せて!
神竜達が呼んでいる『闇神城』と、
天竜達が呼んでいる『魔王城』は、同じ砦です。
魔王達は何と呼んでいるのでしょうね。
アオとコバルトが話していた頃、深魔界の最奥、真魔界との結界前では、ゴルチルとサクラが、キンに回復を当てていた。
(キン兄、どぉ?)
(もう大丈夫だ)起き上がる。
【キン、その力……解放すべきだと思うが?】
(この力は、私には制御出来ないのです)
(ゴルチル様、調整って、この力の事?)
【そうだ。サクラ、手伝え。
キンの背を支えていろ】
サクラがキンの背後に回り、支えると、ゴルチルは無言でキンの額に掌を翳し、雷を放った。
キンから雷が迸る!
(ったぁーっ!!)
サクラが自分の額を両掌で押さえ、踞る。
(ひどぉいぃ~)うるうる睨む。
(せめて前置きしてください)
少し離れた所からアオも睨んでいた。
【戻っていたのか】ニヤニヤ。
(始祖様と話している時でしたら、反撃していたでしょうね)
睨んだまま近寄る。
(キン兄さん、大丈夫ですか?)
サクラをなでなで。
(ああ……アオ、サクラ、少しいいか?)曲空。
(はい)二人も追って曲空した。
【オッサン、無茶するなよなぁ】
【彼奴等ならば何とも無い】
【だからだよ!
アオが発生源に反撃してたら、オッサン滅されてたぞ!】
【そうか……アオは御前の術技も得たのだな】
【そうだよ。気をつけろよな。
だいたい、天竜を一気に覚醒させるなんて、無茶にも程があるぞ】
【キンが使えずにいたのは、ガーネの力だからな。
神竜の力だ。覚醒させておくべきではないか】
【つったって! アオとサクラの事も考えろ!
これ以上の力なんて身体が保たないだろっ!】
【ふむ……】すこぶる嬉しそう。
【あのなぁ……】
三人が戻って来た。
(ゴルチル様、ありがとうございます。
直ぐ使えそうです)
【では、進むか】ニコニコ。
(先に俺だけ入ります)
返事を待たず、アオは穴をくぐった。
【サクラ、アオは……?】
(だいじょぶ~♪ クロ兄と話してる~♪)
(クロ達の所迄、行けたのだな?)
(うん♪ キン兄も心配しないで~)
アオが戻った。
(闇化甲を着ていれば、光排除も大丈夫です。
ただし、封じられていますので、光は使えません。
この鏡――六運鏡と三過鏡を重ねれば、その先に進めます。
キン兄さん、行きましょう。
サクラ、穴を保ってくれるかい?)
(俺――)
(サクラ♪)(え!? ラン……それに――)
(私直属、サクラ王 親衛隊よ♪)
(なんか恥ずかしぃんだけどぉ)アオにだけ。
(そうだね)くすくす♪
(貴女方は……)呪に掛かった女性兵達……。
(ルリお姉様、皆さんは闇属性ですので、ご心配なく)にっこり。
【それに、あの解呪で新たな力を得ていますから、力を合わせれば、その穴でしたら保てますよ】
ドルマイが、もう一団 連れて来た。
【彼女達は、私共が護りますので進んでください】カルサイ達も来た。
(でも、ランは――)
(解っております。
私の使命は国を護る事。
サクラ、ご存分に戦ってください)
虹藍は微笑むとドルマイの方に向かい、
(お願い致します)丁寧に頭を下げた。
ドルマイと虹藍の姿が消える。
(サクラ、行こう)(……うん!)
親衛隊が穴に手を掛け、拡げる。
アオ、ルリ、キン、サクラと続いて穴をくぐった。
(お待たせしました)
待っていた兄弟が一斉に振り返る。
そこまでの道が、ごく微かに光っていた。
(光組、大丈夫なのかぁ?)
(大丈夫ですよ、ハク兄さん)
(あの光は何だぁ?)
(『光の道』ですよ。
光臨鐘を埋めながら、ここまで来たんです)
(でも、封じられちゃってて、まだダメ~)
(それを解除しないと神様には入って頂けないんですよ)
(鎚もダメだぞ)(同じだからね)
(あれれ? アカ兄と桜華様は?)
(結界の内からなら破壊出来そうだからって、紫苑と珊瑚も、そっちに行ったぞ)
(なら、慎玄殿を運ぶのに爽蛇を連れて来るよ)
アオが飛んで行った。
そして連れて戻った。(曲空封じは困るね)
(アオ兄、困ってる感じな~い)きゃは♪
(慎玄さん、爽蛇に乗ってね~)
(ありがとうございます)
(あ♪ 結界ひとつ消えた~♪)
(鏡、整いました。通ってください)
(アカ兄、おかえり~♪ 桜華様は?)
アカが指した方向が煌めき、結界が またひとつ消滅した。
(では、進んでください)
(おぅよ♪)姫とクロが意気揚々とくぐる。
(アオ兄、その鏡……)
(うん。竜が術で保たないと通れないんだ。
だから、この結界が解除される迄、俺がここで保つよ)
(アオ、行かねぇのか!?)
クロが鏡から顔を出した。
(さっき迄と同じ、少し待つだけだよ)
(俺が残り、結界を成す)鏡を掴む。
(アカ! 掌握が要るだろっ!)
(ルリ殿が居れば大丈夫だ)
(アカは魔王と戦う時に盾を成さねぇと、他の誰にも出来ねぇんだぞ。
残るのは俺だ)ハクが鏡を奪う。
(オレ達なら、ここからでも供与できる!
光なんて持ってねぇから鏡から通るハズだ!
姫、それでいいよな?)(うむ!)
クロと姫が戻って来た。
(今 戦えない俺しかないでしょ)にこっ。
(サクラが残って どうするんだっ!!)全兄。
(兄貴達みんな行けば だいじょぶだよぉ)
(まさか、本気で言っているのではないだろうな?)
(恐いよ、キン兄~)
(鏡は私達が保ちます!)背後から声。
王子達、一斉に振り返る。
(ボタン!!)(ミカン!?)(ワカナ……)
(リリス! ここは人が来てよい所では――)
(竜人になったの。だから大丈夫よ)にこっ。
(竜人は竜では――)リリスの目を見て諦めた。
(護竜甲殿、リリスに展開お願いします)
【はい、フジ様】
(キン様、どなたが欠けても勝利は得られませんわ。
私達も備えて修練致しておりましたの)
(天性も術技も、この時の為に自分のものにしているの! だから――)
ミカンがハクから鏡を奪った。
(でしたら私がここに残り、結界を成します)
妖狐達が戻っていた。
(母様……それでは――)紫苑が桜華の袖を掴む。
(あなた達の方が、もうずっと強いのよ。
私はここで戦うわ。お行きなさい)
(若様、姫様、桜華様は私が御護り致します)
コギの軍も合流していた。
(コギ殿……では、お妃の皆様を宜しくお願い致します)
(アオ様。私も、こちらに残らせて頂きます。
リリス様をお乗せして飛ぶ事で御座いましたら出来ますので)
(うん……爽蛇、頼んだよ)(はいっ!)
(慎玄殿、私の背に)
(紫苑殿、お願い致します)
アオとサクラが、もう一度 術で鏡を繋ぎ直し、
(では……お願い致します)鏡を渡した。
(では、急いで終わらせるぞ!)(はいっ!)
キンを先頭に続々と鏡をくぐり、最後にアカが鏡を護る者達を覆う結界を張り、
(あとはお願い致します)
桜華に その結界を託し、鏡をくぐった。
「何を書いてるの?」
妃と婚約者達が座って頭を寄せ、地面に何かを書いているのを、桜華が覗き込んだ。
「あら、筆談?
この結界の中なら話しても大丈夫よ♪」
「そうですか……」顔を上げた。
「この結界、本当に強いんですもの♪」
ワカナが頬を染める。
「桜華様、お連れくださり、ありがとうございます」
「私は何も~♪
リリス様、とっても嬉しそうね♪」
「やっとフジ様の女の子姿が見れましたので♪
サクラ様で見慣れたとは言え、嬉しくって♪」
「そうよね~♪
ハク様も『俺は なれねぇ!』って逃げてばっかりで」あはははっ♪
「あの――」慌てた様子で珊瑚が顔を出した。
「お話しは大丈夫ですが、お声は小さめにお願い致します。
鏡から聞こえてしまいますので」
小さく会釈すると、サッと引っ込んだ。
「あら……」
女性達の楽しげな ひそひそ話が始まり、どうしても次第に盛り上がっていく。
「お茶とお菓子を持って来ればよかったわ~」
「クロ様から、この袋を頂きましたわ」
「何か美味しそうな いい香り~♪
焼き菓子?」ポリッ。「美味しいわ♪」
「この硬さ……絶妙ですね♪」
「爽蛇さん、何をなさってらっしゃるの?」
「お湯を。もう少々お待ちくださいませ」礼。
聖輝煌水で淹れたお茶は――
「とってもいい香り~♪」
「ほんのり甘いですね♪」
「やわらかい口当たりが素晴らしいわ♪」
「うん♪ 美味しいっ♪」
とても喜ばれたのだった。
(コギ、大丈夫?)
気付かれないよう視線を上げた。
(はい、桜華様。
相手は魔王ではなく、影ですので)
結界の外は戦闘中だった。
?【セレンテ様! どちらへ!?】
セ【襲撃なのよ!】
?【私もお連れくださいっ!】
セ【覚醒なさい! あと一歩なのよ!
フローラ様、彼女をお願いします!】
フ【はい! セレンテ様!】
?【行ってしまわれた……】
フ【集中なさいな。もうそれだけで覚醒よ。
そうすれば貴女も参戦できるわ】
?【そうか……はいっ!】




