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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
408/429

双青輝伝説9

 二人が凄い勲章を受けたのは事実です。

ですが、これは物語です。


 この辺りから大幅にカットされています。

ノーカット版? 私にも無理です。


「副長!」

部屋の扉が、いきなり開いた。


「スオウ、どうしたんだ?」


「勲章、拝ませてくれ!」


「いいけど……」出して蓋を開ける。


「凄いな……」掌を合わせる。


「本当に拝むなよ」吹き出した。


「やっぱり、二人は別格だよなぁ」


「そんな事――」


「あるからっ!」


「……ありがとう」


「それと、おめでとう」


「これの事?」


「いや、これもだが、班長との事だよ」


「ああ……」赤面した。




 全校総会には、軍のお偉いさん方も、けっこうな人数が来ていた。

それだけの勲章が授与されたという事だ。


 そんな御大層な場で、校長は、

「受勲した二人は、『双青輝』として、生涯を共にと誓い合っております事も、最高司令におかれましても、お認め頂いております」

と、前に立たされたままの二人が卒倒しそうな事を、サラッと言ってのけたのだった。




「良かったな。これで堂々と――」


扉を叩く音がした。


 ラピスだ。


『ブルー、遅くなって、すまぬ。いいか?』


 少し前、女性兵舎の方から歓声が聞こえていた。

おそらく、ラピスが囲まれていたのだろう。


「奥さんが来たな♪ お邪魔虫は退散~」

窓から出て行った。


「ったく~」クスッ。「ラピス、何で開けない?」


そっと扉が開く。

「ブルー? 誰か居たのか?」


「いや、見ての通りだよ」


「声が聞こえたようだが……気のせいか。

それは、何を書いているのだ?」


「うん、論文の手直しを少しね」

勲章も一緒に手早く片付ける。

「手合わせだろ?」


「いいのか? 忙しいのでは?」


「待っていたんだよ。行こう」

手を取って駆け出した。




 修練場への扉を開けると、誰の姿も見えないのに、何故か拍手で迎えられた。


「班長、副長、おめでとう!」


班員達が、わらっと現れた。


「副長を上げるぞ!」


「やめろ! スオウ! おいっ!」


ブルーは担がれ、胴上げされた。

ラピスまでもが笑っていた。

心の底から嬉しそうに、幸せを振り撒いて。



―・―*―・―



 月日は流れ――

一緒に居る事が当然だった二人にも、卒業の時が近付いた。


 卒業試験も難なく終えた二人は、いつものようにブルーの部屋に居た。


「ラピス、これからの事なんだけど……」


「研究するんだろ?」


「俺は、そうだけど。

ラピスの配属先の方なんだけど――」


「親に頼むつもりなのか?」睨む。


「そんな事は頼まれてもしないよ。

ラピスは、そんな事なんて望まないだろ?

そうではなくて、義務赴任の後でもいいから、また、双青輝しないか?」


「どういう事だ? 軍に戻るのか?」


「戻りはしない。

だが、この軍は王直属だから、王族の護衛も管轄している。

俺は専属医師として、ラピスは護衛として、共に働くのはどうだろうか?」


「そういう道が有るのか!?」


「有るんだよ。戦場ほど派手ではないけどね」


「それだと長く働けるよな!?」


「まぁ、そうだね。働きたいならね」


「そうか……それならば、ずっと一緒だな」


「その方向に進めていい?」


「頼む!」


「解った。

研究が終わったら、城の医師になるよ。

それで、ラピスを推薦する」


「ブルー、ありがとう!

そこまで考えてくれていたなんて!」

ラピスがブルーに抱きついた。

「もう、しっかり幸せだ」見上げ、微笑む。


「ラピス……」

ブルーも微笑み、しっかり抱き締めた。


そして二人は、ゆっくりと顔を寄せた。



―・―*―・―



 卒業式を終え、祝賀会の場から離れたブルーとラピスは、近くの森を歩いていた。


「ラピス、これからは、ひとりだけど……」


「解っている。無茶はしない」


「ラピスが強い事は、誰よりも俺が知っている。

でも、心配なんだ」


「大丈夫だ。

私は、生きる為に軍人になったのだからな。

容易くは死なぬ」


「俺が迎えに行くまで、何が何でも生き延びてくれよ」


「ああ。約束する」


ブルーは、ラピスを引き寄せ、抱き締めた。

「やっぱり、離れたくない。離したくない……」


「よせ。そんな、縁起でもない」


「ラピスは平気なのか?」


「勿論、寂しいが……必要な時間ではないか?」


「そうだけど……」


「それなら……ひとつ……よいか?」


「何?」


「今日だけ……女に戻って、甘えても……いい?」


「ラピスは、これまでも、ずっと女性だったし、これから、ずっと俺に甘えて欲しいよ!」


「明後日には任地に行かねばならぬ。

だから、今日だけだ」


「引っ越しの手続きは終わった? 荷物は?」


「全て終わっている。

それに、たいした荷物ではないからな」


「これから、俺の荷物を運ぶんだ。

一緒に来てくれ」

竜に戻り、ラピスを乗せて、宿舎へと飛んだ。


「挨拶は、明日また来よう。

ラピスの荷物、門まで運べる?」


「運べるが……」


「なら、すぐ戻るからっ」


 ラピスを女性宿舎の門前に降ろし、ブルーは自分の荷物を取りに行った。




 そして――


「荷物を乗せて、ラピスも乗って♪」


 はしゃいだブルーが空へと舞い上がり、楽しそうに、何処かへと飛んでいる。


「何処に行くのだ?」


「女の子に戻るんだろ?」


「そうだった……」


「戻ってないよ~♪」


「あれは……王都?」


「声もねっ♪ 王都だよ」


「それで、何処に?」


「着いたよ。俺の家」


「お屋敷!?」


執事達が嬉しそうに駆け出て来る。


「ただいま」


「お帰りなさいませ♪ ブルー様♪」


「あの荷物を、この住所に頼むよ」


「はい♪ 畏まりました♪」

「ラピス様♪ お手荷物をお預かり致します♪」


「え、あ、あの……ありがとうございます……え!? どうして私の名前を!?」


「当然でございますよ♪ 未来の奥様♪」


ラピスが真っ赤になって、立ち尽くした。

ブルーが慌てて駆けて来る。


「ラピス! すまない!

荷物の事をしていて――ラピス!?」

ブルーは、ふらりとしたラピスを支え、そのまま抱え、部屋へと走った。



―・―*―・―



「私は……ここは……」


 ラピスが目を開けると、治癒の光を当てていたブルーの心配顔が笑みに変わった。


「ブルーのお屋敷だったな……」


「驚かせてしまった? 大丈夫?」

そっとラピスの髪を撫でる。


「大丈夫だ。

やはり、凄いのだな、最高司令長官様とは」


「まぁ……そうだよね」


ラピスが起き上がる。

「挨拶をせねば――」


「居ないから、ゆっくりして」

肩を押して、横たえる。


「いつ、お戻りになるのだ?」


「ここには住んでいないから」


「はぁっ!?」


「ここは俺の家だ。両親は別の家に居るんだ」


「何があった――いや、話さなくてもよい」


「まぁ、これも、我が家の慣わしだよ。

孵化してすぐから、ここで暮らしていたんだ。

だから、親との思い出なんて無いんだよ」


「子を甘やかさない為……なのか?」


「それと、どうしても父が狙われるから……かな?

それでも、魔物なんて、日常的に見ていたよ」


「ブルー……」


「そんな顔するなよ。

不幸だなんて思っていないから」


「だから、強いのだな……」


「ところで、話し方が、いつも通りなんだけど」


「あ……」


「まぁ、いいか。

自然な方が、やっぱりいい」


「……うん」

一度、目を伏せ、真剣な眼差しを向けた。


「ん?」


「私も……聞いて欲しい……」

起き上がり、寝台に腰掛けた。


「無理はしなくていいからね」

並んで腰掛け、肩を抱いた。





青「卒業辺りの話も、よく出来ているよね。

  断片的には会話も正確だし」


瑠「しかし、話していた時や場所は合致

  していないぞ」


青「そうだね。卒業試験の後、俺の部屋で

  話す時には壁耳を止めていたんだけどね」


蘇「そうなのか!? 壊れたと思ってたよ。

  でも……どうして?」


青「大事な話をしようとしていたからね」


瑠「その一部が漏れていたようだぞ」


蘇「いや……それは……」


青「ああ、そうか。扉か窓だな?

  直接、聞いていたんだね?

  だから断片的なんだね」


蘇「う……窓だよ。遮光布を閉めていたから。

  アオの告白を班長が止めたから、

  物語の中だけでも成就させてやろうと――」


青「ありがとう」にっこり。


瑠「そこから膨らませたなら、本当に凄いな」


青「そうだね」


司「では、この場面も、実際には無かった

  のでしょうか?」


青「うん。告白しようとしたら、ルリから

  義務赴任が終わるまで待てと言われてね。

  何も言えなかったんだ」


蘇「あの時の断片的な会話と、後の出来事と、

  ごく最近になって、アオが王子様だと

  知ってから考えたんですよ」


青「家にも来ていたの?」


蘇「王子様だと知ってから、調べて行ったよ」


青「寄ってくれれば良かったのに」


蘇「あんなデカイ屋敷に近寄れるかよっ!

  ビビったまま見上げてたら、

  蛟の執事なのか? 出て来たから、

  慌てて逃げたよ」


青「今度は遠慮なく来てよ」


蘇「そ、そうか……」


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