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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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双青輝伝説6

 この辺りから、スオウの想像が ふんだんに

盛り込まれ、フジのカットが増えていきます。


「ブルー、今日も気を見てくれるか?」

いつものように、ブルーの部屋の扉を開けた。


ブルーが分厚い本を閉じ、立ち上がる。

「待っていたよ、ラピス」


 ラピスは、この、本から自分へとブルーの視線が移り、微笑みを受ける瞬間が好きで、昼食後、わざわざ自室に戻るのが習慣になっていた。


 ブルーは、扉から覗かせる、恥じらいを含んだラピスの笑顔が好きで、いつも、本など読むどころではなく待ちわびていた事を必死で隠して、余裕を見せようと頑張っていた。


 そんな二人は、それぞれ胸の内で、この瞬間の幸せを抱き締め、肩を並べて談笑しながら修練場に向かった。

既に、その光景は、誰もが知るものであった。


 修練場の上空で、二人が額を付け合っているのも日常化していた。

軍人学校に居て、その光景を見ていない者など皆無であったが、二人が放つ気迫の凄さに、色恋の噂が立つ余地など全く無かった。


 しかし、仲が良く、遠目には区別のつかない二人なので、色恋の代わりとして、年の離れた姉弟ではないか、という噂ならば、いくら否定しても後を絶たなかった――




「流石だね。もう十分、自在に操作できてる。

それじゃあ、この剣に気を込めてみて」


「これは?」


「俺の剣、蒼牙(ソウガ)の仲間で、朱牙(シュガ)。竜宝剣だ。

ラピスは属性が火だから、この剣が適している筈だ」


「私は火なのか……どうして判ったのだ?」


「気を見れば判るよ」


「ブルーは、水だと言ったな?」


「そうだよ」


「同じではないのか……」


「相棒としては、異なる方がいいんだ。

水が効かない相手に、二人共が水だと戦えないからね」


「そうか♪

しかし、鱗の色で決まるのかと思っていたぞ」


「鱗の色も無関係ではないよ。

ラピスなら、きっと青い炎が出る筈だ」


「ますます面白い。では、やってみる!」


ラピスが朱牙を構える。


「手に気を集めて……そう……それを朱牙に移す。

ゆっくりでいい。確実に込めるんだ。

どんどん溜めて……振り下ろし様、一気に放つ!」


青く煌めく炎の帯が、真っ直ぐ飛んだ!


「凄い……初めてなのに……」

呆然と炎を見送っていたブルーが呟き、慌てて掌を向け、その炎を打ち消す。


「出来たぞ!」「やったな! ラピス♪」

二人は抱き合って喜んだ。



 これで、ブルーと対等に戦える!

 ずっと一緒に!


「ブルー、この剣は――」


「もう、ラピスの剣だよ。

剣との相性も良いらしい」間近で微笑む。



 喜びの勢いで抱き合ったままだった二人は、どちらからともなく顔を寄せた。


唇が重なる……次第に深く……熱く……。


背に回した互いの手に、力が込められる。

決して離すまいと誓い合うように――



―・―*―・―



「アイツら……やっと収まったか……」

スオウは、遥か上空の二人を、目を細めて見ていた。


遠目に見れば、いつもの光景だが、放つ気が、いつもとは全く違う、そう感じた。


不意に二人が遠ざかった。

周囲の視線に気付いたのだろう。


「もしかして、人姿で飛んでったのか!?

浮いてるだけでも信じられなかったが……ったく! とんでもないヤツらだな!」

スオウは独り言ち、小さな点になった二人に微笑んだ。


 ま、あんな二人には、他に相手できる者なんぞ、

 到底、現れないだろうからな。

 要らぬ噂で、引き裂かれないように、

 俺が護ってやるよ。


 まったく、軍なんて、厄介な所だ。



―・―*―・―



 互いの想いを確かめ合った後も、戦場での二人は、それまでと全く変わらず――いや、むしろ、互いの持てる力を、限りなく引き出し合い、活躍し続けた。


 それだけでなく、気持ちの余裕からか、班員にも功を挙げさせるべく、戦場に引き出すようになっていた。

もちろん、粗方の敵を滅し、護れると確信しなければ、連れ出しはしなかったが。



 この日も、美しい瑠璃光の共演を見せつけた後、

「右翼は私に、左翼は副長に。付いて来い!」

班員を分け、従えて、敵中へと飛んだ。


ブルーとラピスは、各々、班員達を導き、戦い方を示しつつ、功を挙げさせていった。



 第一班全員で前進し続け、魔物が後退を始めた時、

「深追い無用! 待機!」

ラピスの声で、皆、留まった。


「また双青輝班かよ……」

近くの兵士から、そんな言葉が聞こえた。


スオウが呟いた『双青輝』という言葉は、今や、すっかり軍の中に定着していた。



―・―*―・―



 翌朝、鍛練の為に集合した時、校長が近付いて来た。


「ラピス=カムルス班長」


「はいっ!」進み出、敬礼する。


「午後一番に全校総会を開きます。

第一班は、呼ばれたら、前に整列してください」


「はいっ!」再び敬礼。


校長は微笑み、去って行った。



「いつものように、勲章授与しに来たんだと思ったんだが、総会って何だろうな……」

スオウが首を傾げた。


「班で二十五個目、新記録だからだろうね」

ブルーが微笑んだ。


「だったら、班長、今度こそ受け取ってくださいよ」

班員達も同意し、頷く。


「いや、卒業間際に、ひとつ貰えるか?

皆の名が刻まれた物を記念に頂きたいが、それまでは、皆の功だからな」


「それなら、副長――」


「俺も卒業間際がいいな。

皆に三個ずつは受けて欲しいからね」


 在学中に勲章を三個以上受ければ、配属時に二階級上がる事が出来るのだ。

ひとつでも一階級上がる可能性は高い。二つならば確実だ。

皆、ひとつで十分だと思っていた。


「だから、今回はスオウだよ」にこっ。


「副長……」


「さあ、鍛練を始めるぞ!

皆、目標は解ったな?」ニヤリ。


「はいっ!」



―・―*―・―



 案の定な勲章授与式の後、ブルーとラピスは校長室に呼ばれた。


「修練の邪魔をして悪かったね。

早速だが……二人は、卒業後、どうするのだね?」


校長の視線が、先ず班長(ラピス)に向いた。


「私は、義務赴任が有りますので」


「ああ、そうだったね。

返済は免除になったのだよね?」


「はい」


「お釣りが出る程、勲章を受けているからね。

ブルー君は、医師として働くのだね?」


「はい。研究を中断しておりますので」


ラピスが驚きの眼差しを向ける。


ブルーは、その眼差しに『安心して』と微笑んだ。


「私が知りたいのは、その後なのですが……」

二人を交互に見る。


「私が成人する迄、待たせる事にはなりますが、彼女との結婚を考えております」

全く躊躇う事も無く、ブルーは、そう答えた。


ラピスが、更に、目を見開く。


「年齢的な不安を感じさせる事が無いよう、彼女が、義務赴任を終える迄に、研究を成し遂げる所存です」

真っ直ぐ校長を見、澱み無く続けた。


ラピスが口元を押さえた。

その潤む瞳に、もう一度、ブルーが微笑む。


――が、


「あっ……」小さく声を漏らし、動揺を見せた。


「すまないっ! 勝手にっ!」

慌てふためき、おもいっきり深く頭を下げた。


校長は、ラピスの表情に目を細めて頷いた。

「これからも、誰にも有無を言わせぬ程の活躍を期待しますよ。

では、私の公認という事で、この続きは部屋で話し合いなさい」


二人は、敬礼ではなく、深く礼をし、

「「失礼致します!」」

そそくさと退室した。




「待って! ラピス!」


 染まってしまった頬を見せまいと顔を覆い、足早に去って行くラピスを、これ以上ない程、慌てて追って走るブルー。


 二人が建物から出ると、廊下の角から、次々と班員達が顔を覗かせた。


「あんな副長、初めて見た……」


「班長って、本当に女性だったんだな……」


「ああ、可愛かったよな……」


「うん。迂闊にも、そう思ってしまったよ」


「なぁ、スオウ、二人の歳を知ってるのか?」


「いいや、正確な所は知らない」


「副長って未成年で、成人は、まだ先そうだったよな?」


「そうだな……」


「なのに、医者って……どうなってるんだ?」


「さぁな……」


「スオウ、確かめてくれよぉ」


「ムリだっ! 消し飛ばされるのは嫌だ!」


「俺達なんか、近寄れもしないからさぁ、頼むよぉ。

気になって仕方ないからさぁ」


「私は、廊下で騒いでいる君達が、気になるのですが、どうかしましたか?」


一斉に、恐る恐る振り返る――


「失礼致しましたーーーっ!!」

サッと敬礼し、脱兎の如く逃げ出した。




「若さとは、眩しいものですね……」

微笑み、背を向けた時――


「再度、失礼致します。校長先生」


「どうしましたか? スオウ=バクテル君」


「ひとつ、伺ってもよろしいでしょうか?」


「二人の年齢なら、お答え出来ませんよ」


「いえ、その点は、班長と副長の逆鱗に触れてしまいますので、知りたくありません」


「そうですか。では、何でしょう?」


「二人が恋人である事は、認められたのですか?」


「私は、認めましたよ。

いずれ、軍の者達も認めざるを得なくなるでしょうね。

まぁ、二人が軍を離れれば、それこそ何も問題は無くなりますね」


「あの二人が……軍を……そんな事……」


「先の事は、誰にも分かりませんからね」


「そうか……医者なら、軍人なんかでいなくても……そうだよな……」


「友人として、見守ってあげてください」


「あ……はいっ!」





青「作中のスオウは、やたらと格好良くない?」

瑠「そうだな。だが、本当に噂から守ってくれて

  いたのか?」


蘇「他の班員に聞かれた時くらいは否定したよ。

  格好良過ぎる描き方をしたのは認めるよ。

  まさか売れるなんて思ってなかったんだ。

  これも変身願望ってヤツだろうな」


青「なりたいのなら、そうすればいいと思うよ」


蘇「出来ないからこその理想像だよっ」


瑠「そんなものなのか?」

青「さぁね……」


蘇「二人は、有言でも無言でも実行するけど

  普通は出来ないって! ねぇ?」


司「そうですよね」あはは……。


蘇「二人は凄過ぎるんだよ」


司「王室年鑑から、その凄過ぎるアオ殿下の

  足跡をご紹介させて頂きます。

  30歳(三人歳)で大学入学、32歳(三人歳)で軍人学校入学、

  と……俄には信じ難いのですが――」


蘇「軍人学校は50歳(五人歳)からだろ?」


青「無差別枠を作ってもらったんだ」


蘇「アオが入る為に、あの枠が出来たのか!?」


青「そうだよ」


司「その事も驚きでしょうが、大学の方も

  物凄くはありませんか?」


青「大学は年齢制限が無かったからね、

  すんなり入れてくれたよ」


蘇「そんなサラッと……」


司「50歳(五人歳)で大学院に、68歳(六人歳)で医学博士……と

  物凄い速さですね」


青「勉強は好きですので」にっこり。


蘇「普通は、やっと初等なのに……」


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