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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
404/429

双青輝伝説5

 実際のアオとルリがどうだったのかは、

第三章『大陸編』の『双青輝』1~5を

ご参照ください。


「ブルー、今日も頼む。

ん? また、勉強か?」


「ラピスを待っている間だけだよ。

修練場へ行こう」


二人、並んで修練場に向かう。


「ブルー、もうひとつ頼んでもよいか?」


「いいよ」


「内容も聞かずに返事するな」呆れ顔を向けた。


「ラピスの頼みを断るなんて有り得ないよ」


「そうか……」今度は照れた。


「それで、何?」


「勉強……私も、したくなった」


「軍人学校でも授業は有るよ。

俺でいいのか?」


「ブルーがよいのだ……」ぼそっ。


「ん? まぁ、いいか。

で、何処から?」


「中等は、軍人学校(ここ)で卒業した。

しかし、あれから随分と経ってしまった……」


「なら、中等の復習からだね。

そうなると、午後を分けないといけないね」


「門限いっぱいまで……頼めるか?」


「そのつもりだよ」


「ならば、修練場が使える時間は技を、その後、門限までは勉強を……よいか?」


「うん。俺は問題無いよ。

軍人学校(ここ)を卒業するまでに、少なくとも高等卒業資格を取ろうね」


「出来るのか? もう、そんなに期間が……」


「出来るから、俺は既に大学院を出てる」


「あ……」


「だから、その辺の事には詳しくなってしまった。

任せといて」


「では、宜しく頼む!」深く礼っ!


「危ないよ」しっかり腕を掴む。


「あ……」


 既に、上空に浮いていた。

ブルーはラピスを支え、微笑んでいる。


「始めよう」


「お願いします!」


「楽にして。気を鎮めて。

こっちで疲れきらないようにね」


ラピスは大きく頷き、目を閉じた。

額と後頭部が温かくなる。


 やはり、心地よい。

 それに……

 ブルーの気を真似るのは楽しくて、

 とても幸せだ……。


 気の型が変わったな。

 一歩前進できたのか!?

 嬉しい! ブルーに近付けた!


 もっと近付きたい!

 心の中に見えるブルーの手に触れたい!


 私はブルーと――


 私は……何を考えているのだ?

 これは、鍛練だ!

 ブルーは真剣なのだ!


 ブルーに近付かなければ、

 相棒ですら居られなくなるのだぞ!


―◦―


 いい感じだな。

 これなら、無属性技なら出来るかな?

 もう少し基礎型をしたら試してみよう。


 あれ? 無重(ムジュウ)が……止めてみるか?

 落ちるなら、すぐに発動すればいいんだから。


無重と浮翼(フヨク)という技を維持して、宙に浮いていたブルーは、無重を止めてみた。


 確かに浮いているな。

 ラピスが発動しているんだな。

 つまり、無属性技なら、もう出来るんだ。

 流石だな。嬉しくて仕方ないよ!


 相棒は、ラピスの他には考えられない!

 ずっと一緒に……居てくれるだろうか……?


 教えられる事が無くなってしまったら――


 見放されないように頑張らないと!

 この幸せは手放せないからな!



「ラピス」声が掠れてしまった。


囁かれたと思ったラピスの気が乱れ、落ち始める。

「あっ!」


ブルーが無重を発動し、留まった。


「驚かせて、すまない。

今、落ちたのは、ラピスの気が乱れたから。

ラピスが無重を発動していたんだよ」


「えっ……?」


「俺の気を真似ていて、維持していた無重も真似ていたんだよ。

無意識に、同時にね。

やっぱり、ラピスは凄いよ」


「本当に!?」

思わずラピスが目を開けると、額を合わせていたブルーの瞳が、睫毛が触れそうな程の近くに有った。


微笑んでいた赤褐色の瞳が、驚き見開かれ、慌てて離れた。


 あ……離れないで! 嫌っ!


ブルーの腕を咄嗟に掴んだ。「あっ……」


顔を逸らしていたブルーが、掴まれている腕を見た。


「目を開けてしまって、すまぬ。

続けてく……ださい」

ブルーが己が手を見詰めている事に気付いたラピスは、頬が染まり、つい俯いたのを、頭を下げたかのように誤魔化した。



―・―*―・―



 夕刻には、ラピスは自分の意思で無重を発動できるようになっていた。


「明日は、浮翼と同時に発動して、自分で浮けるように頑張ろうね」


ラピスは紅の瞳を夕陽に煌めかせ、大きく頷いた。

「宜しくお願いします!」


 とんでもなく可愛いっ!

 笑顔、眩し過ぎだって!


「だ、だからっ! 畏まらないでくれっ」


「そうか? 礼儀だと思うが……」


逸らしたブルーの顔を覗き込もうとすると、ブルーはラピスの背後に逃げた。


 夕陽の照り返しか?

 顔が赤かったが……。


 私の言葉に照れたのなら可愛いよな♪


 時々見せる可愛いさも堪らない!

 抱き締めたくな――


 いやいや、それは、昨日やらかして、

 嫌がられたではないか。

 ブルーは子供扱いを嫌っているのだからな。


 しかし…………触れたい…………

 出来る事なら、ブルーに包まれたい……

 ブルーとなら、私は――


 だからっ! 私! 真面目に――


 え……今度は凛々しい。

 だが、どうしたのだ?


―◦―


 赤面した顔を見られまいとラピスの背後に逃れたブルーだったが、ラピスが無言のまま動かないので、そっと様子を伺ってみた。

ラピスは、くるくると表情を変えながら、もの思いに耽っているようだった。


 やっぱり可愛い! 可愛過ぎるよ!


 どうしたら子供(ガキ)から男になれるんだ?

 どうしたらラピスに相応しい男に――


 その表情もいいな♪

 うん。それもいい♪


 ひとり占めしたい!

 ラピスと、ずっと一緒に居たい!


 ラピスが振り向いてくれるように……

 まずは、もっと強くなろう!


 あ……こっち向いてた……。



「ブルー」「ラピス」同時。


「「あ、何?」」揃った。


「「いや……」」また揃った。


「「…………」」互いに、相手の言葉を待った。


修練場の自由使用時間の終了を告げる鐘が鳴った。

二人は呪縛から解き放たれたように微笑み合った。


「次は勉強だね」


「引き続き、頼む」


「もちろん♪」降下した。




 二人は、夕食の時間も惜しむように掻き込み、ブルーの部屋に行った。


「そうだ! 少し待ってて」



 ブルーが出て行き、ひとり残されたラピスは、ブルーの本棚を眺めた。


 難しそうな分厚い本ばかりだな……

 医学書ばかりなのだろうか……?


背表紙を指でなぞる。


 えっ? ブルー……ああ、これは王子か。

 あの王子も医者なのか……

 王子も本を出すのだな……。


ラピスは、ブルー王子の著書を取り出してみた。


 表紙すらも読めぬ。


捲ってみたが、全く読めそうにはなかった。


 しかし、何故だろう……?

 持っていると落ち着く……?

 同じ名だからか?


 それだけで心に変化が及ぶ程、

 私は、ブルーに惹かれてしまったのか――



「お待たせ」


 ブルーが戻った。

手には大きめの箱を二つ抱えている。


「それは?」


「中等、高等の教科書だよ」降ろして開けた。


「何処から、持って来たのだ?」


「家から」中を探る。


「近いのか?」


「王都だよ」


「は? けっこうな距離だぞ」


「豪速でね。

はい、これ。ここから始めよう」


「そこに積んだ本は?」


「持って帰って読んでね」


「ふむ。この本も借りてよいか?」


「医師を目指すのか?」


「いや、よく眠れそうだからな」


「そういう事なら、最適な本だよ」



 そうして、優しくも厳しいブルーの講義が始まった。



―・―*―・―



「今日は、ここまで。

なぁ、ラピス、大学も視野に入れないか?」


「そんな時間が有るのか?

それに、金なんぞ無いぞ」


「選択の幅は狭くなるけど、軍事大学なら、ラピスだったら実技で優待生だよ。

それなら、授業料は必要無い。

試験の成績で免除になるからね」


「成績次第なのだろ?」


「心配無いよ。俺が付いてる。

軍人学校(ここ)を卒業するまでに、ある程度の単位を取得しておけば、あとは任地で、通信で卒業できるよ。

ラピスは軍幹部になるんだから、大学は出ておいた方がいい」


「そうか……私でも大学に行けるのか……。

私は……何もかも諦めていた。

ありがとう、ブルー!」抱きついた。


 ブルーは、嬉しさが圧倒的だが、色々な感情が絡み合って押し寄せ、戸惑いながらも、そっとラピスの肩に手を添えた。


「ブルーは……私の光だ……」


 感極まったラピスの涙を胸に受け止め、肩に添えただけだった手を、優しく包み込むように、その背に回した。





蘇「本当に仲が良いんだな……」


青「そうでなかったら婚約なんてしないよ。

  ね、ルリ」


瑠「う、うむ……」


蘇「でも、よく班長も王室に入ろうなんて

  決心できましたね」


青「ルリは元々王族だからね」


蘇「えええっ!?」


青「俺も面識は無かったんだけど、ちゃんと

  個紋が有るんだよ」


司「エレドラグーナ家の方でしたよね?」


青「はい」にっこりにこにこ♪


蘇「マジかよ……」


青「それはそうと、『無重(ムジュウ)』と『浮翼(フヨク)って?』」


蘇「アオから豪速(ゴウソク)って技を教えてもらって

  技ってものを知ったから、作ったんだ。

  よく人姿で浮いてたから、そんな技も

  有るんだろうな、と思ってね」


青「うん。技だけど……その名に変えようかな。

  そっちの方がいいよね」


瑠(本当は、どうしていたのだ?)

青(ヒスイの翼で飛んでいたよ。サクラが

  孵化するまでは、俺の背に有ったんだ)

瑠(では、神の翼で飛べると知っていたのか?)

青(ヒスイの翼は本物じゃない。それに、

  不思議な力をいろいろと持っていたんだ。

  きっとガーネ様が込めたんだろうね)


青「ああ、そうだ。

  頭に氷なんか乗せていなかったって

  ちゃんと言ってもらわないとね」


蘇「そうだった……すみません。

  ちょっと可愛げが欲しかったから……」


瑠「確かに、可愛げの欠片も無い子供(ガキ)

  だったからな♪」ふふっ♪


青「ルリ~」


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