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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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双青輝伝説4

 ブルーとラピスの心の声は、もちろん

スオウの想像の産物です。ですが、本当に

似たような事を考えていたのでは? と、

思ってしまいますよね。


「今日も最速の方法で頼む」


「どうしても?」


「続けて出来ない理由でも有るのか?」


「いや……」俺が……無理かも……「別に……」


「ならば頼む」


 ラピスの力を開いた翌日の午後、再び、ブルーは豪速で上空に昇った。


「目を開けないと約束して」


「ふむ。条件は、それだけか?」


「動かないで」


「解った。他には?」


「俺の気が、心で見えるようにするから、見ようと心がけて。それで真似てみて」


「そうか、目ではなく心で見る為に目を閉じておくのだな?」


「あ……ああ、そうだよ」

 良い理由を勝手に見つけて貰えたな。

 助かったよ。


「動かずにいる理由は?」


「集中する為だよ」


「解った」


 目を閉じて待つラピスの額に、ブルーは額を合わせた。

努めて気を澄ませ、平坦な基底状態と、属性発動の基本状態を、交互に繰り返す。


 ラピスが気を動かし始めた。

その動きは、ぎこちないが、確かにブルーの気を真似ようとしている。


 あと一歩なんだけどな。

 何か良い手はないだろうか……?


 でも、こうしていられるのは幸せだよな。


 ふと、雑念が過った時、鼻と鼻が触れた。

二人は、弾かれたように後退り、互いに、互いを見ないよう、見られないよう背を向けた。


ラピスが落ち始めたのを見て、ブルーが慌てて腕を掴む。

「すまないっ! つい、放してしまって!」


「いや、大丈夫だ。竜に戻ればよいだけ――」


振り返ったラピスが、固まり……吹き出した。


「何だっ? その氷は?」笑いが止まらない。


ブルーは、大慌てで、頭に乗せていた氷の塊を消した。

「俺の力の塊なんだよ!」真っ赤。

 本当は気を鎮める為なんだけど……。


「氷が、か?」


「俺は水だからな」ムッ。


「だから、目を閉じろと?」


「……それもある」


「戦う時には、乗せてないよな?」


「当然だろ。それだけ今、真剣で必死なんだよ」


「私の為、なのか?」


真っ赤なまま、俯き加減な横顔が、コクンと頷いた。

そして、恥ずかしげに背を向ける。


 普段は、あんなにも、しっかりしていて

 頼れる男なのに――


ラピスは、愛おしさに背を押されたかのようにブルーの背を抱き締めた。

ブルーの背がピクリと震えた。


「すまない。もう笑わない。

続けて貰えるだろうか?」


「……解った」


と、返事したのに、ブルーが動かない。


「ブルー?」


「その……離してくれないか?

俺……子供(ガキ)だけど、男だから……」


「あ……すまぬっ」今度はラピスが慌てた。




 再び向かい合い、ラピスが目を閉じる。

ブルーが額を合わせた。


 そうか……掌からも気を送れば、

 もっと見易いだろうな。


両掌をラピスの後頭部に添えた。


「あっ……見易くなったぞ」


「そう? 良かった」


 あまり気にしてないのかな?

 触れていられるのは……嬉しいけど……

 男としては見られてないって事だよな……。


 さっきのも、きっと……。

 どうしたら、子供(ガキ)から卒業出来るんだ?


―◦―


 集中しろ! 私!

 早く対等にならねば見捨てられるぞ!


 だが……先程は、もしかして

 私を『女』だと認めて貰えたのだろうか?

 だとすれば嬉しいのだが……。


 しかし……


 こうして、顔を寄せているのに、

 平然と気を操っているとは……

 しかも、浮いているという事は、

 技を二つも持続しているという事だよな。


 そうなると、やはり……

 私は、ブルーにとって『女』では、

 ないのだろうな……。


 ならば、せめて相棒として……

 見捨てられるなど、以ての外だ!


―◦―


 おや? 気の動きが良くなったな。

 これなら、簡単な技だったら、

 すぐに使えるようになるな。


 あと少し……誘導したいな……。

 心で見られるなら、

 心の手が伸びないかな――


「あっ! 今、光に触れたよ!」

「あっ! 今、手が見えたぞ!」


二人、同時に喜びの声を上げた。


その時、警報が鳴り響いた!


「要請だ!」「行くぞ!」「ブルー、氷!」

ブルーは慌てて氷を消し、豪速で降下した。



―・―*―・―



 戦場は、迷いの森の近くだった。

時空が不安定な森の影響を受ける場所で、巨大な黒い魔獣が暴れていた。

魔獣の周りには、無数の黒い影が、木々に身を隠しながら、王都へと、低空を飛ぶように駆け抜けていた。


 第一班は、地を先行している黒い魔物の群れへと降下した。

ラピスが、班員達を横に展開させている間に、ブルーは、剣から複数の水竜を放ち、木々を縫って飛ばせた。

水竜が通った軌跡が氷となり、複雑に絡む氷の網が壁を成した。


「網を抜けた魔物を頼む!」

ブルーは人姿になり、二層の氷網の間へと跳んだ。


 氷網で足留めを食らった魔物達を、青く煌めく波動が包み、消し去る。

氷網をよじ登ろうとする魔物は、水竜達が飲み込み、氷の塊として、地に落とす。

その氷の塊は、次の波動で、煌めきを残すのみとなる。


 地を駆ける魔物が減り、氷網の向こうに行こうかと、ブルーが考えていた時、氷網の間、ブルーの背後に、上空から有翼の魔物が降下した。


「ブルー! 後ろ!」


 ブルーは前を向いたまま――に見えていたが、剣の煌めきが走り、有翼の魔物が倒れた。

氷網の向こうにも、まだ魔物は迫って来ている。空からも降りて来る。


「スオウ! ここは頼んだ!」

班員達を制していた手を下げ、ラピスも氷網の間へと飛び、人姿になった。


「ブルー、背後は任せろ」


「ありがとう、ラピス」


 二人の剣の軌跡が、鮮やかに青く煌めく。

剣だけではない輝きが、確かに、そこには有った。



「人姿でも双青輝なんだな……」

スオウは呟き、制していた手を下げた。


そして、背後に向かって、

「あの邪魔にはならない、という自信のある者は加わればいい」ニヤリとした。


 誰も動かなかった。

おそらく、気迫に圧され、動けなかったのだろう。


「天馬に蹴られるどころの話ではないからな。

まったく、生き生きし過ぎだよ」


 戦場だというのに、魔物に囲まれているというのに、眩しい気を放ち、微笑み合う二人を見て、スオウは独り言ち、肩を竦めて微笑んだ。




 魔物の襲来が途絶え、二人は巨大魔獣の方へと、氷網を跳び越え、駆けて行った。


「あの高さを跳び越えるなんて……」


「班長と副長、手を繋いでなかったか?」


「繋いでたよな?」


班員達が口々に囁き合っている。


「副長が連れて跳んだんだよ」


「副長の跳躍力って……」


「あの若さで特級なんだ。

そりゃ別格だろうよ。

お前らも、班長決めで身を以て知ってるだろ?」


「そうか……そうだな」


 軍人学校では、恋愛は基本的に禁じられている。

例外は、王族や貴族の御子息、御令嬢様方だけだ。


 まぁ、例え禁じられてなくても、

 この男ばかりの中だ。

 ヤッカミが半端ないだろうから、

 上手く誤魔化してやるよ。


「で、スオウ、俺達はこのままか?」


「越えられるなら、行けばいい」


「飛べば行けるが、その先が無理だろ!

待つしかないかぁ」



―・―*―・―



 豪速で駆け抜けたブルーとラピスは、魔獣と対峙していた。

ブルーは目を閉じているが、魔獣を見詰め(・・・)ている。


 私にも波動が撃てたなら――


「ラピス、悔しいのは解るけど我慢して」

ブルーが早口で囁き、再び手を繋いだ。


「見える? 左脇腹が弱点だ。

手を離したら見えなくなるから覚えて。

俺が囮になる。攻撃してくれ」


 ラピスが頷くと、ブルーは高く跳び、魔獣の視界に入った。

そして、魔獣の鼻先を蹴り、更に高く跳び、魔獣の視線を上に向かせた。

魔獣が手を挙げ、ブルーを掴もうとする。


 今!!


ラピスが跳ぶ。剣の青い軌跡が煌めく。


魔獣が崩れ落ち、周囲の兵士達から響動めきが起こる。


ラピスが剣を収めると同時に、魔獣はサラサラと塵と化し、風に乗って煌めき消えた。


「ありがとう、ラピス」スタッと着地。


「ブルー、先程、見えたのは……?」


「うん。気が合う証拠かなっ」にこっ。


「う…………そ、そうか……」頬が染まる。





蘇「修練も医学博士もだけど、いったい、

  どんな手を使って突き進んだんだ?」


青「何も反則なんてしていないよ。

  俺の行動は王室年鑑に公表されているけど、

  年齢制限の無いものから突破していった

  だけだよ」


司「どなたか王室年鑑をお願い致します」


 記者が ひとり出て行った。


司「では、そのお話は王室年鑑が届きましたら

  その内容をご紹介させて頂きつつ

  進める事と致しましょう。

  この物語の主軸、恋愛面は、スオウ先生の

  想像力の賜物という事で。戦闘の場面も

  多いのですが、こちらは如何でしょうか?」


青「こんなに煌めいていた?」


蘇「そっちも無自覚なのか?

  互いには見ていなかったのか?」


青「だいたい背中合わせだったから……

  ルリは?」


瑠「同じくだ。互いの位置は、気で確かめる

  から、視界には入れていなかったな」


青「そうだよね。魔物しか見ていなかったよ」


蘇「二筋の青い軌跡がキラキラと舞い遊んで

  いるかの如く、だったよ。

  だから『双青輝』と付けたんだ」


青「そうなのか……」


蘇「近くで見た時には、班長の瞳に驚いたよ。

  燃えるように真っ赤だったから」


青「それは最近、俺も気付いたよ。

  綺麗だよね」


蘇「仲間としては綺麗だと魅了されるけど、

  敵なら、あの瞳だけで震え上がるだろうね」


瑠「誉めているとは思えぬが?」


蘇「誉めてますからっ!」


瑠「アオ。笑っているが、アオも輝いているぞ。

  アオの場合は、赤い瞳なのに青光が

  尾を引いているのだ」


青「そうなの? 知らなかったよ」


瑠「今日、改めて見ていて気付いた」


青「見てくれていてんだ」にこにこ♪


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