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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
397/429

原神竜1-受ける者と拒む者

 アオから離れたサクラは――


 少し時を遡り、コバルトが笛を手に、アオを訪ねるよりも前――


 ゴルチルから、アオには告げずに来るよう言われていたサクラは、一旦、魔竜王城に曲空した後、静寂の祠に戻っていた。


「ゴルチル様、なぁに?

ここって事は、アオ兄にはナイショの話?」


【そうだ。だが、アオも知っている話だ】


「ふぅん……なら、いいかな」座った。



 ゴルチルは、アオとサクラの命について、アオに話したようにサクラにも話した。


【だからアオは、サクラとの繋がりを切って欲しいと望んでいる】


「俺、絶っっ対!! イヤだからねっ!!」


【ふむ。ならばサクラが神に成るか?】


「俺が神に成ったら、アオ兄は死なない?」


【当然、死なぬ。それは確かだ】


サクラは目を閉じ、少し考えた後、真っ直ぐゴルチルを見た。

「ゴルチル様……俺が神に成るのは、アオ兄が死に直面してからでも間に合いますか?」


【サクラ次第だ】


「それは、どういう事ですか?」


【神に成る事を承諾していれば、間に合うだろう。

それさえ済ませておけば、サクラは既に覚醒しているからな。

あとは死に因って身体と魂が切り離される前に、自ら、もしくは、神の力を以て切り離すだけだ】


「では、今、承諾します」


【そうか。では、最高神との契約を結ぶ。

結べば、もう嫌だとは言えぬぞ】


「はい」


ゴルチルは光を放ち、いつもの術のものとは異なる気を放つ魔法円を描いた。


カルサイ、ドルマイ、ルバイル、ロサイト、そしてディアナと十数人の大神が現れた。


【全て、最高神か最高補佐神を経た、御前の先祖だ】


「こんなに……」やっぱりディアナ様もなんだ。


【サクラ、中央へ】


「はい。宜しくお願い致します」


カルサイがサクラの正面に立ち、

【それでは、サクラとの契約を始めます】

最高神の力を全開にした。


【天竜・サクラ=メル=シャルディドラグーナ。

貴方は、その身を失いし時より、神と成る事を受け入れ、神と成りし以降は、永遠に、この三界を護り、導き、祝福を与え続ける事を誓いますか?】


「はい。お誓い申し上げます」


神として成すべき事、守らなければならない事、してはならない事――


サクラにとっては、今と何が違うの? な内容が長々と続いた。


 そんな事でいいんなら、なんでアオ兄は

 あんなに拒むんだろ?

 何か無自覚に拾ってるのかな……?


 あの呪に縛られていた始祖様が

 これをおとなしく聞いていたのかな……?


そんな疑問も過りつつ、サクラの契約は進んだ。


【契約に反すれば、滅される事も受け入れますか?】


「はい。お受け致します」


【では、最高神に与えられし力を以て、その契約を成し、サクラを原神竜と認めます】


唱術――そしてカルサイが光を放ち、続いて、囲んでいる先祖大神達からも放たれた光でサクラは包まれた。


 心が洗われるって、こゆ事なのかな……

 とっても清々しくて心地いい……。


【サクラ、これで貴方は、正式に原神と成りました】


「原神……?」


【神と成る事が確約された存在です。

コバルトも、そうでしたから神に成れたのです】


 あ……聞こえるんだった……。


そして、ゴルチルを残し、大神達は消えた。


「ゴルチル様、今の俺に話すべき事は有りますか?」


【……有る。聞くか?】


「はい。お願い致します」


ゴルチルはサクラに話し始めた。



 その話が終わり、ゴルチルは神界に去り、サクラが祠から出た時、姫に呼ばれたのだった。



♯♯♯



 サクラとの契約の後、カルサイとドルマイは、アオとコバルトが居る芳小竜の森の家に行った。

そして、コバルトが呪を掛けられた日の不思議な体験を話し、コバルトの笛を聴き、神界に戻った。


【最高神様、この鏡をお確かめ頂けますか?】

魔王の鏡を改良している神々に呼び止められた。


【異空間を通るのですね。

迂回している気がするのですが?】


【はい。三種の鏡を重ねる事に依り、異空間を通る事を重ね、光拒絶の結界を越えるべく改良しました】


【試さねばなりませんね】


【カルサイ様、地下に参りますか?】

ルバイルが現れた。


【そうですね。ルバイル様、それは?】


神華侖(シンカロン)という魔宝です。

天界で改良している方から頂きました】


【あ、リジュンさんかしら?】


【ドルマイ様、ご存知でしたか】


【ええ、魔王に囚われていたのをアオとサクラが救出した際、解呪と浄化をしたのです】にこにこ。


【そうでしたか】にっこり。

【この神華侖も異空間を通る物です。

光に対する強固な結界を成している真魔界ですので、これも試したいのです】


【では、共に参りましょう】




♯♯ 竜宝の国 森の家 ♯♯


 アオとコバルトは、また話していた。


【なぁ、アオ。お前、どうしてそんなにも神に成る事を拒むんだ?

もしかして、大きな力を得た後で呪に掛かったら怖いからなのか?】


「明確な理由なんて分かりません。

ただ……どうしても嫌なんです。

神に成った後、呪に掛かったら……それは確かに恐ろしいです。

でも、それとは別に……ゴルチル様の御言葉をお借りするなら、無自覚に何かを拾っているのかもしれません」


【俺がアオの中に入っていた時に、呪と戦う俺の気持ちを、意識を失っていた瀕死のお前が感じ取っていたのかと思っていた】


「俺は始祖様が入っていた事なんて、言われるまで気づかなかったんですよ。

なのに、そこまでの事が出来る筈が――」


【お前……自分の力の大きさ、自覚無さ過ぎだ。

オッサンも両親も皆、あの時のアオは俺だと信じている】


「実際そうなんでしょう?」


【いや……そりゃ時々、必要な時だけは俺が動かしていたし、喋っていた。

だがな、いつもは俺は、ただの生命力――ん~、原動力かな? まぁ、そんな程度だったんだよ。

アオの意志――アオがしたい事や、話そうとしている事を実行していた。

ただそれだけなんだよ。


瀕死のお前は、神である俺をも押さえ込める力を持っていたんだ。

だから俺の呪も、その力を失っていた。

俺は、そう思うんだ】


「そんなに買い被られても……」


【買い被りなんかするかよ】ふんっ。

【中に入っていた俺だからこそ判るんだよ。

御先祖様からの正当な評価だ。

有り難く受け止めろ】


 あ……そういえば御先祖様だった……。


【お前なぁ……ちったぁ敬え!】


 いやいや、大いに敬っておりますよ。


【そういう所がだなぁ】はい?


【馬鹿にしやがって!】とんでも御座いません。


【ケッ!】


「もしも俺に、そんな力が有るのなら……俺は、闇の神の呪を消し去る事が出来る筈ですよね?

そうなったら、もう脅威はありませんよね?

その平和な世で、俺が神に成る意味って……いったい何でしょうか?」


【それは……平和を維持する為だろ。

お前だって両竜王国で、それをするつもりなんだろ?

それを三界全てに広げるだけだろ】


「神様は大勢いらっしゃるのに、何故、俺なんですか?」


【それは、お前より強い神が居ないから――】


「平和な世に、そんな力が必要なんですか?」


【それは…………こんなの俺には向かん!

オッサンとやってくれ!】


ルバイルが現れた。

【アオ、手伝ってくださいませんか?】


【ほら、頼られてるぞ。

だからアオが必要なんだよ】


【どうしたのですか? コバルト】


【何でも無いよっ】


「言い負かしてしまったようです」あはは……。


【負けてなんかいないからなっ!】


「子供達、始祖様を癒してあげてね。

ちょっと出掛けるから、いい子でね」


【は~い♪】きゅ~る♪


ルバイルとアオは地下魔界に向かった。





凜「コバルト様、異空間って?」


始【それは『ぱられる』の俺が話しただろ?】


凜「こっちはこっちだし~」


始【同じなんだが……仕方ないな。

  異空間は『宇宙』に当たるものかな?

  その中心には『時空(とき)(はざま)』という空間が在る。

  それに接して数多の『域』が在る。

  異空間を『宇宙』とするなら、『域』は

 『銀河』や『星系』に当たるだろうか。

  三界も ひとつの『域』だ】


凜「異空間は三界とは別の場所じゃなくて

  三界を含むんですね?」


始【そうだ。精霊達が住む『精霊域』は、

  ごく近所だ】


凜「『死者の国』も『域』なんですよね?」


始【そうだ。身体を持たぬものだけが入れる

 『魂域(コンイキ)』の ひとつだ。

  三界域のように身体の有る者と無い者が

  共存している域も在るが、そうではなく、

  いずれかしか存在しない域も在る。

  精霊達のように、身体が有るとも無いとも

  言える中間的なものも存在するんだ】


凜「異間平原の月に関して、お願いします」


始【あれは、他所の域の月だ。

  遥か昔、地下界に住む者は居なかった。

  あの二つの月の光で満ちていたからだ。

  つまり、地上界に魔人も魔神も住んで

  いたんだよ。その後、人と人神が生まれ、

  魔神が地下界の月に対して結界を成し、

  魔神と魔人の多くは地下界に移った、と

  言い伝えられているんだ】


凜「地下人界は?」


始【人は飛べないから天界に住まなかった

  だけで、何処にでも行こうとするんだよ。

  だから金虎のように天界に住み着いた

  人も、けっこういるんだ】


凜「地上魔界は、太古の名残なんですか?」


始【そうかもしれんが、後で生じたとも

  言われている。よく分かっていないんだ】


凜「で、青身神(アオミカミ)様は?」


始【俺の勝手な考えだが、他所の域の神

  なんだろうよ。三界には、そんな神なんて

  有り得ないからな】


凜「アオは?」


始【神の力を得た天竜だよ】


凜「見た目は、すっかり青身神様でしょ?」


始【確かになぁ……だが、俺の子孫だ。

  それは間違いない。青身神様は遥か昔、

  神竜が生じる前から存在しているんだ。

  アオである筈がないんだよ】


凜「コバルト様にとって、アオって?」


始【子孫だが……可愛い弟分で、良き友で、

  俺より遥か上をブッ飛んでいる奴だな。

  ひねくれているのが玉に瑕だがな】


凜「コバルト様、話し方は?

  なんだか中途半端ですよ」


始【あ……】


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