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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
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始祖様5-風で奏でる音色

 修行大好き兄弟は、更に強くなるようです。


♯♯ 竜宝の国 静寂の祠 ♯♯


 アオとサクラは、ガーネの力を引き出すべく互いの気を探り合っていた。


(だいぶ見えた気がする~♪)


(そうだね、試してみようか?)(うんっ♪)


 二人は外に出て、向かい合い、掌を合わせ、気を高め――


空に光を放った。


(うん、今までよりずっと放ち易いね)


(強くて速いの出たね~♪)


喜び合っていると――


【何だっ! さっきのは!?】


【襲撃かっ!?】


ゴルチルとコバルトが慌てた様子で現れた。


「どぉしたの~?」


【何やってたんだ? お前ら……】


「修行、かな?」「ちょっと試してた~♪」


【驚かすなっ!!】


【天が落ちるかと思ったぞ】


「そんな大袈裟な――」【大袈裟なモンかっ!】


「始祖様、また元気になった?」


【何だと!?】


「ん~とね、違和感なくなった~♪」きゃは♪


【お前ら……】ふるふるふる……。


「俺は何も言って――」【うっせーんだよっ!!】


「煩いのは始祖様――」【いい加減にしろっ!!】


「復活ですか? 呪が」【もう無いっ! ったく】


「完全復活のようですね。

まぁ、そちらの方が話し易いので、少し嬉しいです」


【皆してそう言うから、話し方だけ戻そうと努力してるんだよっ】ふんっ。


【コバルトは放っておけ】【何だとっ!】

【それより、先程のは何だ?】【おい!】


「ですから、修行と言うか、互いの力を引き出し合ってみて、試してみただけですよ」


「だいたい、ここに襲撃なんて~、あり得ないでしょ♪」

【お前ら無視かよっ!】


【コバルト、やはり性格的にも前の方が馴染んでいるのだろ?】


【んな事あるかよっ!】


【活き活きしているぞ】【するかよっ!】


(うん、活き活きしてるよね~♪)

(楽しそうだね、ゴルチル様も)(だよね~♪)

(どちらかと言うと、ゴルチル様の方が――)

(うんうん♪ 元気なった~♪)


「さっきの、もう一度やってみましょうか?」


【ん? ああ、やって見せてくれ】


もう一度、気を高め――放つ!


【お……】【あ……】




「あの……」




「使えないと? ……まだまだなんですね」


「もぉちょいガンバろ~♪

まだ有りそぉだからねっ♪」「そうだね♪」



 二人は話しながら祠に入った。



【オッサン……アイツら……】


【ああ、生身で出来るとは……】


【まだ伸ばす気だぞ。

止めなくていいのかよ】


【止めても無駄だろうな。

勝手に やってしまうだろ】


【……だろうな】




 祠に入った二人は、向かい合い、両掌を合わせたが、鏡のように首を傾げた。


「拾っちゃった?」「みたいだね」


「なんか、ちょっと休憩した方が、も~っと、できそ~だよ♪」


「そうみたいだね。少し落ち着かせよう」


「うん♪」


湧いてくる力を感じつつ、二人は座った。


「ね、アオ兄が、王族会って おかしいって思ったの、いくつの時なの?

フジ兄、モエギ様 知らなかったよねぇ?」


「フジは、孵化した時のご挨拶は、モエギ様にしたんだけどね。

まぁ、それ覚えていたら怖いよね」笑う。


アオが少し考える。


「そうだな……最初に相談したのは……フジがまだ孵化していなかったから、二人歳になったばかりだったかな」


「やっぱりアオ兄って凄すぎだよぉ。

その頃のクロ兄だったらイタズラばっかりしてたんじゃないの?」


「していたね」また笑う。「脱走と悪戯ばかり」


「アカ兄って、どぉだったの?」


「今とあまり変わっていないよ」くすくす♪


「それって……」


「うん。ひとり静かに、ごそごそ何かをずっと作っていたんだよ。


まぁ、会うのは、城に貴族のご子息・ご令嬢が来た際の遊び相手として呼ばれた時だから、クロと一緒でも、アカと一緒でも、俺ひとりみたいなものだったね」


「アオ兄は貴族の子供達に嫌なコト言われなかったの?」


「なかったね。

たぶん俺、怖がられていたと思うよ」


「あ、そっか~♪

鋭い刃みたいなアオ兄だったんだよねっ♪」


「誰だよ、そんな事 言ったの」あはははっ♪


「兄貴達みんな~♪」きゃはははっ♪



 ひとしきり笑った後、互いの真剣な眼差しが交わった。

「でも……サクラも孵化直後から記憶が有るんだろ?」


「……うん……有る。アカ兄は卵の中から、だよ」


「これも禁忌の副産物らしいよ」


「うん……神様みたく言うと、拾ってた」


「そう。やっぱりね」




「でも……それでも、俺は生まれてこれた事、今が有る事が、どうしようもなく幸せなんだ。

だから精一杯 生きたいと思っているんだよ」


「うん。俺も」


「禁忌で作られた命だろうが、神の如き力を得ようが、俺は天竜として生まれたんだから、天竜として生きたいんだ。

今の幸せを護りたい。

ただそれだけの、小さな願いの為だけに……」


「うん……俺も……おんなじ♪」


微笑み合い、頷き合った。


「そろそろ始めよう」「うんっ♪」


二人は両掌を合わせ、気を高め始めた。




【なぁ、あれ……身体は大丈夫なのか?】


【さぁな。だから、ここに隠れているのだ】


【いざとなったら助けるんだな?】


【いや……まぁ『助ける』でも合っているか……】


【まさか……魂だけ助けて、神にしようと――】


【しているが、何か文句でも有るのか?】


【なんか……卑怯感たっぷりなんだよなぁ】


【卑怯なものか。何でも救いたがる彼奴等には、神は天職だろ】


【嫌がってるのにか?】


【いずれ感謝してくれるさ】


【納得するかなぁ――ん?】


笛の音が祠に響き、心地よく流れる。


【どうしたのだ? 彼奴等……】


【隠れてるのバレてるんじゃ――】


曲空して目の前に現れた。


曲が終わり笛を下げる。


「あの~、見るのは かまいませんが、お静かに願います。気が散るので~」


【あ、すまなかった……】


【話も聞こえていたのだろう?

無茶して身体が弾けたら、即、神にしてやるからな】


「ご心配ありがとうございます。

ですが、光輪と翼を利用する事が、自在に出来るようになりましたので、弾けたりなど致しませんよ」


「笛 吹けなくなるのヤだからね~」


【言ってしまったのか?】コバルトを睨む。


【俺は何も言ってない!】睨み返す。


「気づきますよ。そのくらい」


「始祖様、笛 大好きなのに吹かないも~ん」


【……吹けないんだよ。身体が無いからな】


「でも、神様方は御身体が有るかのように振る舞われていますよね?」


【物に触れる事は、手に掌握を重ね、操る事でだいたい出来る。

だが、楽器を奏でるなんて……そこまで器用には出来ないんだよ……。


笛は、それ以前の問題だがな。

口も無けりゃ、息もしてないからな……】


「ため息は? よくしてるよねぇ?」


【それは身体が有った頃の名残だよ。

実際、息なんて出てはいない】


「息……だったら――」

アオは胸の辺りに笛を構え、指だけを動かし始めた。


【何をして――】音が流れ始める。


最初は上手く調整出来ない様子だったが、次第に吹いているかの如く美しい音色になっていった。


曲が終わる頃には、いつも吹いているままに奏でられるようになり――


最後の音は、余韻を残して消えていった。


「アオ兄、それ……どぉやってるの?」


「風を出してみたんだ」「属性の?」


「そうだよ。

始祖様も風属性をお持ちですよね?」


【ああ……知っていたのか……】


「俺が風を得た時、以前にも風技を使った事が有ると確信しましたから。

少し古い この痕跡は、きっと始祖様が俺に入っている間に、俺を護ったものだと、そう思ったんです」


【そうか……風で……】じっと手を見る。


【ありがとう、アオ】顔を上げ、笑みを咲かせた。


【ゴルチル様、二人を頼みます。

ちゃんと護ってくださいよ!】消えた。



「始祖様、嬉しそ~♪

話し方、行ったり来たりだね~♪」きゃはっ♪


【また救ったな……。

本当に神に成らないか?】


「嫌ですよ! さっきの聞いていましたよね?」

「俺、風なんて持ってないも~ん」


【風くらい与えてやる。

サクラになら喜んでな】ニヤリ。


サクラが後退り――逃げた。


「魔王を倒したら、俺からサクラを切り離してください。

それだけはお願いします」


【神に成るのだな?】


「それは別問題です。

失敗するなど、ゴルチル様ならば有り得ないんでしょう?

たとえ俺の生が短かろうが、俺は、この生を全う出来れば満足ですので」


【頑固だな】


「お互い様です」にっこり。





ロ【これで貴女も神に成れるでしょう。

  修行に励んでくださいね】


?【ありがとうございます!

  清々しくて、力が漲っています!

  セレンテ様! お願い致します!】


セ【目の輝きが変わったわね。

  では、再開しましょう】


?【はい!】




フ【ロサイト様、彼女の内に見える男性は……】


ロ【おそらく彼女の夫、神竜の血が濃い者】


フ【共心し、彼女に力を継いだのですね……】


ロ【彼女自身は天竜。夫は、彼女の神竜への

  再誕の為の力となったのでしょう。

  それ程までに、この二人の孫への想いは

  強いのですね】


フ【孫……あっ!】


ロ【フローラ様、見えてしまいましたか?】


フ【はい。この夫婦の強き想いと共に……】


ロ【私達も支えましょう。

  護りたい想いは同じです】


フ【はい。ロサイト様】


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