始祖様5-風で奏でる音色
修行大好き兄弟は、更に強くなるようです。
♯♯ 竜宝の国 静寂の祠 ♯♯
アオとサクラは、ガーネの力を引き出すべく互いの気を探り合っていた。
(だいぶ見えた気がする~♪)
(そうだね、試してみようか?)(うんっ♪)
二人は外に出て、向かい合い、掌を合わせ、気を高め――
空に光を放った。
(うん、今までよりずっと放ち易いね)
(強くて速いの出たね~♪)
喜び合っていると――
【何だっ! さっきのは!?】
【襲撃かっ!?】
ゴルチルとコバルトが慌てた様子で現れた。
「どぉしたの~?」
【何やってたんだ? お前ら……】
「修行、かな?」「ちょっと試してた~♪」
【驚かすなっ!!】
【天が落ちるかと思ったぞ】
「そんな大袈裟な――」【大袈裟なモンかっ!】
「始祖様、また元気になった?」
【何だと!?】
「ん~とね、違和感なくなった~♪」きゃは♪
【お前ら……】ふるふるふる……。
「俺は何も言って――」【うっせーんだよっ!!】
「煩いのは始祖様――」【いい加減にしろっ!!】
「復活ですか? 呪が」【もう無いっ! ったく】
「完全復活のようですね。
まぁ、そちらの方が話し易いので、少し嬉しいです」
【皆してそう言うから、話し方だけ戻そうと努力してるんだよっ】ふんっ。
【コバルトは放っておけ】【何だとっ!】
【それより、先程のは何だ?】【おい!】
「ですから、修行と言うか、互いの力を引き出し合ってみて、試してみただけですよ」
「だいたい、ここに襲撃なんて~、あり得ないでしょ♪」
【お前ら無視かよっ!】
【コバルト、やはり性格的にも前の方が馴染んでいるのだろ?】
【んな事あるかよっ!】
【活き活きしているぞ】【するかよっ!】
(うん、活き活きしてるよね~♪)
(楽しそうだね、ゴルチル様も)(だよね~♪)
(どちらかと言うと、ゴルチル様の方が――)
(うんうん♪ 元気なった~♪)
「さっきの、もう一度やってみましょうか?」
【ん? ああ、やって見せてくれ】
もう一度、気を高め――放つ!
【お……】【あ……】
「あの……」
「使えないと? ……まだまだなんですね」
「もぉちょいガンバろ~♪
まだ有りそぉだからねっ♪」「そうだね♪」
二人は話しながら祠に入った。
【オッサン……アイツら……】
【ああ、生身で出来るとは……】
【まだ伸ばす気だぞ。
止めなくていいのかよ】
【止めても無駄だろうな。
勝手に やってしまうだろ】
【……だろうな】
祠に入った二人は、向かい合い、両掌を合わせたが、鏡のように首を傾げた。
「拾っちゃった?」「みたいだね」
「なんか、ちょっと休憩した方が、も~っと、できそ~だよ♪」
「そうみたいだね。少し落ち着かせよう」
「うん♪」
湧いてくる力を感じつつ、二人は座った。
「ね、アオ兄が、王族会って おかしいって思ったの、いくつの時なの?
フジ兄、モエギ様 知らなかったよねぇ?」
「フジは、孵化した時のご挨拶は、モエギ様にしたんだけどね。
まぁ、それ覚えていたら怖いよね」笑う。
アオが少し考える。
「そうだな……最初に相談したのは……フジがまだ孵化していなかったから、二人歳になったばかりだったかな」
「やっぱりアオ兄って凄すぎだよぉ。
その頃のクロ兄だったらイタズラばっかりしてたんじゃないの?」
「していたね」また笑う。「脱走と悪戯ばかり」
「アカ兄って、どぉだったの?」
「今とあまり変わっていないよ」くすくす♪
「それって……」
「うん。ひとり静かに、ごそごそ何かをずっと作っていたんだよ。
まぁ、会うのは、城に貴族のご子息・ご令嬢が来た際の遊び相手として呼ばれた時だから、クロと一緒でも、アカと一緒でも、俺ひとりみたいなものだったね」
「アオ兄は貴族の子供達に嫌なコト言われなかったの?」
「なかったね。
たぶん俺、怖がられていたと思うよ」
「あ、そっか~♪
鋭い刃みたいなアオ兄だったんだよねっ♪」
「誰だよ、そんな事 言ったの」あはははっ♪
「兄貴達みんな~♪」きゃはははっ♪
ひとしきり笑った後、互いの真剣な眼差しが交わった。
「でも……サクラも孵化直後から記憶が有るんだろ?」
「……うん……有る。アカ兄は卵の中から、だよ」
「これも禁忌の副産物らしいよ」
「うん……神様みたく言うと、拾ってた」
「そう。やっぱりね」
「でも……それでも、俺は生まれてこれた事、今が有る事が、どうしようもなく幸せなんだ。
だから精一杯 生きたいと思っているんだよ」
「うん。俺も」
「禁忌で作られた命だろうが、神の如き力を得ようが、俺は天竜として生まれたんだから、天竜として生きたいんだ。
今の幸せを護りたい。
ただそれだけの、小さな願いの為だけに……」
「うん……俺も……おんなじ♪」
微笑み合い、頷き合った。
「そろそろ始めよう」「うんっ♪」
二人は両掌を合わせ、気を高め始めた。
【なぁ、あれ……身体は大丈夫なのか?】
【さぁな。だから、ここに隠れているのだ】
【いざとなったら助けるんだな?】
【いや……まぁ『助ける』でも合っているか……】
【まさか……魂だけ助けて、神にしようと――】
【しているが、何か文句でも有るのか?】
【なんか……卑怯感たっぷりなんだよなぁ】
【卑怯なものか。何でも救いたがる彼奴等には、神は天職だろ】
【嫌がってるのにか?】
【いずれ感謝してくれるさ】
【納得するかなぁ――ん?】
笛の音が祠に響き、心地よく流れる。
【どうしたのだ? 彼奴等……】
【隠れてるのバレてるんじゃ――】
曲空して目の前に現れた。
曲が終わり笛を下げる。
「あの~、見るのは かまいませんが、お静かに願います。気が散るので~」
【あ、すまなかった……】
【話も聞こえていたのだろう?
無茶して身体が弾けたら、即、神にしてやるからな】
「ご心配ありがとうございます。
ですが、光輪と翼を利用する事が、自在に出来るようになりましたので、弾けたりなど致しませんよ」
「笛 吹けなくなるのヤだからね~」
【言ってしまったのか?】コバルトを睨む。
【俺は何も言ってない!】睨み返す。
「気づきますよ。そのくらい」
「始祖様、笛 大好きなのに吹かないも~ん」
【……吹けないんだよ。身体が無いからな】
「でも、神様方は御身体が有るかのように振る舞われていますよね?」
【物に触れる事は、手に掌握を重ね、操る事でだいたい出来る。
だが、楽器を奏でるなんて……そこまで器用には出来ないんだよ……。
笛は、それ以前の問題だがな。
口も無けりゃ、息もしてないからな……】
「ため息は? よくしてるよねぇ?」
【それは身体が有った頃の名残だよ。
実際、息なんて出てはいない】
「息……だったら――」
アオは胸の辺りに笛を構え、指だけを動かし始めた。
【何をして――】音が流れ始める。
最初は上手く調整出来ない様子だったが、次第に吹いているかの如く美しい音色になっていった。
曲が終わる頃には、いつも吹いているままに奏でられるようになり――
最後の音は、余韻を残して消えていった。
「アオ兄、それ……どぉやってるの?」
「風を出してみたんだ」「属性の?」
「そうだよ。
始祖様も風属性をお持ちですよね?」
【ああ……知っていたのか……】
「俺が風を得た時、以前にも風技を使った事が有ると確信しましたから。
少し古い この痕跡は、きっと始祖様が俺に入っている間に、俺を護ったものだと、そう思ったんです」
【そうか……風で……】じっと手を見る。
【ありがとう、アオ】顔を上げ、笑みを咲かせた。
【ゴルチル様、二人を頼みます。
ちゃんと護ってくださいよ!】消えた。
「始祖様、嬉しそ~♪
話し方、行ったり来たりだね~♪」きゃはっ♪
【また救ったな……。
本当に神に成らないか?】
「嫌ですよ! さっきの聞いていましたよね?」
「俺、風なんて持ってないも~ん」
【風くらい与えてやる。
サクラになら喜んでな】ニヤリ。
サクラが後退り――逃げた。
「魔王を倒したら、俺からサクラを切り離してください。
それだけはお願いします」
【神に成るのだな?】
「それは別問題です。
失敗するなど、ゴルチル様ならば有り得ないんでしょう?
たとえ俺の生が短かろうが、俺は、この生を全う出来れば満足ですので」
【頑固だな】
「お互い様です」にっこり。
ロ【これで貴女も神に成れるでしょう。
修行に励んでくださいね】
?【ありがとうございます!
清々しくて、力が漲っています!
セレンテ様! お願い致します!】
セ【目の輝きが変わったわね。
では、再開しましょう】
?【はい!】
フ【ロサイト様、彼女の内に見える男性は……】
ロ【おそらく彼女の夫、神竜の血が濃い者】
フ【共心し、彼女に力を継いだのですね……】
ロ【彼女自身は天竜。夫は、彼女の神竜への
再誕の為の力となったのでしょう。
それ程までに、この二人の孫への想いは
強いのですね】
フ【孫……あっ!】
ロ【フローラ様、見えてしまいましたか?】
フ【はい。この夫婦の強き想いと共に……】
ロ【私達も支えましょう。
護りたい想いは同じです】
フ【はい。ロサイト様】




