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三界奇譚  作者: みや凜
第四章 魔界編
382/429

祝と呪4-渇望の呪、再び

 戦闘中ですが、祝列は出発しました。


♯♯ 地下魔界 ♯♯


 ここでも、魔王にされていた神竜の魂達への浄化が始まった。


【アオ、此奴は――】


(浄化が終わったら元に戻しますよ)


【可哀想に……】


(女性になる事の何処が可哀想なんですか?

ゴルチル様は、その御姿が嫌なんですか?)


 結構な美人ですよ。


【ふむ……否定する訳にはいかぬか……】

桜華とスミレをチラと見る。


【アオは受け入れているのか?】内緒話、開始。


(慣れましたよ。ずっとですからね。

それに、ルリは、きっとこっちの方がいいでしょうからね)


【達観しているのだな……】


(それはそうと、この魔王達は強くなかったと思うんです。

ですから――)


【天界に行くぞ!】(はい!)曲空!



――天竜王国、王都上空。


【何故? 闇の気は、ずっと向こうだぞ】


(いいえ、ここです)一点を睨む。


アオとルリは光の球を一気に膨らませ、その一点に放った。


そこに達した刹那、闇の穴が開き、影と思しき闇黒竜の群れが噴出した。


出た先を知らず溢れる影達は、光の球に捕らえられ、気絶し積み重なっていく。


噴出が止み、穴が閉じかけた時、アオは光の波動を放ち、穴の向こうを強烈な光で満たした。


(ルリ、まだ保てる?)(余裕だ)(お願いね)


今度はアオひとりで光の球を大きくし、別の一点に放った。


また闇の穴が開き――



――同様に捕らえられていく影達の噴出が止む。


(ゴルチル様、光を!)


ここまで瞬く間の事で、驚愕して見ていたゴルチルが慌てて光を放った。


闇の穴が弾け散る。


【アオ……お前は――】【お父様!】


(セレンテ様、この球をお願い致します)


 まだ来る筈……。


光の球を膨らませ――(そこだっ!)放った!


噴出を待つ間に下方を確かめる。


 祝列は始まっている。

 民に気づかれないようにしなければ……。


視線を戻す。


ゴルチルが光を放った。


(人数的には、この位でしょう。

少し待って何事も無ければ、この球を天亀湖にお願い致します)


【これは相殺か? 恐ろしい程に強力だな】


(今の俺の極大ですよ。まだまだです。

治癒の眠りも混ぜていますから、しばらくは静かですよ)


【御前って奴は……】言葉が続かず、ため息。


【お父様、私達が湖に運びます。

こちらをお願い致します】


(解呪をロサイト様に――)【はい、アオ様】


(いえ、『様』は――)【可愛い大神様ね♪】


楽しげな女神達は、光の球と共に消えた。


そして、魔王が現れた。




♯♯ 天竜王国 王都 ♯♯


 キンは竜宝艇の天台から、周囲に気付かれぬよう、視線を上空に向けた。


(キン様……)隣に並ぶボタンだけは気付いた。


(心配は要らぬ。

弟達にならば任せられる)微笑む。


(兄貴、上にいるのはアオか?)


(ゴルチル様もいらっしゃる。

それに、民には気付かれる事は無い。

神眼も届かぬ程、遥か上空だ)


(歯痒いよな……俺達だけ、こんな――)


(言うな。これが今、私達の成すべき事だ)


(ま、俺が行った所で役には立たねぇよな)


(そんな事は無い。

ハクはアオやサクラと同じ技が出せるのだからな。

私こそ行っても仕方が無い)


(んな事ぁ無ぇだろ。

使おうとしねぇ力が、たんまり有るのは知ってるんだぞ)


(それは……制御不可能な力だ。

使おうとしないのではない。使えないのだ)


(アオやサクラに聞こえたら、自分で蓋をするなって怒られっぞ)


(そうかも知れぬな……)




♯♯ 天竜王国 馬頭鬼村上空 ♯♯


(あと少しじゃ!)(おう!)


アカが掌握で影を掴み、クロが姫と合わせた力で神以鏡から光を放つ。

続けてサクラが相殺の球を被せる。


(アカ兄、闇と呪、だいじょぶ?)


(問題無い。魔王の呪だ)


 女性の兵士は、どこ行ったんだろ……。


(サクラ、そろそろ運べよ)(あ、うん)



 サクラが球を積み上げて湖に行くと、ロサイトが大きな光の球に掌を当てていた。

【これは……古の呪……解呪叶わぬもの……】


 女性の兵士達、見つけた!


(それ……もしかして、望みを叶えたら解ける呪?)


【あ、サクラ様。

この呪を御存知なのですか?】


(アカ兄とルリ姉が、前にかかったヤツなら知ってるよ。

誰にも解呪できないけど、望みを叶えたら解けるんだ)

サクラも球に掌を当てる。

(この匂い……おんなじ呪だよ)


【ひとりずつ叶えていくしかないのね……】


 魔竜軍にも、この呪については教育してたけど、

 眠らされて、かけられたんだよね……。

 なら、素直な望みだよね……困ったね……。


【先に男性を解呪してしまいましょう。

サクラ様、その方々を魔法円に】(うん)



 サクラが せっせと相殺の球を運んでいると、アオが数人入っている球を持って現れた。


(アオ兄、その女性達も?)


(うん、ルリが掛かったのと同じ呪に掛かっているんだよ)



【ロサイト様、こちらは、これで最後です】

ルバイルとバナジンが、魔法円に男性兵を包んだ相殺の球を数個 置いた。




 男性兵の解呪が終わり、ロサイトが近付いて来た。

【先ずは闇を浄化します。

その後で、おひと方ずつ出して頂けますか?】




 アオが大きな球の内に光を生み、ひとりだけをその光で包み、大きな球から出す。

(ロサイト様、お願い致します)


 ロサイトが光を当てると、その女性は目覚めた。


【貴女の望みは?】優しく問いかける。


「ああ……女神様……叶えてくださるのですか?」


【はい。なんなりと】

慈愛に満ちた微笑みで女性兵を包み込む。


女性兵は恥じらいながら俯き、

「あの……本当に、どんな事でも?」

躊躇う視線だけを上げた。


 う~ん……これは時間かかるね……。


ロサイトも、そう感じたらしく、女性兵の額に掌を翳し、光を当てた。


女性兵は一瞬 動きを止め、頬を染め、

「わ……サク……」口を押さえモゴモゴ。


抗っているようだが、両手は口から離れた。


【もう一度】微笑む。


「私、サクラ王様をお慕い申し上げております。一度で構いません、御側に――」


(サクラ、呼んでいるよ)(やだよぉ)


【サクラ様、こちらに】にこにこ。


逃げようとしたサクラをルリが掴んだ。


(この人数だぞ。早く済ませろ)(や~ん)

(解呪だ。虹藍様には言わぬ)(うっ……)

(ちゃんとしろ、サクラ王)(ひどぉいぃ)


ずるずるずるずる……。


それでも女性兵の前に立つと王になる。

「サクラ王様……」ぴと。


(どぉしたらいいのっ!?)

(抱き返してやればよいのでは?)

(ふええっ!?)


恐る恐る背に手を添える。


女性兵が幸せそうにサクラを見上げ微笑み、サクラがどうにか微笑み返すと、うっとりと胸に頬を寄せ、目を閉じ――



――ハッとして顔を上げた。

「え? ……失礼致しましたっ!!!!!!」

跳び退いた勢いで、よろける。


サクラがサッと手を取り、背を支えた。

「お怪我はありませんか?」にこっ。


「は、はいっ!! 国王陛下っ!!」敬礼っ!


 ひとり目、やっと解呪終了。

女性兵の背後に現れたルバイルが眠りで包み、連れて行った。


【アオ様、次の方を】「はい」




 そして、二人目が目を覚ます。


【望みを。なんなりと】額に光を放つ。


「並の男より遥かに厳つい私ですが……お姫さま抱っこをされてみたいのです。

その……サクラ王様に……」ポッ♡♡


(またご指名だよ、サクラ)くすくす♪


(ねぇ、何の罰なのぉ? コレ……)


 俺、泣きそぉだよ……。





始【お祖父(ルバイル)様、どうなさいましたか?】


ル【先程の事は、全て夢だった、という事で

  良いのでしょうか……?】


始【それで良いのではありませんか?】


ル【呪は、完全に解けたのでしょうか……?】


始【『夢』にしてしまうと、呪が残っていれば

  再び活性化する……可能性は有りますね】


キ【おてつだいするの~♪】ふよふよよ~♪


ル【キュルリ、この方には、もう微塵も、

  呪は潜んでおりませんか?】


キ【んとね~……ぜ~んぜん ないの~♪】


ル【そうですか。ありがとう、キュルリ】


キ【うれし~の~♪】きゅるっきゅ♪


ル【では、夢という事で】掌を翳す。


兵「……ぁ…………は? 神様っ!?!?」


ル【もう大丈夫ですね。貴女は助かったのです。

  ですが、体力を消耗しておりますので、

  もう暫く、このままお休みなさいね】


キ【ねんねなの~♪】なでなで♪


兵「あ……可愛い」手を伸ばしかけ、止まった。


ル【神の使いです。触れても構いませんよ】


 浄化と回復の光に包まれている女性兵は、

キュルリを抱いて安堵し、眠った。


始【俺より役に立つんだな……】


ル【コバルトも可愛いですよ】ふふっ♪


始【お祖父様ぁ、それはないですよぉ】


ル【私にとっては、いつまでも可愛い孫です】


ロ【私にとっては、ルバイルが可愛い曾孫よ♪

  二神(ふたり)共、次を手伝ってくださるかしら?】


始&ル【はい♪】


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