祝と呪3-襲撃
儀式が終わりましたので、次は王太子の
成婚御披露目祝列です。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
コバルトとゴルチルは、アオに絡む話をし続け、夜を明かした。
「ゴルチル様、始祖様――」
【ぉわっ! あ……アオ、もうすぐ祝列だろ。
何故こんな所に来たんだ?】
それまでゴルチルと話していた内容が内容だけに、現れたアオを見て、コバルトが飛び退って言った。
【こちらの事は私達に任せろ。
御前という奴は休みもせずに……。
身体が要らないと言うのなら、いつでも神にしてやるぞ】
ゴルチルの方はニヤニヤと嬉しさを溢れさせている。
「また、それですか……いい加減 諦めてください。
少し……何か引っ掛かる感じがしたから来てみたんですよ」
【引っ掛かるだと?】
「嫌な予感と言うか……」
コギが現れた。「お話しの所、失礼致します」
「何か有ったんだね?」
「はい。魔竜軍が、交替の為に到着する筈の刻を過ぎましても――」
「やっぱり来てないの!?」「サクラ……」
「国境は越えてるんだ。
結界 開けて通ってる痕跡あるから。
でも、第二通路の警備兵が見てないって」
【真魔界の結界に、急げ!】「はい!」
――真魔界結界前。
【ルリ、単独で探るんだ】「はい」
ルリが複製から掌握を伸ばす。
(眠っている者が――確かに一個中隊程の数だ)
(呪は感じる?)
(強い闇と……呪も有るな)
(そのまま探っていてね。無理はしないでね?)
(解っている。任せろ)
「一個中隊、眠らされているようです。
闇と呪も感じるそうです」
「釈迦様と弥勒様 連れて来る!」曲空!
【まだ踏み込める態勢ではないからな。
未然に防ぐのは無理だろう】
【ゴルチル様、最高神には報せました。
神竜でなくても影には出来る筈なので、影にされ、現れた場所に神を向かわせるそうです】
【私は、ここで待機する】
【――伝えました。
俺は、闇を感知し易いように、人界と天界の境界に行きます】
コバルトは消えた。
【王都の祠にはセレンテ達を向かわせた】
「『達』ですか?」
【娘と娘が指導している女神達だ。
王都を囲ませる】
「ありがとうございます!」
(アオ、部隊は二分されているぞ。男女別だ)
「女性は別にされているようです。
古の呪を使う気なのでは?」
【マズいな……それは……】
【ゴルチル様、アオ様】「アオ兄、どう?」
「釈迦様、弥勒様、御手を。
ルリが見ている状況を流します」
サクラにも手を差し伸べる。
【驚く程に鮮明なのですね】
【眼前の、この結界……通る事は叶いませんが、その向こうは大丈夫そうですね】
「でしたら――」「うん」
アオとサクラは闇を纏い、穴を穿った。
「この結界を越えるだけですが、この向こうは如何でしょう?」
弥勒が穴に掌を翳し、確かめる。
【無属性の私共ならば進めます】
【この糸の先をお持ちください。
互いに通じる事が叶うでしょう】
釈迦はアオに念糸の片端を渡した。
釈迦と弥勒は穴をくぐった。
念糸にルリの神眼と掌握の情報を流し続け、念糸から得た情報をゴルチルに伝えていると――
(男達が消えたぞ!)
(釈迦様、ルリの声は聞こえましたか?)
【はい。こちらも感知致しました】
サクラは曲空し、地下魔界から出た。
『アオ兄、人界の――あっ、消えた……天界と下層神界だよ!』
千里眼からサクラの声。
【神を向かわせた】
『天界は……王都じゃない。
動いてる……ハザマの森に向かってる?
次を引き込むつもりかも』
【神界はカルサイ達が応戦している。
キンには伝えた。サクラも天界に行け】
『はい!』
(女性も消えたぞ!)
(釈迦様、弥勒様! 退いてください!)
「ゴルチル様、地下も同時襲撃される可能性が有ります。ですから――」
【魔王だ! 先に行く!】
ゴルチルが消え、直後、釈迦と弥勒が出て来た。
「深魔界、結界付近に魔王が現れました」
【しかし、こちらも、ですね】身構える。
♯♯ 天界 ♯♯
サクラが、移動する闇の気の行く先に曲空すると、馬頭鬼族の村に、アカが結界を成した所だった。
(近くの町や村、神殿の結界は完了した)
(アカ兄、ありがと)
(結構な数じゃな……)
(しかも、呪を感じるぞ)
(クロ兄、姫! 祝列もぉすぐでしょっ!)
(キン兄様とハク兄様だけ残れば祝列は成立します)
(だよなっ)(フジ兄も来ちゃったの!?)
(サクラ! 地下からも闇を感じる!
アオが行っておるのじゃろ? 援護せよ!)
(でも、この影達……魔竜軍なんだ。
俺が助けなきゃ――)
【ならばサッサと片付けるぞ!
サクラ! 戦えぬ状態なら、どっかにフッ飛ばすぞ!】
(始祖様……俺、大丈夫ですからっ!!)
【よしっ! 行くぞ! 皆、展開しろ!】
(はい!!)
♯♯ 地下魔界 ♯♯
(ゴルチル様、魔王は五体、バラバラに現れていますね)
【最初の奴は、私が行ったら桜華の軍が応戦していたからな。
次に来ている】
(俺も、真魔界の結界付近のは、釈迦様と弥勒様にお任せしました)
【ひとりなのか!?】
(いえ、スミレが来ましたので大丈夫です)
【無理はするな。
撤退させればよいのだからな】(はい)
(ルリ、複製は任せたよ)
(ああ。そう心配するな)
(スミレ、魔王の動き、止められる?)
【任せて!】(なら、速攻だ!)(うむ!)
三人、次々と光を放ち、魔王が避けるばかりになった所をスミレの光が捕らえた。
(蒼月煌!!)
アオとルリが持つ竜宝に、蒼光が駆け抜け、魔王を包んだ。
魔王が声を上げる間も無く、色を戻すと同時に、闇の力を失い、へたり込んだ。
相殺と浄化の光で包み、牆壁で覆い。
「すまない。これは技だから。
後で戻すから待っていてね」
次へと曲空した。
♯♯ 天界 ♯♯
アカが神界にまで届く巨大な牆壁を成し、駆けつけた神々が、そこに光を注いだ
(ここで食い止めるぞ!)(あいなっ!)
【バナジン、ルバイル、サクラ。
動きが鈍った者を相殺で包んで湖に運んでください。
他の方は、浄化の光を当ててください。
コバルト、こちらは任せましたよ】
ロサイトは、この場の指揮をコバルトに託し、
【フジ、手伝ってください】(はい!)曲空した。
――天亀湖。
【湖の水を対魔王の神聖光輝に変えてください】
(えっ……?)
【大丈夫です。
フジの薬は、全て優しい材料ばかり。
魔王の闇と呪には強く作用しますが、その他のものにとっては、栄養豊富で、とても美味しい水です。
植物の神である私が保証します】にこっ。
(はい♪ では――)
フジは両手を湖に浸け、気を高め、全てを対魔王の薬を溶かした神聖光輝に変えていった。
広大な湖が青みを増し、煌めく。
ロサイトは上昇し、湖面いっぱいに巨大な魔法円を描いた。
蒼く清浄な気が立ち昇る。
サクラが相殺の球をいくつも掲げて現れた。
【全て魔法円に】(はいっ!)置いて曲空。
【フジ、補充を続けてくださいね】(はいっ)
ルバイルが芳小竜達を連れて現れた。
【竜宝の神、ありがとう】にっこり。
たくさんの芳小竜が魔法円に降りる。
【解呪を始めます】ロサイトは輝きを増した。
♯♯ 地下魔界 ♯♯
(閻魔大王様、ありがとうございます)
【いや、この鎚のお陰ですよ。
真、良い物を頂きました。
この地下に光を齎す素晴らしき鎚。
竜神様の御力です】
(竜宝がお役に立てて、とても嬉しいです)
アオと閻魔大王が微笑み合っていると、
【終わったのか?】ゴルチルが現れた。
(はい。追加も全て。
釈迦様と弥勒様も御無事です)
【では、桜華に集めろ。浄化する】
セレンテは天竜王国の王都上空で待機していた。
神【セレンテ様! 白百合神殿で暴れている方が
いらっしゃいます!】
セ【またなのっ!? 仕方ないわね……
すぐ行きます。貴女は、こちらをお願いね】
セレンテは白百合神殿に移動した。
?【――放せっ! これを解けっ!!
アタシは孫を護りたいだけなんだっ!!】
セ【静まりなさい!】
?【おお♪ セレンテ様♪
アタシも連れてっておくれよ♪】
セ【神に昇格する迄は、ここを出る事を
許しません。解らないのならば追放します】
?【それは……じゃあ、アタシの代わりに
孫を護っておくれよ! いいねっ!?】
セ【彼女を護る事は、貴女に言われなくても
全ての神が力を尽くしております。
それはそうと、己の立場を弁えなさい。
力以前に、態度を改めなければ昇格は
出来ません。いいですね?】
?【ここも堅っ苦しいのかよ……】ケッ。
セ【弁えなさい!】
?【……はい】
セ【神に成れば、貴女が会いたいと願う
もうひとりとも、いずれ会えるでしょう。
修行に励みなさい】
?【本当かい!? 会えるんだねっ!?】
セ【神に二言は有りません】
?【なら、アタシは頑張るよっ!!】
神に成りたい『?』様。
――もう、お分かりですよね。




